武豊「斜行戒告」に賛否両論、被害馬と加害馬はどれ? 大荒れ中山記念(G2)に激怒するファンも…「後味の悪さ」残した勝負どころの攻防
トップクラスの多くが参戦を見送り、今年最初のG1にしては盛り上がりを欠いたフェブラリーSに対し、先週末の中山記念(G2)にはG1を賑わせた馬が多数出走。グレードはG2でも、G1並みの注目を集めた一戦だったといえる。
そんなハイレベルのレースを制したヒシイグアスは、8ヶ月の休み明けを感じさせない快勝。鞍上の松山弘平騎手もスムーズなレース運びでパートナーを勝利に導いた。松山騎手曰く、ポジションや他馬を意識せずに馬のリズムを大事にしたとのこと。また、この日は風が強かったこともあり、あえて馬群の中で走らせるという工夫も功を奏したか。
今年7歳を迎えた古豪が2年ぶりの中山記念で同レース2勝目を挙げた一方、2着に8番人気ラーグルフ、3着にドーブネの入った3連単の払戻は12万9610円の大荒れに終わった。
穴馬の激走が目立った一方で、G1馬3頭は揃って凡走した。シュネルマイスター4着、スタニングローズ5着、ダノンザキッドは11着という有様である。また、1番人気に推されたソーヴァリアントも9着と人気を裏切っている。
能力を発揮できないまま敗れた人気馬の敗因は不鮮明ながら、今年の中山記念が後味の悪さが残るレースだったことは間違いない。
なぜなら3着に入った武豊騎手のドーブネが、レースの結果に大きな影響を与えたからだ。前走に続きハナを奪ったドーブネは、1000m通過60秒0のマイペースに落とすことに成功。開幕週で馬場状態の良好な中山でかなり恵まれた展開だったといえる。最後の直線を先頭で迎えた際には、競馬界のレジェンドもしめしめと思ったはずである。
ただ、直線半ばの勝負どころで残念なアクシデントが発生した。
「後味の悪さ」残した勝負どころの攻防
内目の先頭を走っていたドーブネが左によれて空いたスペースに、その直後を走っていたシュネルマイスターとイルーシヴパンサーの2頭が殺到。そこへ左に移動していたドーブネが再度インによれて内ラチへ2頭を押し込める格好になる。その結果、シュネルマイスターは内ラチに激突して脚が鈍り、イルーシヴパンサーに至っては進路が塞がれたまま、ゴールに入る不完全燃焼だった。
武豊騎手も「最後は左にもたれたり、フラフラ走っていました」と振り返ったように、余力がない状況でジグザグ走行してしまったことを認めたものの、JRAから内側に斜行したことについて戒告処分が下された。
この件について元JRA騎手の安藤勝己氏はTwitterで「シュネルマイスターは脚があったとはいえ日本でやったらあかん進路。イルーシヴパンサーは突き抜けまであったかも」と自身の見解を述べたが、レースを観ていたファンの一部からは、裁決の結果に不満の声も上がった。
「何とも後味の悪い結果になってしまいましたね。ドーブネがよれたからこそスペースが空いたとはいえ、1頭ならともかく2頭が突っ込んできたわけですから、避けられなかったように思います。武豊騎手も左鞭を入れていましたから……。
馬群の内で脚を溜めていたシュネルマイスターは、内を突くしか選択肢がなかった訳ですし、イルーシヴパンサーにしてもM.デムーロ騎手が一度外に出そうと試みていたのですが、スタニングローズが邪魔になって諦めている姿が確認できます。
結果的に被害に遭ってしまいましたが、あそこしか進路がなかった訳ですから、仕方がなかったかもしれませんね。ただ、馬券を購入したファンとしては、被害者であるはずのデムーロ騎手が過怠金の処分を受けたため、これには賛否が分かれました」(競馬記者)
また、この手の話は“たられば論”となりやすいことも事実だ。もしドーブネの斜行がなければ、2頭が通れるスペースは確かにあった。そんな状況で何もしないまま前が塞がっていたなら、なぜあそこでインを突かなかったのかと指摘されても不思議ではない。
かといって内を突く以上は、距離のロスを抑えられるメリットがあるとともに前が塞がるリスクもある。決して武豊騎手が意図的に締めに行ったわけでもなく、デムーロ騎手にしてもドーブネがよれなければ、加害者扱いとならなかっただろう。
ひとつ言えそうなことがあるなら、ハナ差で3着に粘り込んだドーブネがおそらく馬券圏外になっていた可能性だ。この手の話は競馬にはよくあることであり、愚痴のひとつも言いたくなる気持ちは重々承知しているが、シュネルマイスターとイルーシヴパンサーの実力は確か。次走こそスムーズなレース運びで巻き返してくれることに期待したい。