【ドバイシーマクラシック(G1)展望】イクイノックスに状態不安説!? 天皇賞・秋(G1)で完敗シャフリヤールに逆転の目は?
25日、UAEのメイダン競馬場では、ドバイワールドカップデーが開催される。メインレースの1つ前に組まれているのは、芝2410mが舞台のドバイシーマクラシック(G1)だ。
出走予定馬10頭の中で断然人気に支持されそうなのが昨年のJRA年度代表馬イクイノックス(牡4歳、美浦・木村哲也厩舎)である。
2歳夏のデビューから間隔を空けながら大事に使われ、今回がまだキャリア7戦目。昨年春は皐月賞(G1)と日本ダービー(G1)でいずれも2着に敗れたが、秋に著しい成長を果たした。
三冠ラストの菊花賞(G1)には向かわず、古馬と対峙した天皇賞・秋(G1)では大逃げを打ったパンサラッサが粘り込みを図るところをゴール前で差し切り。4角手前では20馬身以上の差があったが、直線1頭だけ違う脚色で追い込んで撃破した。そのパンサラッサが後にサウジC(G1)を制したのだから価値がある。
その後はジャパンC(G1)への参戦プランも浮上したが、間隔を空けて暮れの有馬記念(G1)に出走。レースでは、ファン投票1位のタイトルホルダーを抑えて1番人気に支持された。
序盤は中団でじっくり進めると、勝負所で外を通って一気に進出。4角では早くも先頭集団を射程にとらえ、直線で力強く抜け出した。2着ボルドグフーシュに2馬身半差をつける完勝で、年度代表馬の座を手繰り寄せた。
“国内最強馬”の称号を勝ち取ったイクイノックスは、1月に発表された2022年の「ワールドベストレースホースランキング」でも3位タイにランクイン。上位2頭が引退済みだったため、現時点で“世界最強馬”でもある
そんなイクイノックスが迎える古馬初戦は、自身初めての海外遠征。もともと体質に不安を抱えていた馬だけに不安要素も少なくない。
この中間は蹄の不安も囁かれ、国内での最終追い切り後には木村調教師も「疲れが抜け切っていない」と話すなど、万全とはいえない可能性もある。現地への空輸後には馬体が寂しくなったという情報もあった。
ただし、レース3日前に芝コースを単走で追い切られた際は、木村師も「ドバイの環境にも日毎に慣れ、順調に状態が上がってきています」とようやく手応えを口にした。『スポーツニッポン』の取材に鞍上を務めるC.ルメール騎手も「馬の状態が良ければ結果はついてくる。勝つ自信があります」と答えている。
初海外と状態面の不安を払拭し、“現役最強馬”はその名を世界に轟かせることができるか。
イクイノックスにとって最も手強いライバルは、レース史上初の連覇を狙うシャフリヤール(牡5歳、栗東・藤原英昭厩舎)である。
1年前は強敵ユビアーを退け、日本ダービー以来の勝利を飾ったシャフリヤール。ところがその後は再び勝利から見放されている。
昨年6月には英国のプリンスオブウェールズS(G1)に挑戦するも、5頭立ての4着。さらに国内に専念した秋は初戦の天皇賞・秋で不完全燃焼の5着といいところがなかった。
ひと叩きされて大幅な上昇が見込まれたのが秋2戦目のジャパンC。堂々の1番人気に支持された一戦は、ゴール前でいったん先頭に立とうとしたところを、ヴェラアズールに差され2着に敗れた。
イクイノックスには天皇賞・秋で完敗を喫しているが、その時は2kgの斤量差もあった。0.5kg差に縮まる今回はダービー馬としても簡単に引き下がるわけにはいかないだろう。
昨秋のエリザベス女王杯(G1)で2着同着に好走し、苦手とされた道悪と長距離輸送を同時に克服したウインマリリン(牝6歳、美浦・手塚貴久厩舎)にもチャンスがある。
差し、追い込み馬に有利な展開となった一戦で唯一先行して粘り込んでいたウインマリリン。その後は香港ヴァーズ(G1)で初の海外遠征を敢行し、同レース3連覇を狙ったグローリーヴェイズら強敵を相手に完勝、9度目のG1挑戦で待望の白星をゲットした。
今回の鞍上も近2走で手綱を取ったD.レーン騎手が務める。牡馬の一線級を相手に6歳牝馬が大金星を挙げることができるか。
海外勢の中では、最有力とみられていたエミリーアップジョンが回避。やや層が薄くなった感は否めないが、代わって打倒日本馬を狙うのがモスターダフ(牡5歳、英・J&T.ゴスデン厩舎)だ。
2走前の凱旋門賞(G1)では最下位20着に惨敗したが、前走のネオムターフC(G3)を7馬身差で圧勝。軽い芝で本領を発揮した。日本での評価は上がっていないが、欧州の主要ブックメーカーではイクイノックスに続く2番人気の一角に推されている。
そのモスターダフと拮抗しているのがレベルスロマンス(セ5歳、UAE・C.アップルビー厩舎)。2年前にUAEダービー(G2)を制するなど、もともとダートで活躍していたが、昨年夏に芝へ転向すると隠れた才能が一気に開花。無傷の5連勝でブリーダーズCターフ(G1)を制覇した。
今年上半期の大目標をここに設定した陣営は今月上旬のドバイシティーオブゴールド(G2)をステップにする予定だったが、前脚に炎症が見られたため、前哨戦を回避。ぶっつけ本番で連勝を「6」に伸ばせるか。
この他には、昨年のアイルランドダービー(G1)を7馬身差で圧勝したウエストオーバー(牡4歳、英・R.ベケット厩舎)、昨年の香港ヴァーズでウインマリリンの2着に入ったボタニク(セ5歳、仏・A.ファーブル厩舎)などが上位をうかがう。
世界最強馬が3つ目のG1タイトルを獲得するのか。それとも足をすくう伏兵が現れるのか。ドバイシーマクラシックは25日、25時ちょうどの発走を予定している。