藤沢和雄厩舎解散の崖っぷちからの覚醒! 13年目で146勝の“落ちこぼれジョッキー”杉原誠人が挑むG1獲り
昨年の阪神ジュベナイルF(G1)で2歳女王に輝いたリバティアイランドに注目が集まっている今年の桜花賞(G1)だが、実績面で負けていないのが出走メンバー唯一の重賞2勝馬キタウイング(牝3歳、美浦・小島茂之厩舎)である。
ただ、リバティアイランドにはリーディングの川田将雅騎手が騎乗する一方、キタウイングに騎乗する杉原誠人騎手はキャリア13年目にして今回が4度目のG1挑戦。両馬の「鞍上」には大きな差があると言わざるを得ない。
しかし、ここ最近の杉原騎手はJRA歴代2位の1570勝を誇る藤沢和雄厩舎のDNAが覚醒した感さえある充実ぶりだ。
名門・藤沢厩舎の所属騎手として2011年にデビューした杉原騎手だったが、ここまで通算146勝という成績が示す通り鳴かず飛ばずだった。さらには藤沢厩舎が2022年2月末をもって解散。特に目立った活躍がない杉原騎手は、いよいよ崖っぷちに追い込まれたと思われた。
藤沢和雄厩舎解散の崖っぷちからの覚醒!
しかし、5か月後のアイビスサマーダッシュ(G3)でデビュー12年目にして初重賞制覇。さらには今年になってキタウイングとフェアリーS(G3)勝利と、まるで別人のように活躍しているから驚きだ。
特にフェアリーSでは、最内から鮮やかに抜け出す好騎乗。抜群のコース取りを見せた杉原騎手の騎乗には、ファンからもSNSなどで「これは神騎乗」「杉原上手い!」と称賛の声が上がった。
そして、この騎乗は師匠である藤沢元調教師の教えが活かされたレースでもあったようだ。
「『外を回すな』とは常々言われてきました。レースで外を回れば確実にロスがある。しかし内を回れば仮に前が開かずに脚を余したとしてもダメージが少ない」
昨年『netkeiba.com』に掲載された藤沢調教師の引退特集に登場した杉原騎手は、そう師匠の教えを語っている。詳細は本インタビューをご覧いただきたいが、フェアリーSの勝利は、まさに“藤沢流”を体現したようなレースぶりだった。
続く前走のチューリップ賞(G2)では、前が残るレース展開で7着に終わるが、後方に待機して上がり3ハロン33.5秒の鋭い末脚を見せた。すでに賞金面は問題なく、勝ち馬と0.3秒の着差は、悲観する結果ではないだろう。
キタウイングは現在栗東で滞在して調整中で、1週前追い切りには杉原騎手が駆けつけ騎乗している。栗東坂路を4ハロン52.9秒、ラスト1ハロン12.2秒の時計で駆け上がり「まだ良くなる余地があります」と本番に向けて小さくはない手応えを掴んでいるようだ。
桜花賞には前述したリバティアイランドの他にもシンザン記念(G3)の勝ち馬ライトクオンタム、クイーンC(G3)の覇者ハーパーなどが立ちはだかり、有力馬の牙城を崩すのは至難の業である。
一筋縄ではいかない有力馬が揃うが、師匠から教わった騎乗技術を活かして競馬ファンがアッと驚く活躍に期待したい。