【皐月賞(G1)展望】「イクイノックス超え」狙うソールオリエンスが主役!「3戦3勝」ベラジオオペラ、「出世レース」完勝ファントムシーフらも虎視眈々
16日、中山競馬場の芝2000mで行われるのは、牡馬クラシック第1弾の皐月賞(G1)。今年は2歳王者の2頭が不在で、例年以上の混戦ムードが漂う。
そんな中、1番人気に支持される可能性が高いのはソールオリエンス(牡3歳、美浦・手塚貴久厩舎)だ。
半兄が国内外で活躍するヴァンドギャルドという良血で、昨年11月のデビュー戦をクビ差で辛勝。続く京成杯(G3)ではホープフルS(G1)6着のセブンマジシャンと人気を分け合う形で2番人気に支持された。
キャリア2戦目で、4角で外に大きく膨れるなど若さも見せたが、直線を向いてからは鋭い切れ味を発揮。上がり3ハロンはメンバー最速の34秒5をマークして、最後は余裕たっぷりの手応えで後続を突き放した。
管理する手塚師は「課題はたくさんありますが、力があることを再認識しました」と振り返った上で「次はもっと良くなる」と話し、トライアルをスキップして、直行で牡馬クラシック1冠目を狙いにきた。
鞍上を務めるのは、前走で初コンビを組んだ横山武史騎手。レース後には「調教のときは右に倒れる仕草があったので気をつけていたのが、今回は逆に他馬を気にしてか左に大きく膨れてしまいました」「馬を気にする面もあり、まだまだ全体的に緩い馬」と課題も挙げていた。
3か月の間隔を空けて臨む今回は、美浦南Wコースの1週前追い切りで古馬2勝クラスの僚馬と併せ馬。この日の1番時計タイとなる、6ハロン80秒8-ラスト11秒1で2馬身ほど先着し、好調をアピールしている。
ただ跨った横山武騎手は『スポーツ報知』の取材に対して、「1週前としては、動きは良かった」と合格点を与えつつも、「もともと完成するまで時間がかかるタイプ」「完成されるのは秋以降」と慎重な姿勢を崩していない。
データ的にも、キャリアの浅さは重くのしかかることになるかもしれない。過去にキャリア2戦の馬が皐月賞を制した例はなく、最高着順は昨年のイクイノックスの2着。前走で同コースを経験済みとはいえ、9頭立てでしか走っていない点も気掛かりだ。2戦2勝のソールオリエンスは、昨年の年度代表馬を上回る3連勝を飾って皐月賞馬に輝くことができるか。
ソールオリエンスと同じく無敗で駒を進めてきたベラジオオペラ(牡3歳、栗東・上村洋行厩舎)。こちらはキャリアが1つ多く、これまで3戦3勝の成績を残している。
デビューからの3戦は全て1800mで2000mの距離経験こそないが、阪神、東京、中山と全て異なるコースで勝利しているのは強調材料といえるだろう。
また、デビューから2戦はどちらも2番手から抜け出す競馬だったが、前走のスプリングS(G2)は中団に控えて直線で差し切る新たな一面を見せた。
そして、直近の2戦で鞍上を務めていたのが横山武騎手である。前走後には「行かなくても競馬ができる賢い馬」と評価する一方で、「完成までに時間はかかるかもしれません」とも付け加えていた。逆に言えば、未完成のまま3連勝で重賞Vを遂げた素質は高く評価すべきだろう。
鞍上は横山武騎手がソールオリエンスの先約が入っていたため、田辺裕信騎手へと乗り替わる。横山武騎手から田辺騎手への乗り替わりは2年前のタイトルホルダーでもあったが、その時は田辺騎手が8番人気の同馬を2着に導いている。
ファントムシーフ(牡3歳、栗東・西村真幸厩舎)は、近年では最も皐月賞に直結するといわれる出世レースの共同通信杯(G3)を制し、大一番へと駒を進めてきた。
4戦して唯一の黒星は今回と同コースで行われたホープフルSの4着。その時は福永祐一騎手(現調教師)が手綱を取ったが、レース後に「来年(23年)は主役を張れる可能性がある」とコメントを残している。
師の言葉通り、年明け初戦でC.ルメール騎手を背に共同通信杯を快勝。主役候補の1頭として皐月賞を迎える。前走はゲートの出が甘かったホープフルSから一転して好スタートを決めると、好位2~3番手を進み、直線で最後までしぶとく伸びた。
共同通信杯の勝ち時計の1分47秒0は、過去10年では19年ダノンキングリーの1分46秒8に次ぐ2位。パワータイプが多いハービンジャー産駒だが、前走の内容から速い時計勝負になっても対応は可能だろう。
きさらぎ賞(G3)を勝って皐月賞に臨むのは、フリームファクシ(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)だ。
昨年10月の新馬戦でミッキーカプチーノに敗れたが、2戦目から3連勝中。前走は単勝1.3倍の圧倒的1番人気に支持され、オープンファイアの追い込みをアタマ差でしのいだ。
もし、きさらぎ賞勝ち馬が皐月賞を制覇すれば、03年のネオユニヴァース以来で20年ぶり。きさらぎ賞1着から直行での戴冠なら1990年のハクタイセイ以来、33年ぶりとなる。初コンビのD.レーン騎手を背に4連勝で牡馬クラシック1冠目を手中に収めることができるか。
サトノクラウンの初年度産駒、タスティエーラ(牡3歳、美浦・堀宣行厩舎)も将来が楽しみな1頭。デビュー2戦目の共同通信杯では2番人気に支持されたが4着に敗れると、その後は中2週で弥生賞ディープインパクト記念(G2)に転戦し、これを快勝した。
2か月間で3戦目というやや詰まったローテーションを不安視する声もあるが、2週前追い切りでは美浦南Wで6ハロン81秒2-ラスト11秒2の好タイムをマーク。力を出せる状態で出走できそうだ。
ソールオリエンスと同じキャリア2戦のタッチウッド(牡3歳、栗東・武幸四郎厩舎)も侮れない存在である。
昨年11月の新馬戦で逃げて6馬身差の圧勝劇を飾ると、2戦目の共同通信杯では出遅れたものの向正面でハナを奪取。東京の長い直線で最後までしぶとく粘っての2着に食い込んだ。ファントムシーフには完敗を喫したが、タスティエーラには先着している。新コンビ武豊騎手が大阪杯(G1)に続き、芸術的な逃げを披露するか。
昨年7月のデビューから、すでに8戦と豊富なキャリアが自慢のトップナイフ(牡3歳、栗東・昆貢厩舎)は、近3走がいずれも重賞で2着。京都2歳S(G3)は中団から、ホープフルSは逃げて、弥生賞は好位からと変幻自在の競馬で結果を残している点からも大崩れは考えにくい。
この他には、セレクトセールで税込み2億円超の高額で取り引きされた3頭もスタンバイしている。
ショウナンバシット(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)は、国本哲秀オーナーが21年の1歳セレクトセールにて2億8600万円(税込)で落札したシルバーステート産駒。前走・若葉S(L)をハナ差で制し権利を獲得した。初の中山参戦だが、持ち前の先行力は小回りでこそ生きるだろう。
ダノンタッチダウン(牡3歳、栗東・安田隆行厩舎)は、ダノックスの野田順弘オーナーが21年の1歳セレクトセールにて2億6400万円(税込)で落札したロードカナロア産駒。2歳王者の2頭が不在の今年なら朝日杯FS(G1)2着の実績は威張っていい。
シャザーン(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)は、金子真人オーナーが21年の1歳セレクトセールにて2億4200万円(税込)で落札したこちらもロードカナロア産駒。16年のエリザベス女王杯(G1)を勝ったクイーンズリングを母に持つ良血馬が重賞初挑戦で上位進出を狙う。
昨年から一貫して“主役不在”と言われ続けてきたこの世代の牡馬クラシック戦線。底を見せていない無敗馬が連勝を伸ばすのか、それともキャリアを重ねた馬の経験がものをいうのか。注目の一戦は16日、15時40分に発走予定だ。