「ベストパートナー」との出会いは遅過ぎる7歳…横山典弘が導いた最強馬の道、天才が教えた当時の福永祐一に足りなかったモノ
G1中休みとなる今週末は、改修工事の関係で2年半ぶりのリニューアルを迎えた京都競馬場でマイラーズC(G2)が開催される。
安田記念(G1)の重要なステップとして知られるレースには、本番で2年連続好走しているシュネルマイスター、昨年の覇者ソウルラッシュ、強い4歳世代からもガイアフォースやジャスティンスカイとなかなかの好メンバーが揃いそうだ。
今後のマイル路線を占う注目のレースだが、今回は2008年の優勝馬カンパニーの活躍に触れてみたい。
当時のカンパニーは、3歳時に出走した菊花賞(G1)を11番人気で9着に敗れてからは、主に短中距離を中心に出走。G2やG3では勝ててもG1になると少し足りていないトップクラスとの戦いに壁を感じさせる馬だった。古馬になってから福永祐一騎手(現調教師)が主戦を任され、後方から鋭い末脚を駆使しても、強敵相手に善戦するのが精一杯というケースも多かった。
この年の初戦に選ばれた東京新聞杯(G3)で1番人気の支持を受けたが、やはり後ろからの競馬で先行馬を捕まえ切れずに4着。日本ダービー(G1)で悲願の初勝利を手にする前の福永騎手にありがちな詰めの甘さも目立っていた。
「ベストパートナー」との出会いは遅過ぎる7歳…
だが、そんな善戦マンに転機が訪れたのは、関東の名手・横山典弘騎手と出会った翌月の中山記念(G2)だ。これまで後ろから脚を余すような格好の敗戦が続いていたカンパニーだったが、横山典騎手は積極果敢なポジション取りで先行。4コーナーで2番手という強気な競馬で押し切ってしまった。
近年では、見方によっては勝つ気がないようにすら受け取られかねない「ポツン騎乗」が話題となる関東のベテランだが、それはパートナーのコンディションやその日の気分を優先していることが大きい。馬と会話ができるとさえ言われている天才が、後ろからの競馬だけでないことは、時折披露する巧みなペース配分の逃げでも伝わるだろう。
この思い切った脚質転換が、単なる思い付きではなかったことを証明したのが、コンビ2戦目のマイラーズC。ここでも好位から抜け出して連勝。その後も出遅れなどがなければ、好位から抜け出すモデルチェンジに成功している。勿論、コンビ結成してすぐにカンパニーがその素質を開花させたわけではないものの、レースを重ねるごとに両者が互いの絆を深めていったことは間違いない。
そんな名コンビの撒いていた種がようやく花開いたのは、競走馬として晩年を迎えた2009年の秋である。
これまでカンパニーにとって、雲の上の存在だったウオッカと武豊騎手のコンビを毎日王冠(G2)で撃破。本番の天皇賞・秋(G1)でリベンジを狙うライバルを返り討ち。G1で初めて1番人気に支持されたラストランのマイルCS(G1)も、危なげないレースぶりで完勝を決めた。横山典騎手にとってもマイルCSの優勝は、95年のトロットサンダー、97年のタイキシャトルに続く12年ぶりとなった。
8歳にして頂点に立ったカンパニー。まだまだこれからというタイミングでの引退を惜しむ声も多かったが、種牡馬として世に送り出した産駒は、18年の目黒記念(G2)を優勝したウインテンダネスが目立つ程度だったのは残念だ。
また、横山典騎手というベストパートナーに巡り合えたことが、その後のカンパニーの快進撃へと繋がったのは間違いないが、先入観に捉われない柔軟な騎乗は大いに参考となったはず。前任者である福永騎手もまた、当時の自分に足りなかったモノに気付く契機となったのかもしれない。