【NHKマイルC(G1)展望】急転直下で三浦皇成にG1制覇の大チャンス!そろそろ勝っても“エエヤン”!?
5月7日、東京競馬場では第28回NHKマイルC(G1)が芝1600mを舞台に行われる。今年の3歳牡馬は皐月賞(G1)でソールオリエンスという怪物候補が誕生したが、マイル路線はいまだ混戦模様。この路線にも新たなスターは生まれるか、早速展望していきたい。
実績的に抜きんでているのはメンバー唯一のG1馬、ドルチェモア(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)だ。
2歳時に新馬、サウジアラビアロイヤルC(G3)、朝日杯フューチュリティS(G1)を勝ち、無敗のまま2歳マイル王の座に就いた。
春は皐月賞には向かわず、当初はNHKマイルCへ直行するプランだったが、陣営はニュージーランドT(G2)を挟むローテーションを選択。しかし、単勝オッズ1.7倍の圧倒的1番人気に推され、果敢に先手を奪うも7着に敗れている。
序盤からやや折り合いに苦労するシーンもある中、前半3ハロンは35秒0の平均ラップ。4角でも手応えは残っているように見えたが、最後の直線で伸びを欠いた。ただし、前走はあくまでも本番を見据えての試走。1度叩いたことで大幅に良化する余地はありそうだ。
そんなドルチェモアに降りかかったのが鞍上問題。前走を含めてこれまで4戦中3戦で手綱を取っていた横山和生騎手だが、今回は乗り替わることが決定している。
前走後、一度は岩田望来騎手とのコンビ結成という報道もあったが、急転直下で初コンビが決まったのは三浦皇成騎手だった。
三浦騎手といえば、1年目に数々の新人記録を塗り替え「ポスト武豊」とまで言われた逸材だ。しかし、2年目以降は伸び悩み、JRAのG1には手が届かないまま16年目を迎えた。デビューからのG1連敗記録は「110」まで伸び、ここ5年間はG1で馬券にも絡んでいない。
今年は2月に東京新聞杯(G3)を制して好スタートを切ったが、23日時点で11勝と低迷中。そんな三浦騎手だが、突然舞い降りてきたこのビッグチャンスを生かすことができるか。
NZTでドルチェモアを破ったエエヤン(牡3歳、美浦・伊藤大士厩舎)は3連勝中の上がり馬。デビューから2戦はいずれも東京の2000mと1800mで敗れていたが、1600mに距離を短縮してからは負けていない。
エエヤンの持ち味の一つがその器用さだ。実際に中山のトリッキーなマイルコースで先行して3連勝を飾っている。マイル戦で3戦3勝の実績は強調できるが、東京コースで2戦して勝利がないのも事実。瞬発力勝負になった時の対応に一抹の不安は残る。
近2走はM.デムーロ騎手とコンビを組んでいたが、同騎手に先約があったため今回は戸崎圭太騎手とのコンビ。ただし、3走前の未勝利戦を同コンビで勝利しており、テン乗りでないのは心強い限りだ。
戸崎騎手はアカイトリノムスメで制した21年秋華賞以来のG1制覇が視界に入る。
武豊騎手とのコンビで前哨戦のアーリントンC(G3)を差し切ったオオバンブルマイ(牡3歳、栗東・吉村圭司厩舎)は距離不安を払拭。今年のメンバー構成なら1番人気に推される可能性もあるだろう。
デビューからの2戦は7ハロンの新馬と京王杯2歳S(G2)で、どちらも先行抜け出しの正攻法で2連勝を飾った。しかし、続く朝日杯FSはスタートで出遅れると、後方からの競馬となり7着に敗れている。
そして前走は18頭立ての7番手からの競馬。4角で2~4番手だった先行馬が2~4着に入る差し馬には厳しい展開となったが、1頭だけ外から鋭く脚を伸ばして差し切った。
「(不安視された)距離も克服しましたし、東京も勝っています。この世代のマイルでトップレベルにいる一頭だと思いますし、(G1でも)チャンスはあると思います」と武騎手も色気は十分。すでに重賞勝利がある東京コースなら戴冠の可能性は決して低くはない。
このレースは差し馬が比較的有利といわれるレースだが、オオバンブルマイは自在性も持ち合わせているため、馬場によっては先行する選択肢もある。レジェンド騎手のレース運びに注目が集まりそうだ。
その武騎手とのコンビで前走ファルコンS(G3)を2着したのがカルロヴェローチェ(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)だ。
前走は出遅れた分、中団前目で控える競馬となったが、好スタートを決めれば逃げの手に出てもおかしくない。実際に2走前の白梅賞(3歳1勝クラス)は逃げて楽勝している。新コンビを組むD.レーン騎手の手綱さばきにも注目だ。
デムーロ騎手がエエヤンに騎乗できないのはクルゼイロドスル(牡3歳、栗東・高橋義忠厩舎)と先約があったためだ。
1月のジュニアC(L)からの直行となるが、その前走がデビュー4戦目で初めて逃げての4馬身差圧勝。東京マイルコースは2戦目の未勝利戦で豪快に差し切っており、この馬もどんな競馬にも対応できる。勝利騎手インタビューでデムーロ騎手から「エエヤンやなくても良かったやん」というコメントが聞けるか。
5頭の登録があった牝馬の中ではウンブライル(牝3歳、美浦・木村哲也厩舎)が面白い存在。NZTはエエヤンに1.1/4馬身差で完敗を喫したが、上がり3ハロンはメンバー最速だった。東京の長い直線で自慢の末脚を爆発させたい。
シャンパンカラー(牡3歳、美浦・田中剛厩舎)は1月の京成杯(G3)で6着に敗れ、評価を落としていたが、もともと東京マイルでデビューから2連勝したスピード馬。距離を戻した前走NZTで3着に善戦し、再び評価を上げている。
この他には、アーリントンCでオオバンブルマイからアタマ差の2着に入ったセッション(牡3歳、栗東・斉藤崇史厩舎)、同レースでアタマ+クビ差の3着だったショーモン(牡3歳、栗東・橋口慎介厩舎)、ファルコンSを制したタマモブラックタイ(牡3歳、栗東・角田晃一厩舎)なども上位候補。
また、今年は皐月賞組が1頭だけの参戦となっている。最下位18着に敗れたダノンタッチダウン(牡3歳、栗東・安田隆行厩舎)は、初距離と重馬場で自慢の切れ味を発揮することができなかった。休み明けをひと叩きされた効果で一変はあるか。
近年稀に見る混戦ムードのNHKマイルCで、3歳マイル王に輝くのはドルチェモアか、エエヤンか、それともここでは名前が挙がらなかった伏兵馬か。発走は5月7日、15時40分を予定している。