「2戦2敗」を跳ね返せ…白毛一族の“やんちゃ娘”メイケイエールが挑むソダシ超え

ソダシ 撮影:Ruriko.I

 先週のNHKマイルC(G1)から幕を開けた東京競馬場での5週連続G1開催。14日には春の女王決定戦・ヴィクトリアマイル(G1)が行われる。

 今年もG1馬が4頭も参戦を表明するなど、牝馬の一線級が府中に集う。その中でも大きな注目を集めているのが、史上3頭目の連覇を目指すソダシ(牝5歳、栗東・須貝尚介厩舎)だろう。

 昨年のこのレースを最後に白星から遠ざかっている白毛のアイドルだが、今回の一戦は鞍上に世界的名手D.レーン騎手を配して必勝を期す。今年は、この得意舞台を足掛かりに安田記念(G1)に臨むプランで、マイル界の頂点を目指す。

メイケイエール 撮影:Ruriko.I

 ライバルたちも強力だが、特に競馬ファンから熱い視線を浴びているのがメイケイエール(牝5歳、栗東・武英智厩舎)の参戦だ。

 毛色は異なるものの、ソダシとは同じ“シラユキヒメ一族”の一員として知られ、ともに写真集を出版するなど現役屈指の人気を誇る。同じ一族で、同じ年に生まれた2頭のアイドルホースが2021年の桜花賞(G1)以来となる2年ぶりの直接対決を迎えようとしている。

 過去の対戦成績はソダシの2戦2勝。それも阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)はソダシが1着に対してメイケイエールは4着だったが、桜花賞ではソダシが1着でメイケイエールは18着と明暗がくっきりと分かれる形で終わっている。

 その後、メイケイエールが気性面の問題からスプリント路線を歩むようになり、両者が交わることはなくなった。ソダシが古馬になってヴィクトリアマイルを制した一方、メイケイエールはG1勝利こそないものの、短距離でそのスピード能力をいかんなく発揮。昨年は1200~1400mの重賞で計3勝を挙げ、通算重賞勝利数はソダシと並ぶ6勝まで伸ばしている。

 ちょうど1年前にメイケイエールが京王杯スプリングC(G2)を勝ち、その翌日にソダシがヴィクトリアマイルを優勝。「白毛一族の2日連続重賞制覇」が話題になったが、やはりもう一度2頭の激突を見たいというファンの方も少なくなかったことだろう。そんな事情もあって、メイケイエールの2年ぶりマイル挑戦はちょっとした注目を集めている。

 マイルの距離に関しては、パートナーの池添謙一騎手が『netkeiba.com』で出演中の動画企画『謙聞録 -kenbunroku-』にて、ヴィクトリアマイル参戦の話題が挙がった際に「走り方はスプリンターのそれではない」というのが陣営との共通の見解であることを明かしており、「操縦性が効かないからスプリント路線を使っている」と相棒の距離適性について言及している。

 決してベスト条件ではない中で結果を残してきたのは「能力」に他ならないとしつつ、課題の“操縦性”に関しては、今年の高松宮記念(G1)の追い切りに跨った際も「持っていかれた」とコントロールができなかったことを挙げ、「改めて細心の注意を払う必要があるなと思った」と振り返っており、5歳になった今も大きな変化は見られないという。

池添謙一騎手 撮影:Ruriko.I

 しかし、池添騎手は「今後も絶対掛かります。誰が乗っても」と前向きな気性は受け入れたうえで、「ゲートが開いたら池添謙一vsメイケイエールの戦い」とし、鞍上がどれだけ抑えてパートナーを“暴走”しないように我慢させることができるかをポイントに挙げた。

 とはいえ、1年前に1400mの京王杯スプリングCを勝利した際も池添騎手は道中ずっと引っ張り通しで、勝利騎手インタビューにも疲労困憊の状態で登場。「1ハロン違うだけできつかった。何とかなだめながら進めましたが、ちょっとしんどかったです」と正直な感想を吐露しているだけに、1600mへの距離延長というのは歓迎できる材料ではないことは明らかだ。

 ただし、当時と異なる点として「去年から馬具で矯正して効果があるので、それを付けてマイルでどんなレースができるか」という部分を挙げ、昨年の快進撃を支えたパシュファイヤーと折り返し手綱の効果に一縷の望みを託している。

 2年前にはなかった秘密兵器と騎手の根性、これまで数々のクセ馬を乗りこなしてきた経験を力に、マイルの舞台で悲願のG1制覇となるか。頼みの池添騎手は昨年11月の落馬で「腰椎破裂骨折」という重傷を負ったものの、今年2月にスピード復帰を果たし、今年はここまで11勝をマークしている。

 特にこの春にオープンした京都競馬場では、すでに5勝を挙げており、トップの松山弘平騎手と川田将雅騎手とはわずか1勝差と好調だ。今週末に向けても、自身のTwitterで「さぁヴィクトリアマイルだよ」とつぶやくなど気合も漲っている。

 加えて、東京競馬場・芝1600mと言えば、同騎手の最後のG1勝利がソングラインと挑んだ昨年の安田記念であり、その前のG1勝ちもグランアレグリアと挑んだ2020年の安田記念だった。直近の大仕事が府中マイルの舞台で、いずれも快速牝馬をエスコートして掴んだものだったという点も頼もしいポイントとなりそうだ。

 2年前の春を最後に違う道を歩んできた同じ一族の同世代の人気者2頭が、紆余曲折を経て迎える直接対決。「アイドルから女優になった」と心身ともに充実した成長ぶりが伺えるライバルを真っ向勝負で打ち破り、悲願のG1優勝でソダシ超えとなる重賞7勝目を掴むことができるか。

 手のかかる“やんちゃ娘”メイケイエールの激走に期待したい。

GJ 編集部

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