川田将雅に付きまとうオークスの呪縛。ハープスターの敗戦から9年、大本命リバティアイランドと挑む二冠
今週末の21日に東京競馬場で牝馬三冠の二冠目、オークス(G1)が行われる。本命視されるのは、阪神ジュベナイルF(G1)、桜花賞(G1)とG1を連勝し、桜花賞で上がり3F32.9秒を叩き出した女王、リバティアイランド(牝3歳、栗東・中内田充正厩舎)だろう。
ただ、鞍上の川田将雅騎手にとって、オークスはほろ苦い記憶のある舞台だ。
ハープスターとのコンビでオークスに臨んだ2014年。リバティアイランドと同じく、桜花賞で上がり32.9秒の末脚で圧勝した大本命馬は、単勝のオッズ1.3倍の支持を集めた。誰もが二冠を信じて疑わなかったものの、レースでは追い込み届かず2着。岩田康誠騎手とヌーヴォレコルトの前に苦杯をなめた。
それだけにオークス敗戦後「非常に申し訳ない」と謝り、自著『頂への挑戦 負け続けた末につかんだ「勝者」の思考法』(KADOKAWA)でも「これも今思えばですが、2014年という年は、まったく攻めた競馬をしていませんでした。僕は怯えていたのです」と当時の反省を口にしている。
その一方で思い入れの強かったハープスターでの敗戦は、川田騎手の「ストイックさ」と「責任感」を生み、その後の躍進につながった。2020年には、師匠である安田隆行調教師の管理馬ダノンザキッドでG1勝利(ホープフルS)を果たしただけでなく、ついには2022年にリーディングジョッキーと史上4人目の騎手大賞を受賞。トップジョッキーとしての地位を確固たるものにした。
今年は断然人気濃厚のリバティアイランドに騎乗するだけに、近年で最大のチャンスとなるだろう。
そんな川田騎手だが、2012年にジェンティルドンナで優勝したのを最後にオークスの勝利から遠ざかっているように、不安要素が全くない訳でもない。また、リバティアイランドを管理する中内田厩舎は、芝2000mまでの重賞勝ちはあるものの、2200m以上になると未勝利。そして、リバティアイランドが唯一敗戦を喫した舞台もオークスと同じ東京が舞台のアルテミスS(G3)だった。このときはスムーズなレース運びが出来なかったとはいえ、リバティアイランドほどの馬でも、リズムが狂えば敗れるということを意味している。
とはいえ、『中日スポーツ』の取材に「極端に苦しい戦いになるとは思えない」と言ってみせた川田騎手のパートナーへの信頼に揺るぎはない。
川田騎手は、ハープスターの敗戦を経てリーディングジョッキーにまで上り詰めた。そのハープスターと重なるところの多いリバティアイランドでのオークスの戴冠は、川田騎手を本当の意味でハープスターの呪縛から解き放ってくれるかもしれない。
二冠か、苦い記憶の再現かーー。運命の手綱は川田騎手に託された。