安田記念(G1)武豊「マイル進言」も課題山盛り!? 勝てばウオッカ以来14年ぶり…ジャックドールが露呈した「致命的な弱点」とは
4日の東京競馬場では春のマイル王を決める安田記念(G1)が開催。府中のマイルを舞台にG1馬10頭を含む超豪華メンバーが覇を争う。
東京の春G1を締めくくる一戦には、昨年の優勝馬ソングラインをはじめ、マイルCS(G1)を制したセリフォス、白毛のアイドル・ソダシ、NHKマイルC(G1)を制した3歳馬シャンパンカラーなどバラエティ豊かな顔触れが集結。層の厚さならグランプリ宝塚記念(G1)を上回るかもしれない。
中でも異質な存在感を放っているのが、武豊騎手とのコンビで出走を予定しているジャックドール(牡5、栗東・藤岡健一厩舎)だ。
藤岡佑介騎手が長らく主戦を任されていた本馬だが、昨年の香港C(G1)から武豊騎手に乗り替わり。コンビ初戦は7着に敗れたものの、2戦目の大阪杯(G1)で逃げ切り勝ちを決め、待望のG1タイトルを手に入れた。
デビューから14戦すべてで芝2000mを使われてきただけに、次走は1ハロン延びる宝塚記念(G1)というプランもあったようだが、陣営の選択は2ハロン短縮のマイルG1だった。
これには武豊騎手の進言もあったとされているが、前原敏行オーナーや藤岡調教師も考えは一致していたという。血統的にも父モーリスは現役時代に日本と香港でマイルG1を計4勝挙げたスペシャリストである。芝2000mのG1も天皇賞・秋と香港Cで制した父と同じく、ジャックドールにもマイル適性を期待できそうだ。
肝心の武豊騎手の安田記念勝利が、14年前のウオッカ(2009年)まで遡る必要があることは少し気になるものの、過去にもオグリキャップ(1990年)、ハートレイク(1995年)で優勝しているように大きな割引とはならないだろう。
もし弱点を抱えているとすれば、今回は武豊騎手よりもジャックドール側の可能性が高い。
ジャックドールが露呈した「致命的な弱点」とは
過去何度も逃げ切り勝ちを収めたジャックドールの最大の武器は、昨年の金鯱賞(G2)をレコード勝ちしているように、持ち前のスピードを生かした先行力だ。
その反面、切れ味勝負に対する分の悪さは、昨年の天皇賞・秋で弱点を露呈した。このレースは大逃げを打ったパンサラッサがハイペースで飛ばしたとはいえ、離された2番手以降の馬は実質超スローの展開。最後の直線で3番手に付けていたジャックドールも悪くはないポジションに思えたが、パンサラッサを捉えるどころか、上がり3ハロン32秒台の末脚を披露したイクイノックス、ダノンベルーガに交わされた。
それはつまり、距離短縮でよりスピードと切れを求められるマイルG1で、再び瞬発力不足が浮き彫りになる可能性を意味している。これだけだと少しぼんやりしているが、ヴィクトリアマイル(G1)で3着に敗れたスターズオンアースのケースがイメージしやすいか。
同馬は大阪杯でジャックドールとハナ差の接戦を演じた相手だが、手綱を取ったC.ルメール騎手はレース後に「いいポジションを取れた」とスムーズなレース運びを認めつつ、「瞬発力勝負で負けました。2000m以上がいいですね」というコメントを残した。上位2頭は「マイルのスペシャリスト」と触れていたことを考えれば、少なくともスターズオンアースにとって、大阪杯からの距離短縮は成功ではなかったといえる。
ルメール騎手のコメントがジャックドールにとって、より深刻に感じられるのは、スターズオンアースが桜花賞(G1)を勝っていたことだ。同世代相手なら能力の絶対値で上回っていた本馬に一日の長があっただろうが、生粋のマイラーが相手になると適性で後れを取ってしまった。
過去10年の勝ち馬の顔触れを見てみると、他馬に上がりで見劣っても好走している例はあるものの、そういったタイプはマイル以下の距離で快勝していたように、短距離をこなせるスピードの裏付けがあった。
共同会見でレジェンドは「1600mの乗り方をしようと思っている」と話した。瞬発力勝負を避けるには、それこそパンサラッサのような大逃げで後続の脚を使わせる作戦も思い浮かぶものの、「馬のリズムを崩してまでとは思っていない」と続けていただけに、その可能性は低そうだ。
マイルG1勝ちのあるスターズオンアースでさえ、苦戦を強いられただけに、そもそも2000mしか経験のないジャックドールに過度な期待はできないかもしれない。