武豊の「将来のライバル」と目された若武者「顔面蒼白」からの悲劇。宝塚記念(G1)はイクイノックス中心も全馬完走を【東大式必勝馬券予想】

 25日(日)はG1・宝塚記念。今年で64回を迎える春のドリームレース。歴代優勝馬にはディープインパクトを筆頭にサイレンススズカ、トウショウボーイ、ハイセイコー、シンザンら伝説の名馬がずらり…書きたい馬が多すぎて困る!

 初めてこの目で見たのは、京都で行われた1969年。5歳(当時表記)の好調ダテホーライが同世代の皐月賞馬マーチスを下しレコードタイムで優勝するのだが、なんと、たったの4頭立て! 今でもJRAのG1(級)史上最少頭数のはずだ。

 1勝馬でも出走・完走さえすれば、大差の5着でも1着賞金の10分の1が貰えるが、当時はファン投票上位馬しか出馬投票が許されず、かつ直前の天皇賞を勝った怪物タケシバオーが出走の噂(結局回避)。各馬関係者は勝てっこないと登録せずG1史上に残る珍事となった。

 今も心が痛むのが、第31回の1990年。同年春の天皇賞馬、スーパークリークこそ出走を回避したが、前年覇者イナリワン、皐月賞馬ヤエノムテキ、2度あることは?サンド(3度)ピアリス、そして伝説のアイドルホース・オグリキャップという超豪華な面々。

 オグリは前年のジャパンC(G1)でニュージーランドのホーリックスと2枠同士で2分22秒2の世界レコードの死闘を演じ、この年初戦の安田記念も名手・武豊を背にあっさり勝ち、ここも単勝1.2倍の断然1番人気。

「競馬に絶対はない」というが、私はオグリだけは信じ、30万の札束を握りしめ羽田から伊丹空港へ飛んだ。座席はスーパーシート、空港からはタクシー。30万円×1.2だから6万円の利益。十分お釣りがくる計算だ。

 仁川に着いた私はとっとと大枚30万を6番オグリの単勝馬券に替え、レース前には余裕でパドックへ。6歳ですっかり白くなった芦毛のオグリキャップは自身最高500キロの馬体を堂々と見せていたが、鞍上の岡潤一郎は心なしか緊張で顔面蒼白のように見えた。

 1988年デビュー、44勝で最優秀新人賞を獲得し、将来を嘱望された彼は21歳。6度目のG1で武豊の代打に指名された。武がお手馬スーパークリーク騎乗予定(直前回避)のための大役となったのだ。

 結果は……、ご存じの通り第4コーナーで先頭に立ったオサイチジョージにオグリは全く追いつける気配もなく2着に敗れている。うなだれて引き上げる岡騎手に心無い罵声の嵐が降り注いだのは言うまでもない。

 そして2年半後の1993年1月30日、悲劇が訪れる。京都の新馬戦で騎乗馬が骨折し転倒。落馬した岡は後続馬に後頭部を蹴られ緊急搬送されるも約2週間後、24歳で天に召された。

 彼の才能を評価し、将来のライバルと目していた1年先輩の武豊は今なお墓参し手を合わせていると聞く。私の脳裏にもオグリキャップに跨る彼の緊張した表情が今も焼き付いて離れない。30万円の大損失では贖えない、大切な人を失う予兆となった33年前の宝塚記念であった。

 

東大馬券王の大よそー

  ここらで「東大馬券王の大よそー」に移ろう。

 世界ランキング1位、イクイノックスが断然の下馬評。十中八九勝つだろう。しかし、この宝塚記念、前述オグリキャップをはじめ、テイエムオペラオーがメイショウドトウに、ブエナビスタがアーネストリーに、ドゥラメンテがマリアライトに敗れるレースでもある。

 ゴールドシップやキタサンブラックのような単勝1倍台でも謎の大凡走もある。“十中一、二”に備え、小心者には馬連をおすすめする。私は懲りずにイクイ1着固定で連続好走多い春の天皇賞馬ジャスティンパレスと、牝馬が強いこのレース、同コース同距離のエリ女覇者ジェラルディーナへの2(3)着流しフォーメーションで固いながらも大勝負。大穴は2年前の2着ユニコーンライオンと3年前の3着モズベッロ。東大式鉄則「穴はまさかのリピーター」である。

 ライスシャワーの悲劇(淀)も28年前か……心から全馬、無事の完走を祈る。

尼崎昇

初めて見たダービー馬はタニノハローモア。伝説的な名馬の走りをリアルタイムで見てきた筋金入りの競馬通は「当たって儲かる予想」がモットー。過去に東京大学で競馬研部長をつとめ、スポーツ新聞やラジオ解説を担当した勝負師の素顔は「隣の晩ごはん」や「おもいッきりテレビ」などの大ヒット番組を手掛けたキー局の元敏腕プロデューサー。德光和夫、草野仁ら競馬界の著名人との親交もあり、競馬談義を繰り広げる仲である。

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