デアリングタクト「+54キロ」で復帰困難か。調教師「まだ気持ちが切れていない」も、不完全燃焼に終わった昨年ジャパンC(G1)から約8か月

デアリングタクト 撮影:Ruriko.I

「まだ気持ちが切れていないことは、今回のレースで証明してくれましたから、来年また頑張ってくれると思います」

 杉山晴紀調教師がそう希望を語った昨年のジャパンC(G1)から約8か月が経過している。来週行われるセレクトセール2023に全妹が登場することが話題になっているが、その姉デアリングタクト(牝6歳、栗東)は、まだターフに帰ってこない。

「抜け出せるだけの脚は残っていたのですが、2回狭くなる不利がありました」

 レース後にT.マーカンド騎手が悔しがったジャパンCの走りは、三冠牝馬復活の気配を十分に感じさせるものだった。

 後方から手応え十分で迎えた最後の直線、馬群を縫うように脚を伸ばしたデアリングタクトだったが、何度も進路が狭くなる非常に厳しい展開。それでも上がり3ハロンはメンバー最速タイの33.7秒、勝ったヴェラアズールから0.2秒差なら鞍上が「せめて(不利が)1回だったら……」と嘆くのも当然か。

 まともなら2020年の秋華賞(G1)以来となる復活勝利もあり得ただけに、杉山晴調教師の「来年また頑張ってくれると思います」という言葉は、決して希望的観測だけではなかったはずだ。

 そんな三冠牝馬の復活が期待された2023年。しかし、デアリングタクト出走の知らせは未だ届いていない。

「ジャパンC後のデアリングタクトは2月のキングアブドゥルアジーズ・ネオムターフC(G3)から始動する予定でノルマンディーファームではなく、外厩のチャンピオンヒルズで緩め過ぎずに調整されていました。

順調に調整されていたと聞きましたし、実際に1月の下旬には栗東トレセンに帰厩しています。しかし、その後どうやら左前脚にアクシデントがあったようで……」(競馬記者)

 デアリングタクトといえば、一昨年のクイーンエリザベス2世C(G1)後に右前肢繋靱帯炎を発症し、約1年休養した経緯がある。元々、右のトモに疲れが出やすいようで、そこを庇う内に、今度は左前脚に疲労が溜まってしまったようだ。

「ネオムターフCは回避することになりましたが、幸い症状は軽いとのことで春の国内G1を目指してチャンピオンヒルズに移動したものの、どうやらなかなか改善されなかったようで、3月にはノルマンディーファームへ放牧に出されています。現在は運動に留めながら、秋の復帰を目指している状況です」(同)

 これまで無敗のまま牝馬三冠を制したのはデアリングタクトだけ。全国にファンがいる馬だけに一日でも早い復帰が待たれている状況だが、記者曰く「そう簡単にはいかないかもしれない」とのことだ。

「脚元や体質に問題がある競走馬の休養が長引くパターンとして、馬体重が絞れないことが挙げられます。脚元や体質に気を使っての運動では、満足に馬体が絞れないというものです。

ノルマンディーオーナーズクラブの公式ホームページによると、デアリングタクトの現在の馬体重は538キロ。(前回の出走となった)昨年のジャパンCが484キロでしたから、54キロも増えていることになります。脚元に強い負荷をかけずに体重を絞る方法はいくつかありますが、いずれにせよ慎重な調整を強いられる分、時間は掛かってしまうでしょう。

今年のジャパンCは現役最強馬のイクイノックスが目標に掲げていますし、もしかしたらドウデュースやリバティアイランドといった強豪も出るかもしれないと話題になっているレース。デアリングタクトもぜひその姿を見たい1頭なのですが、なんとか無事に行ってほしいですね」(同)

 かつてトウカイテイオーが364日ぶりの有馬記念(G1)を制したことで競馬界に“伝説”を残したが、仮にデアリングタクトが今秋のジャパンCで復帰するなら「帝王」と並ぶ364日ぶりのレースということになる。

 果たして、唯一無二の無敗牝馬三冠馬は奇跡の復活を遂げることができるだろうか。まずは無事にターフへ戻ってきてほしいが、それだけでも関係者は称賛されるべきだろう。

GJ 編集部

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