川田将雅、D.レーンさえ圧倒する中堅騎手の大変身!? 武豊ジャックドール大阪杯(G1)制覇の“屈辱”乗り越え「G1不要論」に反撃!

藤岡佑介騎手

 8日、函館競馬場で行われたマリーンS(OP)は、1番人気のペプチドナイル(牡5歳、栗東・武英智厩舎)が逃げ切って勝利。前走の大沼S(L)からの連勝で、まさに充実の夏を迎えている。

 今回も止まらなかった。3番人気だった前走の大沼Sを3馬身差で逃げ切ったことで、この日は単勝3.1倍の1番人気に支持されたペプチドナイル。周囲の警戒が増す上に斤量も0.5キロ上がっており決して楽な状況ではなかったが、あっさりと逃げ切り。逆に2着との着差を3馬身半に広げる快勝だった。

「つかまっているだけでした。前回同じレースに乗っていて、強いのは分かっていた」

 この完勝劇を演出したのが、藤岡佑介騎手だ。コメント通り、前走大沼Sの2着馬セキフウに騎乗していた鞍上にとっては、まさに「昨日の敵は今日の友」といったところか。相棒の強さを肌で感じていたからこその強気な逃げが圧勝を呼び込んだ。

「藤岡佑介騎手」といえば、競馬大手ポータルサイト『netkeiba.com』にて長年ファンに愛されている対談企画『with佑』のホスト役を務めていることで有名だ。

 だが、その一方で本業では「勝負弱いジョッキー」という印象を持っているファンは少なくないだろう。

 JRA通算990勝、重賞44勝(以下、8日現在)は間違いなく一流の証だ。しかし、同時に2着974回、3着972回、4着979回、5着899回と今一歩勝ち切れないレースも少なくない。

 例えば、同期の川田将雅騎手が1着から1904、1472、1233、1096、920回であるように、藤岡佑騎手ほど1着から5着までの回数がきれいに揃っている騎手は珍しい。それだけ安定感があるといえば聞こえはいいが、同時に勝ち切れない面を象徴している。

「新・藤岡佑介」がまるで別人!?

 しかし、今年の藤岡佑騎手はまるで“別人”のようだ。

 最も象徴的なのが1着31回に対して、2着11回という比率だ。この約282%(1着数÷2着数%、小数点第1位は四捨五入)は、川田騎手の同170%を大きく上回り、リーディングトップ20の中でも断トツの数字だ。この春に圧倒的な勝負強さで勝ち星を量産し“旋風”を巻き起こしたD.レーン騎手でさえ同194%である。

 この比率はレース終盤での上位争い、つまりは「勝てそうなときに、如何にきっちりと勝ち切れるか」を示しており、これまでの藤岡佑騎手のキャラクターとは真逆の結果が出ている。

 特徴的なのは、31勝中20勝を1~3番人気の人気上位馬が占めている点だ。

 一見「人気馬に乗っているだけ」という声が聞こえてきそうだが、トップジョッキーはその人気馬に乗った際、如何に「1着を獲れるか」こそが最も肝心な能力の1つである。人気馬であればあるほど関係者の期待は大きくなり、同時に結果が伴わなかった際の落胆も大きくなるからだ。

 実際に、現在リーディング首位の川田騎手が1番人気に騎乗した際の勝率は46.6%、2位のC.ルメール騎手が同39.7%と、基本的にトップジョッキーは上位にいくほど高い“決定力”を秘めている。

 今年の藤岡佑騎手の同37%は、上位2人には及ばないものの3位・岩田望来騎手の32.9%、4位・横山武史騎手の36.8%、5位・戸崎圭太騎手の33.8%を上回っている。特に1番人気で10勝を挙げている中で2着1回、3着3回、4着2回、5着1回と勝てそうなときの取りこぼしが極めて少ないことは、称賛されて然るべきだろう。

 ちなみに昨年の藤岡佑騎手は同24.4%と、やはり“イメージ通り”だった。しかし、今年は1~3番人気に広げても、勝率27.8%は近5年で最も優秀だ。

「まだ完成の段階ではない中で、このパフォーマンス。スムーズな競馬ができなかったときにどうかですが、重賞でも楽しみです」

 そう相棒のペプチドナイルを称えた藤岡佑騎手は、2004年のデビューから今年で騎手20年目、37歳といよいよベテランの域に入った。

 最近ではセリフォスで前哨戦のデイリー杯2歳S(G2)、富士S(G2)を勝ったにも関わらず、本番の朝日杯フューチュリティS(G1)、マイルCS(G1)では、それぞれC.デムーロ騎手、レーン騎手に乗り替わり。関係者の間でも「前哨戦は良いけど、(勝利が求められる)本番は……」というイメージが定着してしまっている印象だ。

 実際にこの日、勝利に導いたペプチドナイルも重賞挑戦となる次走(エルムS・G3)では、大沼Sで騎乗していた富田暁騎手に乗り替わるとのこと。また今春にジャックドールが武豊騎手と大阪杯でG1初制覇を飾ったことは、元主戦騎手として思うところがあったに違いない。

 今年のここまでの成績には、藤岡佑騎手に定着してしまった「勝負弱い」というイメージを払拭できるだけの内容がある。後は、秋の大舞台で結果を残し「新・藤岡佑介」を全国の競馬ファンにアピールするだけだ。

GJ 編集部

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