【ジャパンダートダービー(G1)展望】5戦合計「25馬身差」大井の怪物ミックファイア三冠制覇へ! “ラスボス”は武豊ミトノオーらJRA勢か

競馬つらつらより

 12日、南関東の大井競馬場では第25回ジャパンダートダービー(G1、以下JDD)が行われる。

 3歳ダートグレード競走の再整備により、来年から開催時期を10月に移動し、名称も「ジャパンダートクラシック」への変更が予定されているこのレース。JDDとして迎えるラストイヤーはどんな結末を迎えるのか、早速展望していこう。

 過去10年でJRA所属馬の8勝に対し、地方所属馬は2勝。例年なら有力馬の紹介は前者からになることが多い。しかし、今年は地元・大井に所属する5戦5勝のミックファイア(牡3歳、大井・渡辺和雄厩舎)の名前を真っ先に挙げざるを得ないだろう。

 南関東の三冠に王手をかけているシニスターミニスター産駒の怪物は、昨秋に大井でデビューすると、いずれも逃げ切って3連勝でキャリアをスタート。2着馬との着差は、初戦から順に5馬身、5馬身、3馬身と、世代屈指の能力を発揮した。

 そしてこの2023年、ぶっつけ本番で三冠第一関門の羽田盃へ向かったミックファイア。5か月ぶりの実戦ということもあって4番人気に甘んじた一戦は、初めて2番手から競馬を進めた。

 レースを引っ張ったポリゴンウェイヴから3馬身ほど離れた2番手を追走したミックファイア。前に馬がいる初めての展開にも全く戸惑った様子は見せず、3角手前で楽に先頭に並びかけると、3角過ぎには早くも先頭に立った。

 最後は単勝1.4倍の1番人気ヒーローコールが必死に追いすがろうとするが、ミックファイアはこれを全く問題にせず。あっさりと抜け出すと6馬身差をつけて一冠目を手中に収めた。

 そして迎えた前走の東京ダービーは一転、ミックファイアが単勝1.5倍で一本被りの人気に推された。羽田盃に続き、ここでも2番手からまるでリプレー映像を見るように3角過ぎに先頭に躍り出ると、直線でも同じような独走で再び6馬身差でゴールを駆け抜けている。

 JRA所属のエリートたちを相手に、堂々の主役としてJDDを迎えるミックファイア。1999年の第1回を勝利したオリオンザサンクス以来、24年ぶり2頭目の大井所属馬による制覇の瞬間は近づいている。


 そのミックファイアに対抗する筆頭が、JRA勢の大将格ミトノオー(牡3歳、美浦・牧光二厩舎)だろう。

 JRA勢の中では最多の4勝を挙げているロゴタイプ産駒で、前走・兵庫チャンピオンシップ(G2)で武豊騎手と初コンビを組んで重賞初Vを飾ったが、そのパフォーマンスがとにかく圧巻の一言だった。

 好発を決めて先手を取ったミトノオーは、レースの序盤こそメイショウオーロラにぴったりとマークされやや折り合いを欠くシーンもあった。しかし、1周目のホームストレッチで徐々にリードを広げにかかると、終始楽な手応えのまま4コーナーを迎えた。

 直線は武騎手が軽く気合いをつけただけで、ほぼ馬なりのまま後続との差を広げると、最後は2着馬に6馬身の差をつけて連勝を3に伸ばしている。

 レース後には武騎手が「素質はすごくあると思いますし、まだまだ良くなりそう」と話していたが、期待通り前走以上のパフォーマンスを発揮することができるか。21年の北海道セレクションセールで1870万円(税込)で取り引きされた“格安馬”のミトノオーが初のG1獲りに挑む。

 ミトノオーと同じく4連勝でのG1獲りを狙うのは、21年の1歳セレクトセールで2億2000万円(税込)の値をつけた“高額馬”のユティタム(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)である。

 ユティタムがデビューしたのは昨夏の札幌で、初戦は2着に敗れたが、このレースで先着を許したのはのちにユニコーンS(G3)を制したペリエールだった。

 その後は川田将雅騎手とコンビを組み、12月の阪神で2戦目を迎えると、1.1倍の断然1番人気に応えて8馬身差で圧勝。年末の2歳1勝クラスも難なく勝利し、春に備えた。

 年明けはレースを使うことなく、基礎体力の向上に努めると、これが奏功。復帰戦に選んだ5月の青竜S(OP)を前にした追い切りではG1・3勝馬のソダシを相手に併せ馬で馬なりのまま先着を果たす桁違いの走りを披露したことも話題を集めた。

 実際に本番は調教を上回るパフォーマンスで、好位追走から楽々と抜け出して、初の左回りもあっさり克服した。これで川田騎手とコンビ結成後は破竹の3連勝。今回は重賞初挑戦でメンバーは一気に強化されるが、あっさり勝利しても何ら不思議はないだろう。


 兵庫チャンピオンシップでミトノオーの2着に入ったキリンジ(牡3歳、栗東・佐々木晶三厩舎)は、長くいい脚を使えるタイプ。前走はミトノオーに6馬身ちぎられたが、3着馬には10馬身の差をつけた。2000mへの距離延長を味方に、早めのスパートでその差を縮めたいところだ。


 昨年12月の全日本2歳優駿(G1)でデルマソトガケの2着に好走したオマツリオトコ(牡3歳、美浦・伊藤圭三厩舎)も実績では上位の存在。これまでマイル戦までしか経験はないが、2000mで新たな一面を見せたいところ。

 今年は3戦連続で掲示板外と凡走続きだが、前走のユニコーンSは上がり3ハロンがメンバー2位の末脚で復活の気配を漂わせている。


 昨年11月のJBC2歳優駿(G3)覇者のゴライコウ(牡3歳、栗東・新谷功一厩舎)も侮れない。今年はヒヤシンスS(L)5着、UAEダービー(G2)12着と精彩を欠いているが、4戦ぶり幸英明騎手とのコンビで復活を狙う。

 岩田望来騎手とのコンビで目下2連勝中のテーオーリカード(牡3歳、栗東・高柳大輔厩舎)は、逃げたときの成績が「2-1-0-1」。ハナさえ切ってしまえば粘り強い。ミトノオーとのハナ争いが激化して、乱ペースを生み出す可能性もありそうだ。

 この他には、2走前の羽田盃で勝ち馬ミックファイアに次ぐ上がり3ハロン37秒5をマークしたドラケン(牡3歳、大井・堀千亜樹厩舎)も展開が向けば上位争いに加わる力を持っている。

 5戦合計で25馬身差をつけて連勝街道を歩む怪物ミックファイアが三冠を達成するのか、それともJRA勢が意地を見せるのか。真夏に行われるラストJDDは12日の20時10分に発走を予定している。

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