大化け「500万円→1億5250万円」ミックファイアだけじゃない! サマーセール出身馬が全国の重賞勝ちまくり…オーナー大歓喜の“お宝馬”がザックザク!
日本競馬が世界に誇るセレクトセールは、今年も大盛況のうちに幕を閉じた。
2日間合計で435頭が取引され、落札総額は3年連続で史上最高記録を更新した281億4500万円。“セレクトデビュー”として注目されたコントレイルの産駒は、コンヴィクションIIの2023が歴代3位の5億2000万円で落札されるなど、新種牡馬としては異例の高評価を集めたことも話題になった。
毎年、馬主界の“天上人”が集結し、札束が本来のアイデンティティを失うほど乱れ飛ぶ“夏のお祭り”もこれにて閉幕。落札された若駒たちによる来夏以降の活躍を今から楽しみにしているファンも少なくないだろう。
それもそのはず。今や日本競馬の象徴的存在となったディープインパクトに代表されるように、これまで数々の名馬を輩出してきたセレクトセールは、今年の3歳馬からも多数の活躍馬が出現している。
ホープフルS(G1)を勝ったドゥラエレーデ、全日本2歳優駿(G1)のデルマソトガケといったG1馬を筆頭に、朝日杯フューチュリティS(G1)2着のダノンタッチダウン、京都新聞杯(G2)を勝ったサトノグランツ、きさらぎ賞(G3)のフリームファクシなど、名だけでなく「実」もしっかりと残す辺りは、日本最大の競走馬セリ市の面目躍如といったところだろう。
その一方、そんなセレクトセールの“頂上決戦”をただ見守ることしかできなかった中小オーナーたちにとって、この夏、最も熱い競走馬セールが約1か月後に迫っている。
8月21日に開幕する北海道サマーセールだ。
「サマーセール」と聞いて、あまりピンと来ない競馬ファンも少なくないだろう。世界的な良血馬が闊歩するセレクトセールに上場できないような馬たちのためのセリであり、どちらかといえば残念ダービーならぬ、“残念セレクトセール”としてしか認識していない人もいるかもしれない。
実際に、2日間合計435頭で281億4500万円を売り上げたセレクトセールに対して、昨年のサマーセールは70億2471万円。これでも少しは聞こえが良いかもしれないが、合計958頭が取引された結果である。
セレクトセールの2倍以上の馬が取引されながら、その売上は1/4以下。ちなみに平均落札額はセレクトセール2023が6470万1149円だったことに対し、昨年のサマーセールは733万2682円と約1/9だった。だからこそサマーセールは地方競馬にも視野を向けた中小馬主向けといえるが、絶対王者セレクトセールの注目度やスケールと比較するのは、やはり気の毒といえるだろう。
しかし、上場馬が「セレクトセール組に負けない活躍を見せている」といえば、話はまったく変わってくる。
今週12日に3歳ダートの日本一を決めるジャパンダートダービー(G1)が開催され、大井所属のミックファイアがJRA所属のキリンジ、ミトノオーといった強豪を相手に快勝。史上2頭目となる南関東三冠馬に輝いたことは記憶に新しい。
ちなみにジャパンダートダービーの1着賞金は6000万円。この勝利でミックファイアは、すでに1億5000万円を超える賞金を稼いでいることになる。そして、本馬は一昨年のサマーセールにおいて500万円で落札された“お宝馬”である。
言うまでもなくミックファイアは、まだ3歳春を終えた段階。すでに落札額の約30倍となる賞金を獲得しているが、資金力が限られる馬主にとっては、まさにジャパニーズドリームといっても過言ではないはずだ。
さらに同世代から兵庫ジュニアグランプリ(G2)を勝ったオマツリオトコ(落札1300万円)、ユニコーンS(G3)勝ちのペリエール(落札1000万円)、ファンタジーS(G3)勝ちのリバーラ(落札950万円)、JBC2歳優駿(G3)のゴライコウ(落札700万円)……。
はたまた米国のサンタアニタダービー(G1)で2着したマンダリンヒーロー(落札1000万円)まで出てくれば「今度は自分も……」という希望を胸に、今年のサマーセールに参加するオーナーも多いはずだ。
「現3歳世代のサマーセール出身馬の活躍ぶりは、過去最高といっても良いかもしれません。ミックファイアを筆頭に全国の地方競馬にも多くの馬が所属していますが、今年はスマイルミーシャが園田の兵庫ダービーを勝ったことに加えて、セブンカラーズが名古屋の東海ダービーを制覇。他にも枚挙に暇がないほど、サマーセール出身馬が全国の重賞を勝ちまくっています。
JRAなら萩S(L)のトップナイフ、エルフィンS(L)のユリーシャといった辺りもサマーセール出身馬。先日のラジオNIKKEI賞(G3)でもシルトホルンが2着に好走していましたね、あの馬の落札価格は350万円でした」(競馬記者)
また、来年からは全国のダートグレード競走の大規模な見直しが行われ、ダート三冠路線が大きくグレードアップする。
特に注目したいのが賞金面で、前哨戦を含めた関連競走は軒並み賞金がアップ。例えば、南関東三冠馬となったミックファイアの現在の総賞金は1億5250万円だが、来年に同じように三冠を達成すると、それだけで2億2000万円になる。
毎年、地方を中心に多くのダート活躍馬を輩出するサマーセールの関係者にとっては、大歓迎といえる“革命”だろう。
かつては、JRAで年度代表馬になったモーリスも輩出したサマーセールだが、2013年に25億円だった全体売上が昨年は70億円と、年々注目度が増している。合計1426頭の上場が予定される今年のサマーセールから、どういった活躍馬が飛び出すのか。
セレクトセールこそ閉幕したものの、未来の“お宝馬”を巡る熱い夏はまだまだ続きそうだ。