宝塚記念「除外」から1年…失意のC.ルメール“思わぬ拾い物”が4連勝!「絶対合ってる」2年ぶりの1200mで覚醒した超新星
22日、札幌競馬場で行われたTVh賞(3勝クラス)は、1番人気のエクセトラ(牡4歳、栗東・吉村圭司厩舎)が勝利。未勝利戦から怒涛の4連勝を飾り、10月にスプリンターズS(G1)が控える1200m戦線に新星登場をアピールした。
「ポテンシャルの高い馬。楽に勝てました」
レース後、C.ルメール騎手がそう評価した通り、2着とはクビ差だったが、着差以上に能力の開きを感じさせる競馬。エクセトラにとっては一昨年7月のデビュー2戦目以来、約2年ぶりの芝1200mとなったが「スピードがあるし『絶対合ってる』と思って、勝つ自信がありました」と鞍上は自信満々だったようだ。
「久々の芝1200mとは思えない、強いレースでした。前半600m通過が33.3秒と前が少しやりあったこともあって、スタート直後は追走に手間取っている様子でしたが、流れに乗ってからの走りは完全に一枚上手。ルメール騎手が外々を回したのは『それでも勝てる』という自信の表れでしょうね。まだ、これでオープン入りしたばかりの馬ですが、今後はスプリント重賞の常連になってもおかしくないと思います」(競馬記者)
4連勝で大きく出世したエクセトラだが、これまでの道のりは決してエリート街道というわけではない。
一昨年6月の2歳新馬戦で早期デビューを果たしたものの3番人気12着と大きく人気を裏切ると、そこから10連敗……。11戦目の未勝利を勝ち上がったのは、すでに同世代の日本ダービー(G1)が終わり、未勝利戦が競走馬としての生き残りを懸けた“崖っぷちの戦い”と言われ始める頃だった。
ただ、ここで待望の初勝利を挙げたエクセトラにとって、自身のキャリアを左右する大きな出来事があった。後に連勝街道へ導くルメール騎手との出会いだ。
この日は宝塚記念(G1)の開催日。トップジョッキーのルメール騎手にとってエクセトラは、宝塚記念の“ついで”に騎乗する1頭に過ぎなかったのかもしれない。しかし、レースではルメール騎手に「完璧です」と言わしめるほど大きな印象を残すことに成功している。
現役最強騎手を主戦に迎えた効果は、すぐに表れた。
蟻洞(ぎどう、蹄壁の奥深くに空洞ができる病気)の影響もあって、コンビ2戦目は10か月後となったが、これを難なく快勝。馬体重が28キロも増えていたが、ルメール騎手は「パワーアップして、走りもパワフルになった」と成長分と捉えている。
ただ、大きく馬体が増えたこともあって「筋肉質でスプリンターのようになってきた。これからは短い距離でも頑張ってくれると思う」とルメール騎手は相棒の変化を敏感に感じ取っていたようだ。この主戦騎手の進言もあって、陣営は約2年ぶりの芝1200m挑戦を決意。
その結果、スプリント路線に大きく名乗りを上げる今回の勝利に繋がった。
「血統的にも、スプリントで強いんじゃないかと思っていました」とは、エクセトラを管理する吉村調教師だ。次走も当然1200mのUHB賞(OP)へ向かうことを明かしている。
なお、「オープンでも楽しみ」と語るルメール騎手は、エクセトラと初コンビを組んだ昨年の宝塚記念当日、グランプリで騎乗予定だったオーソリティがレース直前に右前肢ハ行を発症して除外に。失意に終わったフランス人騎手にとって、エクセトラは“思わぬ拾い物”となった。