「13戦2勝」の父が無敗の三冠馬ミックファイアを輩出!鳴かず飛ばずから種付け料トップの人気種牡馬に大変身…成功を見抜いた生産者の卓越した眼力
6日に新潟競馬場で行われたレパードS(G3)は、オメガギネスとの叩き合いを制したライオットガール(牝3、栗東・中村直也厩舎)が見事に重賞初制覇を飾った。
実績上位の3勝を挙げていたが、牡馬の素質馬たちが相手ということもあり、5番人気の伏兵扱いだったものの、レース後のコメントで鞍上の岩田望来騎手が「上手くいけば勝てると思っていた」と振り返った通りの実力を証明した。
牝馬によるレパードSの勝利は、2010年のミラクルレジェンド以来、13年ぶりの快挙。混戦模様の3歳ダート路線に楽しみな新星の登場となった。
また、ライオットガールを輩出したシニスターミニスターの産駒が、ダートで存在感を発揮していることにも触れておきたい。
重賞6勝を挙げて種牡馬入りしたインカンテーションは、2013年のレパードSの優勝馬。ダートの中距離G1を3勝しているテーオーケインズ、先月のジャパンダートダービー(G1)で無敗の南関東三冠を達成したミックファイア(牡3、大井・渡邊和雄厩舎)もシニスターミニスター産駒だ。
今や中央・地方に限らず、素質馬を送り出しているシニスターミニスターは、ダート界の新興勢力としても注目の存在といえる。
2005年12月に米国でデビューしたシニスターミニスターは、2着に8馬身差をつけて2戦目を勝ち上がると、G1初挑戦のブルーグラスS(米G1)では2着に史上3番目となる12馬身3/4の大差をつける独走で初G1勝利を飾った。
しかし、前哨戦であれだけの強さを見せながら、続くケンタッキーダービー(米G1)で16着に惨敗すると、その後はまるで別馬になったかのような敗戦を繰り返した。G1であれほどの圧勝劇を演じた馬が、通算成績13戦2勝で引退したことは、関係者にとっても想定外の結末だっただろう。
ただ、評価が急落したシニスターミニスターの潜在能力に目を付けたのが、日高の生産者だ。アメリカのG1勝ち馬を150万ドル(当時で約1億7300万円)という破格値で購入することに成功した。
近年の産駒活躍で種付け料が高騰
日本で種牡馬入りしたシニスターミニスターの産駒は2011年にデビュー。初年度の種付け料は150万円で設定されたものの、産駒がコンスタントに活躍したことを評価され、昨年は350万円にまで高騰した。
今年はさらに150万円が上乗せの500万円にまで上がり、繋養先のアロースタッドで単独トップ。シニスターミニスターの実績を遥かに上回るカリフォルニアクロームやJRAのG1勝ち馬らを押しのけて、満口になるほど人気を集めている。ミックファイアの登場でまだまだ上がっていきそうな勢いだ。
ちなみに今年のセレクションセールにおいて、プロ野球ソフトバンクの柳田悠岐選手が3頭の1歳馬を購入したことで話題となったが、最高落札価格9400万円(税抜)で取引されたカリーニョミノルの22(牡1)もまたシニスターミニスター産駒だった。
一昨年、昨年と3位の地方リーディングサイアーにおいても、今年は2位のエスポワールシチー、3位のパイロを抑え、初めてトップに立った。それだけに、いち早くそれを見抜いた日高の生産者の卓越した眼力には恐れ入る。
鳴かず飛ばずの成績で日本にやってきたシニスターミニスターが、新天地でここまで成功すると想像できた人物は決して多くなかったのではないだろうか。