「今年0勝」大魔神・佐々木オーナーの流れを変えるか?関屋記念ディヴィーナと重なる兄ブラヴァスの記憶

 今週末から夏の小倉開催が始まり、サマー2000シリーズ第3戦の小倉記念(G3)が行われる。一方3週目となった夏の新潟開催では、サマーマイルシリーズ第3戦の関屋記念(G3)が行われる。

 小倉記念には連覇を狙うマリアエレーナや2021年の優勝馬モズナガレボシ、さらにエヒト、カテドラル、ククナなどが出走。関屋記念には中京記念(G3)の1・2着馬セルバーグとディヴィーナ、2021年の優勝馬ロータスランド、ララクリスティーヌ、サクラトゥジュール、メイショウシンタケ、ラインベック、ビューティフルデイといった好メンバーが出走する。

 どちらも見どころ満載の一戦だが、注目はやはり関屋記念であろう。

 残り2戦となったサマーマイルシリーズの状況からすれば、このレースを勝利できれば大きなアドバンテージとなる。特に中京記念を制し、現在11ptでシリーズ1位のセルバーグ、ポイント上位のメイショウシンタケやディヴィーナは、ここを勝てばサマーチャンピオンに王手となるだけに、陣営もかなり力が入っているはずだ。

 その中で一際注目を集めるのが、大魔神こと佐々木主浩オーナーの愛馬ディヴィーナだ。

 佐々木氏はこれまでヴィルシーナ(ヴィクトリアマイル2勝)、シュヴァルグラン(ジャパンC)、ヴィブロス(秋華賞・ドバイターフ)といった所有馬が活躍し、国内外でG1レースを5勝している。

 2007年の馬主デビュー1年目でいきなり3勝をあげ、2012年にはヴィルシーナでクイーンS(G3)の重賞初勝利、2013年には早くもG1レースを勝利している。所有馬の頭数はそれほど多くないものの、馬主デビューから毎年勝利しており未勝利だった年はない。これまで通算30頭ほどの所有馬で半数以上が勝ち上がり、日本中央競馬会(JRA)で64勝、重賞12勝、G1を5勝はかなり“もっている”馬主といえるだろう。

「今年0勝」大魔神・佐々木オーナーの流れを変えるか?

 しかしそんな佐々木氏も、今年は緊急事態といえるかもしれない。なんと8月10日の時点でいまだ未勝利、つまり0勝なのである。また重賞に関しても、2020年に新潟記念(G3)を制したブラヴァスを最後に勝利していない。

 その要因として、今年は期待の3歳馬が思ったような成績を残せていないことが大きい。

 昨年6月にデビューしたガルヴァナイズは、これまで1番人気に3度支持されるも2着が精一杯。8月5日の休み明け初戦は差のない7着とまずまずの成績だが、残り少ない3歳未勝利でどこまで出走できるか。

 ヴィンセドリスは父ロードカナロア母ヴィブロスと期待の良血馬だが、4戦して2着2回など初勝利まであと一歩も勝ち上がれていない。シュヴァルグランとヴィルシーナの弟で、父キタサンブラックの良血馬グランヴィノスは、昨年10月にデビュー勝ちを決めるも、その後川田将雅騎手が騎乗した京都2歳S(G3)は6着、D.レーン騎手が騎乗した青葉賞(G2)で8着。一流ジョッキーを確保しても結果が出なかった。

 もちろん金銭的なことよりも『早く1勝したい』のが本音だと思われるが、それが今週の関屋記念であれば、これほどドラマチックなことはない。

 仮にディヴィーナが関屋記念を勝利し、サマーマイルシリーズのチャンピオンとなれば、馬主である佐々木氏にはサマーマイルシリーズの報奨金2400万円も贈られる。ディヴィーナの兄ブラヴァスは、関屋記念と同じ新潟競馬場で行われる新潟記念の勝ち馬であり、2020年のサマー2000シリーズ王者。これまで大きな怪我や故障もなくおよそ1億5000万円を獲得。サマー2000シリーズの報奨金4000万円を加えれば約2億円を稼いだ馬主孝行の馬だ。

 その妹であるディヴィーナは、まさにサマーシリーズの申し子と呼べるような馬であり、この関屋記念は絶好のチャンスといえるだろう。前走の中京記念はノーマークだったセルバーグの逃げ切りを許したが、さすがに今回はどの馬も同馬をマークするだけに、楽な展開にはなるまい。しかも新潟外回りコースは日本一長い658.7m。前走は追い込んで届かなかったディヴィーナに条件は向く。

 そして関屋記念を制し最終的にサマーマイルシリーズの王者となれば、1着3280万円(1着賞金4100万円の80%)に加え、サマーマイルシリーズの報奨金2400万円が馬主に与えられる。加えて佐々木氏にとっては2023年JRA初勝利となるわけで大きな追い風となるに違いない。

 佐々木氏の2023年JRA初勝利、サマーマイルシリーズのチャンピオン……。さまざまな期待を背負って関屋記念に挑むディヴィーナの走りから目が離せない。

仙谷コウタ

初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。

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