開業4年目「新進気鋭」トレーナーがまたも受難…非業の死を遂げた大器に代わる「看板候補」が屈腱炎発症
秋競馬を前に残念なニュースが入ってきた。
10月9日の京都大賞典(G2)へ向けて調整が進められていたドゥラドーレス(牡4歳、美浦・宮田敬介厩舎)が、右前脚に屈腱炎を発症。同レースを回避し休養に入ることがわかった。
ドゥラメンテ産駒で近親にディープインパクトがいる同馬は、デビュー2連勝で一躍クラシック候補となった逸材。惜しくもダービー出走とはならなかったが、三冠最終戦となった昨年の菊花賞(G1)で4着に好走。アスクビクターモア、ボルドグフーシュ、ジャスティンパレスに続いたのだから、敗れたとはいえ十分インパクトを残したといえる。
その評判通り、前走の江の島S(3勝クラス)は8ヶ月の長期休養明けだったにもかかわらず、メンバー最速の上がりで完勝。手綱を取ったC.ルメール騎手も「上のクラス、重賞に行ける馬です」と、条件戦レベルに留まっている馬ではないと話していた。
それだけに、次走の京都大賞典を楽しみにしていたファンが多かったことは間違いない。SNSやネット掲示板などにも「これは残念すぎる」「秋の大舞台で大仕事してくれると思ったのに」といった残念極まりないとする声が寄せられている。
「新進気鋭」トレーナーがまたも受難…
またドゥラドーレスのリタイアは、同馬を管理する宮田調教師にとっても無念であることは想像に難くない。
同調教師は国枝栄厩舎などで調教助手を経て、7度目の挑戦で調教師試験に合格。2020年に厩舎開業した4年目の新進気鋭トレーナーである。すでにダンシングプリンスでG1勝利も収めているが、その名を全国に知らしめるきっかけの1つとなったのが、グレートマジシャンの活躍だろう。
新馬・特別戦と連勝を飾った同馬は、毎日杯(G3)2着をステップに日本ダービー(G1)に挑戦。宮田厩舎はこれが初のG1挑戦でもあったのだが、勝ち馬のシャフリヤールから0秒2差の4着に好走。勝てこそしなかったものの、調教師としてまだ2年目だった同トレーナーが大きな爪痕を残したことは間違いない。
なおグレートマジシャンはその後、脚部不安を発症。1年2ヶ月の休養を経て、昨年7月の関越S(OP)で復帰。宮田師は「またG1にチャレンジしたい」と期待を込めて送り出したのだが、周知の通り競走中止で予後不良という最悪の結果に……。
競馬にタラレバは禁物だが、同馬のデビューからダービーまでの走りを考えると、無事であれば同厩舎のエースであったことはもちろん、重賞はおろか、G1でも好勝負ができたことは想像に難くないだろう。
ドゥラドーレスは、そんな非業の死を遂げた大器グレートマジシャンに代わる厩舎の看板候補だったと思われるが、こちらも戦線離脱せざるを得なくなってしまったというのは、宮田調教師にとっても痛恨であるに違いない。
ただ「不治の病」とも称されている屈腱炎だが、獣医師からドゥラドーレスの患部は、過去の症例と比較すると十分に復帰可能の程度であると診断が下されたのは、不幸中の幸いだったといえる。
宮田厩舎の管理馬といえば、ルメール騎手が「第二のグランアレグリア」と評したラスールも、来月の新潟で昨年4月以来となる復帰戦を予定している。ドゥラドーレスもしっかりと治療して、また元気な姿で戻ってきてくれることを期待したい。