横山典弘「武豊超え」に願ってもないチャンス! スプリンターズSのアグリ、菊花賞のトップナイフも決定…父を尊敬する横山和生も後押し?

横山典弘騎手

 先週末は横山典弘騎手がベテランらしい冷静な手綱捌きで存在感を見せてくれた。

 土曜中山の秋華賞トライアル・紫苑S(G2)をモリアーナで制覇すると、日曜阪神のセントウルS(G2)は、アグリで2着に敗れたとはいえ、大胆な後方待機策を披露。管理する安田隆行師は「この馬の良さを引き出してくれた。心強いですね」と本番への手応えを感じていた。

 昨年2月のきさらぎ賞(G3)をマテンロウレオで制して以来、1年7か月ぶりの重賞制覇となった横山典騎手。近年は息子の和生騎手や武史騎手の活躍が話題に上ることが増えたものの、円熟味を増したベテランの騎乗技術はまだまだ健在だ。

 先週の開催は開幕週ということもあり、人気薄の逃げ先行馬が前残りしやすい馬場傾向だった。レースに騎乗する騎手もそんな馬場状態を意識せざるを得なかったはずだが、我が道を貫いていたのが横山典騎手だ。

 特に紫苑Sは、ベテランの冷静さが功を奏した好騎乗だった。

 このレースには秋華賞(G1)の権利取りを狙う馬が出走していたため、勝負どころでワンテンポ早く動いた騎手も多くいたのだが、横山典騎手とモリアーナのコンビは17頭立ての後ろから2番手という極端な後方での追走。絶望的に映るポジションながら、最後の直線に入ると馬群の中をスルスルと進出し、先に抜け出したヒップホップソウルをゴール前で半馬身交わす芸術的な追い込みで勝利した。

 これにはヒップホップソウルで敗れた横山武騎手が、自身の騎乗を「100点」と振り返りながらも、「勝った馬は120点」と脱帽したほど。交わされた相手が父だったことには、本人も少々複雑な心境だったかもしれない。

「あの騎乗には正直度肝を抜かれました。確か後ろの方にいたはずなのに、一体どこから飛んできたのかと思えるほどの“横山典マジック”でしたね。道中は慌てず騒がず枠なりにインで脚を溜めて、直線も前が詰まることなく針の穴を通すような見事な進路取り。開幕週の中山であそこまで慌てずに乗れるのは典さんくらいしかいないでしょうね。

勝ち切れない競馬が続いていたモリアーナを2回目の騎乗でしっかり手の内に入れ、武史騎手の馬を差し切っての勝利はアッパレの一言。ネットやSNSでは色々と言われていますが、それでも昆貢師や松永幹夫師、安田隆行・翔伍師が継続的に依頼するのは、大ベテランに対する揺るぎない信頼の証でしょう」(競馬記者)

 また、記者の話によると、最近は和生騎手と親子で馬を回し合う関係も出来上がっているようで、父を尊敬している和生騎手も、自分が乗れない時には「次は親父がいいと思いますよ」と調教師や馬主にアピールしているらしい。

 アグリの代打を務めたセントウルSもそのパターンらしく、人気薄の札幌記念(G2)で2着に食い込み、菊花賞(G1)への参戦を発表したトップナイフだけでなく、スプリンターズS(G1)のアグリも横山典騎手とのコンビが発表されたばかり。

 そうなると、次はJRA・G1最年長制覇の更新も視野に入ってくる。現在は4月の大阪杯(G1)をジャックドールで優勝した武豊騎手の54歳19日がジョッキーの最年長勝利記録だが、1つ年上の横山典騎手がスプリンターズSか菊花賞を勝てば、レジェンドの偉大な記録を更新することになる。

 武豊騎手が命名した5爺(武豊、柴田善臣、横山典弘、熊沢重文、小牧太)のメンバーによる前人未到の最年長記録争いも、今年の秋競馬をより一層盛り上げてくれそうだ。

GJ 編集部

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