武豊×ドウデュースVS C.ルメール×イクイノックスはジャパンC(G1)へ持ち越し…明暗分かれた天皇賞・秋「3時間前」のリハーサル
29日、東京競馬場で行われた天皇賞・秋(G1)は、1番人気のイクイノックス(牡4歳、美浦・木村哲也厩舎)が勝利。世界No.1ホースが、従来を0.9秒も更新する1:55.2の日本レコードを叩き出し、その力を改めて証明した。
圧巻とは、中国で行われていた登用試験「科挙」に由来し、当時「巻」と呼ばれた試験の答案で最も優れたものを他の答案の一番上に置いたことが語源になっているが、この日のイクイノックスの走りは、まさに「圧巻」だった。
果たして、この絶対王者に敵う馬は存在するのだろうか――。レースを観た、多くのファンがそう感じたはずだ。
そんな中で唯一残念だったことは、やはり「本当の意味」でのイクイノックスVSドウデュースが実現しなかったことだろう。
昨年の日本ダービー(G1)でイクイノックスを破り、世代の頂点に立ったドウデュース。その後2頭は紆余曲折を経て、今回が約1年半ぶりの再戦となった。戦前から「この秋、一番の注目レース」と言われ、多くのファンが待ち望んだ一戦だ。
結果的にイクイノックスが改めてその絶対的な力を示した一方で、ドウデュースは本来の走りができずに7着に敗退。一応の雌雄は決したが、ドウデュースを応援していたファンが不完全燃焼と思わざるを得ないのが、その鞍上に武豊騎手の姿がなかったことだ。
明暗分かれた天皇賞・秋「3時間前」のリハーサル…
頂上決戦を約3時間後に控えた、この日の東京5R。武豊騎手は無事にレースを終えたが、その後に騎乗馬の腹帯を外そうとした際に、馬が暴れて右太ももを蹴られた。百戦錬磨の武豊騎手をして「長年やっていて初めてのこと」というアクシデント……。
その場で蹲り、しばらく立つことさえできなかった。
「まさか、こんなことになるとは思いませんでした。舞台となったレースは、天皇賞・秋と同じ芝2000m。武豊騎手が騎乗したブラックライズは、ドウデュースの馬主キーファーズが運営する一口馬主クラブの所属馬であり、これは“本番”を見据えたオーナーサイドの配慮だったと思います。
武豊騎手もそんな思いに応えるように、中団から脚を溜める仮想ドウデュースといった競馬。最後の直線で伸びを欠いて敗れたものの、“予行演習”としては上々だったのですが……」(競馬記者)
一方、ジオセントリックに騎乗して、このレースを制したのはイクイノックスの騎乗が控えていたC.ルメール騎手。これまでと異なる競馬で、3番手から早め先頭で天皇賞・秋を押し切ったイクイノックスだが、ジオセントリックも2番手から早め先頭の競馬だった。
「皮肉なもので、この東京5Rとジオセントリックが2着馬につけた2馬身半差は、イクイノックスの天皇賞・秋とまったく同じ。さらに7着に敗れた武豊騎手のブラックライズですが、実はドウデュースの着順も7着でした」(同)
ドウデュースのファンでなくとも、残念な形に終わってしまった2強対決。だが記者曰く、急遽の代打となった戸崎圭太騎手の騎乗は決して悪いものではなく「それ以上に、この日のイクイノックスが強すぎた」とのことだった。
「無念。本当に残念です……。鞍を外したときに蹴られてしまいました」
報道陣の前に現れた武豊騎手は松葉杖をついていた。記者曰く「乗れるかなと思ったけど、みるみる痛みと腫れが増してきた」と、現状を冷静に語っていたという。ただ「骨折はしていません」というのは、ファンにとってもこの上ない朗報だろう。
「早く復帰できるように頑張ります」
そう再起を誓った武豊騎手。今回はアクシデントも含めて完敗と言わざるを得ない結果だったが、イクイノックスとの決戦は11月のジャパンC(G1)に舞台を移す。
話題の三冠牝馬リバティアイランドも参戦を予定している今年のジャパンC。武豊騎手×ドウデュースが完全復活の雄たけびを上げる舞台が整ったと思いたい。