ジャパンCに「大差負け」で存在価値が急落?ダート最高峰に対する「天地の差」が浮き彫り…使い分け対象レースとの差額も各陣営の選択に影響か

撮影:Ruriko.I

 天皇賞・秋(G1)で世界最強馬の実力をまざまざと見せつけたイクイノックスの出走で大きな注目を集める今年のジャパンC(G1)。同馬は報奨金の交付対象レースとなるドバイシーマクラシック(G1)を優勝しているため、ジャパンCを制した場合、1着賞金5億円に加え、約3億円のボーナスがもらえる計算だ。

 国際競走ということもあり、外国馬の積極的な参戦を促す目的を含んだ1着賞金5億円は、暮れのグランプリ・有馬記念(G1)と並ぶJRA・G1の最高額となっている。

■JRA・G1の条件と1着賞金【3(4歳)以上】

ジャパンC 東京芝2400 5億円
有馬記念  中山芝2500 5億円
天皇賞・春 京都芝3200 2億2000万円
宝塚記念  阪神芝2200 2億2000万円
天皇賞・秋 東京芝2000 2億2000万円
大阪杯   阪神芝2000 2億円
安田記念  東京芝1600 1億8000万円
マイルCS 京都芝1600 1億8000万円
高松宮記念 中京芝1200 1億7000万円
スプリンS 中山芝1200 1億7000万円
ヴィクトM 東京芝1600 1億3000万円
エリ女王杯 京都芝2200 1億3000万円
フェブラS 東京ダ1600 1億2000万円
チャンピC 中京ダ1800 1億2000万円

※スプリンS=スプリンターズS、ヴィクトM=ヴィクトリアマイル、エリ女王杯=エリザベス女王杯、フェブラS=フェブラリーS、チャンピC=チャンピオンズC

ダート最高峰に対する「天地の差」が浮き彫り…

 これに対し、同じ国際競走でもダートに目を転じると、JRAの扱いに大きな差があることが浮き彫りとなる。ダートの最高峰に位置するG1レースのフェブラリーSとチャンピオンズCの1着賞金は、ともに1億2000万円。最高賞金「5億円」に比して、「3億8000万円」と、その格差たるや4倍以上の開きで、もはや天地の差に等しい。

 この件については、2月のフェブラリーS(G1)でも懸念の声が上がっていた。開催時期の近いサウジC(G1)の1着賞金が約13億円、ドバイワールドC(G1)のそれも約9億円と超高額。マネーゲームで勝ち目のない国内G1より、超高額賞金を狙える海外G1に魅力を感じる陣営が出たのも仕方のない話だろう。

 実際にサウジCをパンサラッサ、ドバイワールドCをウシュバテソーロが優勝したのだから、来年以降も重要視されるローテーションとなるのではないか。

 そして、秋のダートG1戦線にも少しずつ影響が出始めた。これまで日本馬は海外のダート中距離G1に挑戦しても、なかなか好結果を残せずにいたのだが、春の快挙が追い風となったのか、今年はアメリカのブリーダーズCクラシック(G1)に挑戦した3歳馬のデルマソトガケが2着に激走。残念ながらドバイワールドCの覇者ウシュバテソーロは5着に敗れたものの、本場アメリカのダートG1で日本馬が1番人気(国内オッズ)に推されたことは、過去に例のない快挙でもあった。

 しかし、本来ならダート馬にとって秋の最大目標となるチャンピオンズCがソッポを向かれる状況にも拍車がかかった。

 デルマソトガケは年内のレースに出走せず、来年のサウジCとドバイワールドCを目標に調整。ウシュバテソーロはチャンピオンズCではなく、暮れの東京大賞典(G1)に向かうらしい。また、JBCクラシック(G1)を優勝したキングズソードも同じく東京大賞典を目標としているようだ。

 テーオーケインズやメイショウハリオは参戦する模様だが、朗報といえそうなのはレモンポップの出走程度。かつてジャパンCダート時代に海外からの参戦も見られたレースとしては、あまりにも寂しい現状といえる。

 使い分けの対象となる東京大賞典の1着賞金が1億円のため、チャンピオンズCとの差も2000万円程度。我々のような一般庶民からしたら2000万円は高額だが、サウジやドバイに比べたら微々たる額なのかもしれない。

 かといって主催者のJRAからすると、日本馬が世界最高峰といえる高額な賞金のダートG1を勝ちながらも、肝心の国内のレースでは相変わらず最低金額。芝に比べてダートの人気が見劣ることは否定できないが、そろそろダートG1の見直しを求められる時期なのかもしれない。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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