「同期」古川奈穂VS永島まなみリーディング争いの結末は……。勝ち星並んだ最終日も、最後は2年目の若手が5勝爆発で大逆転優勝
「ラスト1週もしっかり乗って、いい結果で終わりたいですね」
レース前、『スポニチ』の取材にそう誓っていた古川奈穂騎手は、この秋の福島で5勝。1週を残して開催リーディングのトップに立っていた。だが「安心できるポジションじゃない」と気を引き締めている通り、1勝差で永島まなみ騎手と丹内祐次騎手が追いかける接戦となっていた。
そして迎えた福島開催の最終週。古川奈騎手としては一歩でも先に出たかったが、残念ながら18日(土曜日)は未勝利。その一方で、永島騎手が最終レースで勝利してトップタイに並びかけると、1日3勝した佐々木大輔騎手も急浮上。3人が横一線で最終日を迎えることになった。
こうなると苦しいのが古川奈騎手だ。19日(日曜日)は永島騎手と佐々木騎手が10鞍の騎乗に対して、古川奈騎手はわずか3鞍。単純にチャンスの数で後れを取っていたからだ。
「同期」古川奈穂VS永島まなみリーディング争いの結末は…
そんな中、まず抜け出したのは永島騎手だった。
3Rで2番人気のベイパーコーンに騎乗すると、最後は逃げ粘る1番人気リュクススティールを競り落としての勝利。「よく辛抱してくれました。こういう競馬が合っていますね」と貴重な開催6勝目を掴み取った。
そんな永島騎手に待ったをかけたのが、佐々木騎手だ。
5Rで2番人気のスターに騎乗した佐々木騎手はスタートでやや後手を踏みながらも、積極的に外から捲っての勝利。「先生の指示通り、外目を気持ちよく走らせました」と窮屈な競馬が苦手な相棒をしっかりと勝利へ導いた。
先に抜け出したライバルに食らいつきたい古川奈騎手だったが、迎えた6Rでさらに試練が訪れる。騎乗予定だったコスモララバイが放馬……。貴重な3鞍の内の1鞍というだけでなく、前走2着とチャンスの大きい馬だったが、まさかの競走除外となってしまった。
だが、古川奈騎手には“切り札”が残っていた。続く7Rで騎乗したハクサンアイは前走で同じ福島のダート1150mの未勝利戦を3馬身差で快勝した有力馬。当日は1番人気に推されていた。
思わぬ形で窮地に追い込まれた古川奈騎手にとっては逆転リーディングへ負けられない戦いとなったが、発馬直後に隣の馬と接触する不利……。レース後に語った「テンに行かせてポジションを取りたかった」という当初のプランは一瞬で瓦解した。その後「徐々に勢いがついてからは良い感じでした」と振り返った通り、中団から追い上げたものの5着止まり。
結局、10番人気のユイに騎乗した最後の1鞍でも果敢にハナを切ったが、早々に脱落し手が掛かっていた福島リーディングには届かなかった。
「古川奈騎手にとっては、厳しい最終日になってしまいましたね。せめてコスモララバイに騎乗できればよかったのですが、あの放馬は仕方ないと思います。
一方で永島騎手と佐々木騎手は、その後も8Rを永島騎手が、10Rを佐々木騎手がそれぞれ勝利。最終的には2着の差で佐々木騎手がリーディングになりました。どちらも乗れている若手ですが、秋の新潟に続く開催リーディングを狙っていた“ローカル王”の丹内騎手を抑えての優勝ですから立派ですよ。
いずれにせよ3年目の古川奈騎手と永島騎手、2年目の佐々木騎手もすでに年間勝利数の自己ベストを更新中。特に永島騎手に至っては昨年から勝ち星が倍増している通り、3人とも今勢いに乗っている『乗れる若手』です。12月から始まる中京開催でも当然リーディング候補ですが、ローカルだけでなくG1の舞台でも見たいと思っているファンは少なくないと思います」(競馬記者)
今回の福島開催では悔しい結果となってしまった古川奈騎手。しかし、所属の矢作芳人厩舎頼みだった過去の姿はもうない。今や関西のトップジョッキーの1人に成長した坂井瑠星騎手を始め、名門厩舎からまた1人有望な若手騎手が巣立とうとしている。