イクイノックス、有馬記念挑戦を示唆する「+4kg」は完全体の証。「似てない」父キタサンブラックから受け継いだものとは
「色々な選択肢があると思うので、しっかり検討したいと思っています」
“あの”リバティアイランドに4馬身差という圧巻の走りを見せたジャパンC(G1)後、最強を改めて証明したイクイノックス(牡4歳、美浦・木村哲也厩舎)の「今後」について、オーナーのシルクレーシング・米本昌史代表はそう語った。
このコメントだけを一見すると、どんな馬にも適応しそうな内容である。しかし、こと対象がイクイノックスとなると、まったく話は変わってくる。
世界No.1としての影響力も然ることながら、体質の弱さに課題があった本馬が日本レコードの天皇賞・秋(G1)、そして今回のジャパンCという激戦の連続を経て、まだ「休養」以外の「選択肢がある」のは紛れもない進化の証だ。
無論、そこにはこのジャパンCを最後に引退する可能性も含まれているが、多くのファンが期待しているのは、イクイノックスの有馬記念(G1)参戦だ。それは同時に史上3頭目の秋古馬三冠への挑戦も意味している。
果たして、No.1ホースのグランプリ参戦はあるのだろうか。近年は秋古馬三冠の挑戦自体が減っており、休養や引退も十分に考えられるが、記者は「参戦するかもしれない」という。
有馬記念挑戦を示唆する「+4kg」は完全体の証
「天皇賞・秋からジャパンCにかけて、イクイノックス陣営が常々テーマとして挙げていたのが、自己最短となる中3週の競馬でした。
実際、レース前にイクイノックスの数少ない不安点を挙げた報道は軒並み中3週、つまりは天皇賞・秋の反動や、調整期間の短さなどを根拠にしているもの。4馬身差の圧勝劇は、そんな“雑音”をかき消すに十分なものでしたが、個人的に注目したのは『馬体重』の変動です。
ジャパンC前までのイクイノックスにとって、最短の出走は皐月賞(G1)から日本ダービー(G1)の中5週でしたが、最終的に8kgも馬体を減らしての出走になりました。
しかし、今回はそれより短い中3週ながら+4kg。前走の反動を気にする陣営の発言などもありましたが、中間の調教を控えているようにも見えなかった中で馬体を増やしてきたのは本馬が肉体的に充実し、かつての体質の弱さを改善している証拠だと思います。
今の状態なら、再び中3週となる有馬記念に出てきても驚きませんね。もちろん、これだけの馬なので無理はしないと思いますが、あとは陣営がどう判断するかでしょう」(競馬記者)
実際に一昨年の8月にデビューしてから、ここまで10戦したイクイノックスだが、実は馬体重を減らして出走したのは昨年の日本ダービーだけ。ジャパンC時は498kgとデビュー当初から24kgも増加。そのパフォーマンスも然ることながら、体質を含めた肉体面でも大きく成長している。
「レースで凄まじい瞬発力を見せるので、息の長い末脚を身上とした父キタサンブラックと似てないと言われるイクイノックスですが、キタサンブラックも510kgでデビューして540kgで引退と、現役時代の約3年間で馬体重を30kgも増やした馬。やや奥手の成長曲線など、成長と馬体重の増加がリンクする点は父譲りなのかもしれません」(同)
休養か、引退か、それともさらなる栄誉か。今やイクイノックスの動向は、日本だけでなく、世界が注目している。