【有馬記念】池添謙一、川田将雅の「鞍替え」で明暗?大きな影響及ぼしたイクイノックス引退…浮き彫りになった「ルメールファースト」の舞台裏
先日のジャパンC(G1)を圧勝したイクイノックス。有馬記念(G1)への参戦を熱望する声も多く見られたが、同馬を所有するシルクレーシングは、引退しての種牡馬入りを発表した。これによってジャパンCが事実上のラストランとなり、16日の中山競馬場で引退式も開催されることが分かった。
社台スタリオンステーションが設定した初年度種付け料は、なんと2000万円。これは最高額だった父キタサンブラックと同額であり、世界最強馬の活躍を信じて疑わない期待の表れだろう。一時代を築いたディープインパクトがいなくなっただけに、トップクラスの繁殖牝馬が集められることは間違いない。
「ジャパンCが今秋の最大目標とされていたため、事実上のラストランとなったとはいえ既定路線だったでしょう。ただあまりの楽勝が続いたことで、シルクレーシングは有馬記念の参戦も視野に入れたようです。
ですが、もし想定外の敗戦やレース中のアクシデントでも発生したなら、莫大な損失となりかねません。結局のところは、有馬記念を連覇しても評価は大きく変わらないということで引退が決まったと見られています。
世界最強馬の名に恥じない走りを見せた今だからこそ、無事な内に引退しておこうという結論ですね」(競馬記者)
その一方でイクイノックスの引退は、暮れのグランプリにも少なからぬ影響を及ぼしたらしい。
現在、有馬記念の出走馬や騎手が次々に発表されつつあるが、イクイノックスの主戦はC.ルメール騎手。今年のリーディングを独走している名手の騎乗馬が宙に浮いたことで、ちょっとしたルメール争奪戦に発展したようだ。
浮き彫りになった「ルメールファースト」の舞台裏
要するに“ルメール待ち”の陣営が複数おり、凱旋門賞(仏G1)で4着に好走したスルーセブンシーズ、コンビで4戦無敗の好相性を誇るジャスティンパレス、ジャパンCで3着に入ったスターズオンアースらが対象となっていた。
ルメールサイドがスターズオンアースをチョイスしたため、ルメール騎手の騎乗が叶わなかったジャスティンパレス陣営は、天皇賞・秋(G1)と同じく横山武史騎手の起用を決断し、スルーセブンシーズは池添謙一騎手とのコンビが決まった。
とはいえ、池添騎手はプラダリアに騎乗した京都大賞典(G2)を勝利しており、本馬の主戦も任されている。スターズオンアースも川田将雅騎手が乗りたがっているという噂もあった中で、ソールオリエンスと初コンビで参戦するようだが、これらの騎手たちには水面下で根回しに苦心していたらしい。
「当初はプラダリアに騎乗予定だった池添騎手ですが、宝塚記念(G1)でイクイノックスと接戦を演じたスルーセブンシーズに魅力を感じていたみたいです。そこでプラダリアとスルーセブンシーズの陣営に働きかけてゲット。プラダリアを管理しているのが弟の池添学調教師だったことも、希望を通しやすかったと思われます。代わりに乗るB.ムルザバエフ騎手は、むしろ不気味な存在ですが……。
ソールオリエンスについては、先日もお伝えした通り川田騎手に決まりました。菊花賞(G1)の後というタイミングで早々にオファーがあったそうです。ところが、ジャパンCでスターズオンアースの強さを目の当たりにしたこともあってか、もしスターズオンアースが有馬記念に出走するならこちらに乗りたいとアピールしたそうです」(同)
ソールオリエンスもスターズオンアースも同じ社台レースホースの所有馬であり、融通が利きそうだったのだが、結局はイクイノックスの引退でルメール騎手が乗れるようになったため、実現しなかった様子。同じように鞍替えを狙った池添騎手と川田騎手の2人だが、それぞれで明暗が分かれた格好だ。
ただ、こういった選択権の優先順位を踏まえると、ルメールファーストが浮き彫りになった印象もある。まずはルメール騎手の騎乗馬を最優先で決めてから、その次に川田騎手、横山武騎手という序列が浮き彫りになった有馬記念でもあった。