「何年乗り役やってんだ!(演技)」藤田菜七子の師匠の数奇な運命…ダービー制覇でまさかの主役交代劇【東大式必勝馬券予想】
うら若き乙女の祭典・阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)はアスコリピチェーノが無敗で戴冠、今週末の17日(日)は同じ阪神競馬場を舞台に将来を嘱望された男子が鎬を削る「朝日杯フューチュリティS」(2歳牡・牝、芝1600m)が行われる。2004年以降、牝馬も出走できるようになったが勝ち馬はまだいない。名牝グランアレグリアでも3着だった。
終戦間もない昭和24年、「朝日盃3歳S」(中山1100m)として創設され、歴代優勝馬には第2回の“幻の馬”トキノミノルを筆頭に、“元祖怪物”タケシバオー、“スーパーカー”マルゼンスキーら綺羅、星のごとく名馬が顔を並べ、2014年に中山から阪神にかわって以降もアドマイヤマーズ、サリオス、ドウデュースらを輩出。
書きたい馬は山ほどいるが、今回は昭和61年の優勝馬・メリーナイスを記しておこう。言わずと知れた翌年のダービー馬だがドラマチックすぎる人生、いや馬生で実際に「映画にも出演してしまった」というお話。
同年8月、函館新馬戦を勝利したメリーナイスは続く特別戦を4、2、1着と好走、朝日杯3歳S(当時呼称)に駒を進める。
ここで初戦をメリーに敗れたものの2戦目の新馬(当時は同開催中なら何度も新馬戦に出走できた)を勝ち上がり、重賞も連勝してきた好敵手ホクトヘリオスと再び相まみえることとなる。
1番人気は単枠指定のホクト、メリーは2番人気。小雨ながら良馬場でゲートは開く。ドウカンプレスが逃げる中、中団後方を進み直線に入るや否やメリーの豪脚が爆発。根本康広騎手の回転ムチも炸裂し、後方から追い込んだホクトヘリオスを1馬身半しのぎゴール。この優勝で最優秀3歳牡馬にも輝く(西のゴールドシチーと同時受賞)。
お手柄の根本騎手は、この前年の天皇賞・秋では絶対本命の皇帝シンボリルドルフを13番人気ギャロップダイナで下すという大番狂わせを演じG1初勝利を挙げているが、メリーナイスとのコンビの朝日杯優勝は、その後の人馬の数奇な運命の序章に過ぎなかった。
翌年、スプリングS、皐月賞に3歳王者の矜持で出走するも9、7着と冴えなかった根本&メリーは日本ダービーに挑戦。ご存じの通り直線独走の6馬身差で栄冠を頂くのだが、両者のあずかり知らぬところで大問題が起きていた。
宮本輝原作の映画「優駿ORACION」がクランクイン、スタッフは皇帝ルドルフの同郷後輩で単枠指定の1番人気マティリアルが勝つと確信し、彼を主人公としてフィルムを回していた。
しかし、4番人気のメリーナイスが優勝、しかも栗毛で四白流星のド派手美男。彼を主役・オラシオンにすげ替えるしか手はない。そんなこととは露知らず、根本&メリーは秋初戦のセントライト記念を1番人気で貫録勝ちしたものの菊花賞は9着と凡走、3番人気で有馬記念を迎える。
「優駿」のスタッフも今度はあやまたず撮影しようと中山に結集、ゲートは開いた。ところが、だ! 2完歩目でメリーは躓き転倒、鞍上の根本も落馬、派手にターフに転がりメリーはカラ馬でけなげに駆ける。スタッフは、また困った!
苦肉の策で、根本は騎手役で映画に出演することとなり調教師役の田中邦衛に「何年乗り役やってんだ!」と叱られるハメになった。メリーナイスはその後勝てずじまいも種牡馬として毎年50頭前後の牝馬相手に種付け生活を楽しむ。
根本騎手は通算235勝という地味な成績で調教師転身、藤田菜七子騎手の師匠として再び脚光を浴びる。人馬とも「万事塞翁が馬」を痛感させられる物語として永遠に記憶されたい。
面白人情噺で紙幅も尽きてきたので「東大馬券王の大よそー」に移ろう。
過去10年見渡すとある事実に気づく。「勝ち馬は前走1、2番人気で1着」。条件特別(サトノアレス)、未勝利(グレナディアガーズ)も然りで火を見るより明らかな東大式鉄則だ。
今年も前走デイリー杯を快勝したジャンタルマンタルと98年以降、全6頭が1、2、1、1、4、2着の東スポ杯勝ち馬シュトラウス、この2頭で決まると見た。上記条件を満たすエコロヴァルツ、オーサムストロークらへの3連単マルチで、もらったも同然! 有馬記念の軍資金、たっぷり調達しておこう。