【AJCC】テンポイント、トウショウボーイを倒したグリーングラスの圧勝劇から47年…予想の決め手は世代レベルの見極めにあり【東大式必勝馬券予想】
令和6年もはや3週目に入った。
イクイノックスもタイトルホルダーも去った今年のターフに一抹の寂しさを感じていたが、14日に京都の雅S(3勝クラス)を快勝したヤマニンウルスはこれで4戦4勝。デビュー戦では2着馬に4.3秒という史上最大着差をつけているが、ゆくゆくはマルゼンスキーの8戦8勝を塗り替え、“生涯無敗”の名馬として主戦の武豊騎手とともに歴史に名を刻んで欲しい。夢は世界へ大きくふくらんだ。
今週末の話に移すと、21日には中山競馬場で伝統の重賞、第65回アメリカジョッキークラブC(G2・芝2200m)が行われる。G2だけあって先週の日経新春杯(G2)と同じく昔から数多の一流馬が参戦している。
前回の原稿でテンポイント66.5キロの悲劇を書いた後者はハンデ戦だが、こちらは別定戦で歴代優勝馬には4歳と7歳(馬齢は現行表記、以下同)の2度制したスピードシンボリを筆頭にタケホープ、ホウヨウボーイ、アンバーシャダイ、スペシャルウィークらG1級のレースを複数回勝つ名馬が顔を並べる。
中でも思い出のレースは昭和52年で、この年の勝ち馬は明け4歳のグリーングラス。今でこそ“TTG”と名馬の一角に加えられているが、前年の菊花賞(現G1)では全くの無名馬。日本ダービー(現G1)で2着に泣いた“天馬”トウショウボーイが、神戸新聞杯、京都新聞杯を快勝して圧倒的1番人気。骨折もありダービー7着に沈んだテンポイントが京都大賞典(現G2)で古馬に混じり3着と復調気配の中、グリーングラスは10月にやっと3勝目を挙げ獲得賞金どん尻の21番目で出走にこぎつける。
結果はご存じの通りTTを2着、3着に従えた緑のメンコが内から抜け出し、単勝5250円の払戻は未だ破られていない菊史上最高配当だ。実は、同年1月31日のデビュー戦でトウショウボーイ、グリーングラスは一緒に走り1着、4着。5着にはシービークインが入り、後にトウショウボーイと結ばれ生まれた子が三冠馬ミスターシービーであり、このレースは「伝説の新馬戦」として後世に語り継がれることとなる。
グリーングラスに話を戻すが、頭が回っていなかった陣営は、その後の有馬記念(現G1)を無登録でパス。TTの史上初3歳での1着、2着を横目に年を越し、このAJCCに駒を進めた。前年の天皇賞馬で金杯の拙稿でも取り上げた“愛にあふれた”アイフル、名牝イットーの弟ニッポーキングが1、2番人気で、グリーングラスは菊花賞がフロックと思われたか3番人気の評価に留まった。
レースは、同世代のダービー馬クライムカイザーも交えた13頭立てで、良馬場薄曇りの下ゲートは開いた。カミノリュウオー、スピリットスワプスの逃げを見ながら3、4番手を進んだグリーングラスは3角で大まくり。先頭のまま直線に入り菊花賞同様に内ラチ一杯を駆けるその脚衰えず、古豪ヤマブキオー以下に影をも踏ませぬ勝利を飾った。
この模様は関西テレビでも生中継されたが、私には緑の覆面が「それ見たことか!TTに勝った俺の実力を思い知ったか!!」と1番人気に推さなかった競馬ファンをあざ笑っているように見えた。グリーングラスは翌年、非業の死を遂げたテンポイントの敵を討つかのように天皇賞・春(現G1)を制し、6歳でラストランの有馬記念も戴冠。TTG世代の圧倒的高レベルを証明し引退した。この教訓から東大式鉄則イの一番は「世代レベルをまず考えよ」。以来私は、古馬レースで予想紙の馬柱に向かった時、まず馬齢のチェックから始めることが今も続いている。
この辺で「東大馬券王の大よそー」に移ろう。
外厩の充実や、大阪杯のG1昇格などもあり寒い時期に無理は禁物と超一流馬の参戦が少なくなった。4歳有利データのハンデ戦・日経新春杯さえ5歳ブローザホーンに一蹴されたが、別定のAJCCとなると4歳はこの20年でたったの3勝。やはり「世代レベル」を第一に考え出走予定馬を見渡すと、重賞3勝で近2走・京都大賞典、チャレンジC(G3)で2着のボッケリーニが不動の軸か。
明け8歳だがグランアレグリア、クロノジェネシスがいる牝馬最強世代。残された男の意地を見せてほしい。ただ2着10回と詰めの甘さと中山に勝ち鞍が無いのが頭に推しづらい。
一発があるとすれば同じ8歳で中山コース3勝のカラテか。強い5歳世代で前年の中山金杯の覇者ラーグルフ。紅一点モリアーナは世代レベルから疑問符がつき、ヒモの2着、3着はチャックネイトorマイネルウィルトスでいいだろう。関東年初のG2を確実に取って、遠からじ春の古馬G1戦線に思いを馳せよう。