ドウデュース、リバティアイランド、ジャスティンパレスら「ドバイ流出」避けられず? 大阪杯(G1)「出走馬」に早くも心配の声
海外流出に苦しむのはフェブラリーSだけではない
昨年、日本のイクイノックスが世界No.1に輝いたように、今や日本は世界をリードする強豪国となった。イクイノックスが世界を震撼させたドバイワールドカップデーや、毎年多くの強豪が遠征する年末の香港国際競走だけでなく、近年は米国競馬の祭典ブリーダーズCを目指す日本馬も増加している。
競馬以外でも米メジャーリーグでMVPに輝いた大谷翔平選手や、英プレミアリーグで存在感を放つ三笘薫選手など、日本勢が世界で活躍することは、ファンや関係者にとって単純に嬉しいし、何より誇らしい。
しかし、その一方で近年、特に懸念されているのがスターホースの海外流出による日本競馬の空洞化だ。
例えばJRA(日本中央競馬会)は今週、来月24日に行われるサウジC(G1)の予備登録馬13頭を発表。昨年のドバイワールドC(G1)覇者ウシュバテソーロや、米ブリーダーズCクラシック(G1)2着のデルマソトガケ、フェブラリーS(G1)とチャンピオンズC(G1)を勝った統一ダート王レモンポップなど、日本のダート界を代表する強豪が名を連ねている。
無論、この13頭すべてが出走できるわけではないが、これだけの豪華メンバーが24日にサウジアラビアで戦えば、必然的に同月18日に日本で行われるフェブラリーSでは不在ということになる。近年はこういった背景もあって、日本最初のダートG1がその威信を失ってしまうことが懸念されている。
日本競馬と海外競馬はまさに、あちら立てればこちらが立たぬの関係だ。仕方のないこととはいえ、この問題はフェブラリーSに限った話ではない。今年、フェブラリーS以上に出走メンバーの低レベル化が懸念されているのが、3月31日に予定されている大阪杯(G1)である。
昨年の古馬王道路線組が、まさかの全滅?
フェブラリーSの相手がサウジカップデーなら、大阪杯の相手はその前日30日に開催されるドバイワールドカップデーだ。
毎年、日本のトップホースの多くが“流出”することで知られるドバイターフ(G1)、ドバイシーマクラシック(G1)だが、今年は昨年の古馬王道路線を賑わせた馬たちが次々と登録を表明。早くも大阪杯の出走メンバーが危ぶまれている。
昨年、宝塚記念(G1)、天皇賞・秋(G1)、ジャパンC(G1)を勝ったイクイノックスはすでに引退。大阪杯を勝ったジャックドールはサウジCを目指していたが、右前浅屈腱炎で9か月以上の戦線離脱が発表されたばかりだ。
また、17日には昨年の天皇賞・春(G1)を勝ったジャスティンパレスがドバイシーマクラシックに、有馬記念(G1)を勝ったドウデュースがドバイターフとドバイシーマクラシックに予備登録したことが報じられた。
この時点で、昨年の古馬王道路線の勝ち馬が、今年の大阪杯に出走する可能性はかなり低いということになる。
これだけでも「かなり深刻な状況」と言わざるを得ないが、さらにジャパンCで2着した昨年の三冠牝馬リバティアイランド、大阪杯と有馬記念で2着したスターズオンアース、天皇賞・秋で3着だったプログノーシスらもドバイ遠征の可能性が高まっている。また、エリザベス女王杯(G1)の覇者ブレイディヴェーグもドバイターフ出走の見込みだ。
これらに引退などの動向を加えると、昨年の古馬王道路線で馬券になった馬たちもほぼ全滅といった状況……。強いて挙げれば天皇賞・春2着のディープボンドの予定が未発表だが、こちらは3年連続出走中の阪神大賞典(G2)が3月17日に控えている。
2017年に春古馬三冠の開幕戦としてG1昇格を果たした大阪杯。だが実は、この時点からすでにドバイ開催との関係が懸念されていた。そんな背景もあってか、ここ3年はレイパパレ→ポタジェ→ジャックドールと大阪杯が唯一のG1勝ちという状況が続いている。
また昨年、大阪杯の売上約185億円は古馬王道路線6レースの中では、5位天皇賞・春の約226億円にさえ遠く及ばない断然の最下位だった。またフェブラリーSも、後発のチャンピオンズCに13年連続で後れを取っている。
今年、1951年の第1回から1月下旬か2月頭の風物詩として競馬ファンに親しまれてきた川崎記念(G1)が4月に移設された。表向きの理由は今年元年を迎えるダート革命の一環だが、やはりサウジCの創設は無関係ではないだろう。
日本の競馬関係者でさえ海外を選択している中、サウジCやドバイ開催に出走する外国馬が、日本のフェブラリーSや大阪杯を選ぶ未来は想像に難しい。共存共栄へ、何らかの改革が必要なことは、多くの人が感じているはずだ。