振り返れば凄い騎手ばかり! ペリエ、ムーア、スミヨン、モレイラ……日本競馬に新時代をもたらした衝撃の外国人騎手伝説

撮影:Ruriko.I

 2024年から始まった日本中央競馬会(JRA)の話題の1つは、初日から5人の外国人騎手が短期騎手免許で来日していることだろう。その5名はオレリアン・ルメートル騎手、リチャード・キングスコート騎手、ルーク・モリス騎手、レイチェル・キング騎手、レネ・ピーヒュレク騎手で、もちろん海外で多くのG1を勝利しているトップジョッキーたちだ。

 例年、短期免許で来日する外国人騎手といえば、圧倒的技術と勝負強さでファンを唸らせてきたが、今年は今のところはそうではなさそうだ。

 この5人の成績を見てみると、最多勝利はルメートル騎手の4勝だが、騎乗数41に対し勝率は9.8%。しかも勝利したのは平場戦のみで、特別戦と重賞は11戦未勝利。ほぼ同数となる40騎乗の坂井瑠星騎手が8勝で勝率20%なので、なかなか勢いに乗れないといえる。とはいえまだ1ヶ月以上の騎乗機会があるので、これからどうやって日本競馬に適応し、結果を残していくか興味深いところだ。

 JRAが外国人騎手向けに短期免許制度を解放したのは、1994年と今から30年前。つまり今年は短期免許開始30周年というわけでもある。その第1号はオールドファンには懐かしいリサ・クロップ騎手。1994年といえばナリタブライアンがクラシック三冠を達成した歴史的な年。クロップ騎手は重賞を勝利できずも、夏の小倉開催で9勝を挙げ「小倉ターフ賞・特別賞」を受賞している。同騎手が騎乗した馬はタマモハイウェイやオースミマックスなど、懐かしい顔ぶれだ。

 その後はアラン・ムンロ騎手、マイケル・ロバーツ騎手といったトップジョッキーが来日しているが、特に日本競馬に多大な影響を与えたのは、これから紹介する4人の騎手だ。

 

■オリビエ・ペリエ騎手

 初めて来日したのは21歳の1994年にJRAが開催したヤングジョッキーズワールドチャンピオンシップ。これをきっかけに度々短期免許を取得して来日するようになった。JRAのG1レースを12勝しているが、中でも強烈な印象を与えたのは2001年のマイルCS(G1)、ジャパンC(G1)、阪神ジュベナイルF(G1)の3週連続G1制覇だろう。

 マイルCSは4番人気ゼンノエルシドで勝利し、ジャパンCでは2番人気ジャングルポケットに騎乗してテイエムオペラオーを差し切り、阪神JFは7番人気タムロチェリーを勝利に導いた。さらにシンボリクリスエスとのコンビで有馬記念(G1)を連覇、ゼンノロブロイとのコンビで天皇賞・秋(G1)、ジャパンC、有馬記念の秋古馬王道路線を完全制覇。どのレースも「ペリエは凄い」と思わせるものであった。

 その後は税金の支払い問題で一悶着あり、短期免許での来日はなくなったが、あのインパクトはオールドファンの脳裏に焼き付いているのではなかろうか。

 

■ミルコ・デムーロ騎手

 現在はJRA所属騎手としてお馴染みのミルコも、もともとは短期免許での活躍が移籍のきっかけになっている。1999年に初めて来日すると、2003年にはネオユニヴァースとのコンビで皐月賞(G1)と日本ダービー(G1)を勝利。2008年には人気薄スクリーンヒーローでジャパンCを勝利し、2010年にはヴィクトワールピサで有馬記念、2011年にはドバイワールドC(G1)を勝利している。また2012年に天覧競馬として行われた天皇賞・秋をエイシンフラッシュで勝利し、天皇皇后両陛下に最敬礼をしたことは日本競馬史に残るワンシーンである。

 

■クリストフ・ルメール騎手

 今やJRAのNo.1ジョッキーと誰もが認めるルメールも、ミルコ同様に短期免許での来日がJRA移籍に繋がっている。初めて短期免許を取得したのは2002年だが、意外にも初重賞勝利は2005年の有馬記念であった。しかし、そのインパクトはとてつもなく大きい。

騎乗したのはハーツクライ、負かしたのはディープインパクトなのだ。それまで追い込み一辺倒であったハーツクライを先行させ、ディープインパクトの追い込みを封じた手綱さばきは誰もが衝撃を受けた。その後はウオッカでジャパンCを勝利するなど、強烈な印象を残した。

 

■ライアン・ムーア騎手

 2010年に初めて短期免許を取得したが、本領を発揮したのは2013年。ジャパンCをジェンティルドンナで制し、朝日杯フューチュリティS(G1)もアジアエクスプレスで勝利。2015年にはモーリスとのコンビでマイルCSを勝利すると、チャンピオンズC(G1)をゴールドドリーム、朝日杯FSをサリオス、ジャパンCをヴェラアズールで勝利するなど、短期免許中にJRAのG1レースを7勝。2015年は連対率40%、2016年も37.9%と条件を問わず安定した成績を残した。


 G1の勝利数や勝利したレースの格、さらにファンに与えたインパクトはこの4人が上位となるが、数少ないチャンスをモノにしたジョッキーも片手に余る。

 クリストフ・スミヨン騎手はブエナビスタと天皇賞・秋、エピファネイアとジャパンC、ラッキーライラックでエリザベス女王杯(G1)を勝利。ジョアン・モレイラ騎手はエリザベス女王杯をリスグラシューで勝利。オイシン・マーフィー騎手はスワーヴリチャードでジャパンCを勝利。ダミアン・レーン騎手はタスティエーラで日本ダービー、セリフォスでマイルCSなどを勝利。他にもクリスチャン・デムーロ騎手、クレイグ・ウィリアムズ騎手、ケント・デザーモ騎手など、多くの外国人騎手が短期免許制度を利用して日本で活躍した。

 これら外国人騎手は日本競馬に大きな影響を与え、騎手全体のレベルアップに貢献したことは間違いないだろう。

 偉大な先輩が揃うがため、現在来日している5人に対する期待も過剰に大きいものとなっているが、彼らも百戦錬磨の勝負師たち。このままで終わることはなく、ファンをあっと驚かせるレースを見せてくれることだろう。偉大な先人と共に、ファンの記憶に残る活躍を期待したい。(一部敬称略)

GJ 編集部

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