川田将雅「重賞に手が届いて当然」西村淳也「見ての通り強かった」の絶賛! G1候補に名乗りもレースレベルは疑問…注目すべきは馬よりも調教師?
28日の京都競馬場ではシルクロードS(G3)をルガル、東京競馬場では根岸S(G3)をエンペラーワケアがそれぞれ勝利した。
前者は抜けた馬が不在で混戦模様となっているスプリント戦線、後者はサウジC(G1)の超高額な賞金を前にメンバーレベルの低下を危惧されている状況において、新たなスターの登場が望まれているレースだった。
そういった意味合いでは、シルクロードSのルガルは2着アグリに3馬身、根岸Sのエンペラーワケアは2着アームズレインに2馬身半の差をつけて楽勝したのだから、見た目のパフォーマンスとしては期待に応える走りだったのかもしれない。
G1馬候補と期待された2頭もレースレベルには疑問?
その一方で、この勝利のみで両馬が本番の高松宮記念(G1)やフェブラリーS(G1)に歩を進めた際、大本命と呼べるほど絶対的な存在となったのかというと、必ずしもそうとは言い切れないだろう。
まず、シルクロードSを制したルガルだが、騎乗した西村淳也騎手も「見ての通り強かったです」「最後はまだ遊んでいるようなしぐさ」「順調に行けば次のG1という舞台でまた活躍してくれると思います」と大絶賛した。
とはいえ、負かした相手は近走の重賞で勝ち切れない競馬が続くアグリ、3着も富士S(G2)で6着だったエターナルタイムで勝ち時計も1分7秒7に留まった。時計面では例年レベルであり、本レースをステップにG1勝ちを決めたのも、過去10年でファインニードル1頭しかいない点も気になった。
本馬自身もスワンS(G2)を4着、京阪杯(G3)を2着に敗れた臨戦過程での重賞初勝利。前走でトウシンマカオに2馬身差の完敗を喫しているだけに、今回の勝利が本格化の兆しだったのかどうかは、次走を見てからでも遅くはなさそうだ。
明け4歳世代ということもあり、著しい成長の結果ということなら、これから先もまだまだ楽しみを持てるか。
こちらについては、根岸Sを圧勝したエンペラーワケアについても同様のことが言えるだろう。
勝利に導いた川田将雅騎手は、3連勝で初重賞勝ちを決めたダートの素質馬を「完勝だったと思います」「本当に素晴らしい馬」「重賞に手が届いて当然」「これから先もますます楽しみな馬」と褒めちぎっていたが、勝ちタイムの1分24秒1(良)は相当遅い。
これは2001年からの根岸S史上最も遅い勝ちタイム。出走していれば本命視されていたドライスタウトが回避していたこともあり、圧勝したレースの見た目はともかくとして、タイム的には大きな不満が残った。ちなみに昨年の同レース勝ち馬レモンポップは、これを大幅に上回る1分22秒5(良)で走破している。
もちろん、このようなレースレベルへの疑問を払拭するような活躍をしてくれることを願っているのだが、2頭を管理している杉山晴紀調教師の躍進ぶりは特筆すべきである。近3年で11位→4位→1位と成績を伸ばし、昨年の全国リーディングトレーナーを手に入れた手腕にますます磨きが掛かった。
また、同日に管理馬が東西の重賞を制覇した例は、昨年12月に阪神のチャレンジC(G3)をベラジオオペラ、中山のステイヤーズS(G2)をアイアンバローズで制した上村洋行調教師に続く快挙。その上村師も近3年で47位→24位→7位と順調に成績を伸ばしている調教師である。
先週の開催終了時点で8勝の杉山晴師が1位、6勝の上村師が2位と絶好調。今後の重賞でも彼らの管理馬が出走してくるようなら注意が必要だ。