武豊が演出した「最遅ペース」に末脚不発、「馬に申し訳ない」人気を大きく下回る結果に騎手も謝罪…コンビ待望のタイトル制覇はまたも持ち越し
28日に行われたフェブラリーS(G1)の前哨戦、根岸S(G3)は1番人気に応えたエンペラーワケアが、2着馬を2馬身半突き放す大楽勝。これでダート転向後は6戦5勝となり、初の重賞タイトルも難なく手中に収めた。
前走からコンビを組む川田将雅騎手はレース後、「完勝だったと思います」とパートナーの走りを称賛。管理する杉山晴紀調教師は今後について「あまり無理をしたくないので、しっかりと様子を見たいと思います」と話すに留めたが、フェブラリーSに出走してくれば最有力候補の1頭に違いない。
なお2着に6番人気アームズレインが好走し、3着に2番人気サンライズフレイムが入り、勝ち馬以外は小波乱の決着となった。
そんな中、3番人気の支持を大きく裏切る13着と大敗したのが、タガノビューティー(牡7歳、栗東・西園正都厩舎)と石橋脩騎手のコンビである。
豪快な追い込みを武器としている明け7歳の古豪は、昨年のかしわ記念(G1)で0秒1差の2着に入り、前走の武蔵野S(G3)でも出遅れを巻き返して2着に好走した実績の持ち主。有力視されたドライスタウトが回避したこともあり、人気の面では3番手の評価でも、実績的には断然の存在だったと言えるだろう。
まだ重賞には手が届いていないが、武蔵野Sのレース後には主戦の石橋騎手が「この馬で重賞を勝ちたいと思っている」と決意を語っていたように、ここは結果の欲しい舞台だったに違いない。
ちなみに根岸Sでは一昨年3着、昨年も0秒3差の4着と好走。近走の内容からも、人馬の重賞勝利を期待したファンも少なくなかったはずである。
しかしスタートで2馬身ほど出遅れると、3~4コーナーでは最後方の位置取り。一応、後方追走はこの馬のスタイルでもあるのだが、最後の直線で大外に出されても自慢の末脚は炸裂せず、ほとんど見せ場を作れず馬群に沈んでしまった。
石橋脩騎手「馬に申し訳ないです」
期待に応えることができなかったタガノビューティーだが、石橋騎手はレース後「1400mを使うときはスタートをポコッと出る馬。最初の位置は良かったと思います」と振り返っており、出遅れと前半のポジションについては、ある程度想定内だったようだ。
ただ「外目を上がって行きたかったのですが、3~4コーナーでペースが落ち着いて、動けませんでした」と、思いのほかスローになったことを敗因の1つに挙げ、「馬に申し訳ないです」と謝罪のコメントも残さざるを得なかった。
「武豊騎手とヘリオスのコンビがハナを奪った今年の根岸Sですが、前半600mの通過タイムは35秒8。これは1986年以降、ダート1400m以下のJRA重賞で最も遅いペースでした。
4角で6番手以内にいた馬たちが掲示板の5着までを占める前残り決着となっただけに、タガノビューティーにはツキもありませんでしたね。後ろから行くタイプは展開に左右されやすいため、今回の大敗で人気を落とすようなら、次走でもう一度狙ってみるのもありかもしれません」(競馬誌ライター)
追い込み脚質の上に出遅れたタガノビューティーにとって、超スローペースと言えそうな今年の根岸Sは、相当不向きな展開だったと言えそうだが、同馬がマークした上がり3ハロンは3位タイの35秒4。仮に展開やペースを理由とするには、せめて上がり最速くらいはマークしておきたかったかもしれない。
今年で明け7歳を迎え、今後の伸びしろも気になるところだが、次走以降での巻き返し、そして石橋騎手とのコンビで待望の重賞勝利は叶うだろうか。