武豊×福永祐一厩舎の「快挙」を打ち破る豪脚一閃!「思い入れがある馬」主戦が苦楽を共にしたパートナーと負けられなかった一戦
9日の阪神メインに行われたコーラルS(L)は、9番人気レディバグ(牝6歳、栗東・北出成人厩舎)と酒井学騎手のコンビが優勝。逃げ込みを図る武豊騎手のレオノーレをゴール寸前でわずかにハナ差捕えきった。
「話題をかっさらって申し訳ない」
レース後、レディバグに騎乗していた酒井騎手がそうコメントを残したのも無理なかったか。ここは開業を迎えた福永祐一厩舎が、鞍上に武豊騎手を配して初陣を迎えたことで大きな注目を集めた一戦。ハナを奪うと最後の直線でも粘り腰を見せ、同厩舎の初出走初勝利が濃厚かと思われた。
ただ、ゴール前で大外から追い込んだ酒井騎手とレディバグもここは負けられないレースだった。なぜなら同馬はこれが現役最後のレースだったからだ。
酒井学騎手とレディバグにとって負けられなかった一戦
酒井騎手とレディバグのコンビは2020年11月の新馬戦を5馬身差で快勝。「まだまだ上積みもありそうですよ」と同騎手が手応えを語ると、続く兵庫ジュニアグランプリ(G2)でも2着。早い時期からダート路線で将来を嘱望されていたコンビである。
8戦目の桶狭間S(3勝クラス)では酒井騎手が病気のため乗り替わりになる不運に見舞われるも、22年5月の栗東S(L)でオープンクラス初勝利。昨年7月のスパーキングレディーC(G3)では南関東の二冠牝馬スピーディキックを破って待望の初重賞制覇を飾った。
酒井騎手はレース後「ずっとコンビを組ませていただいた馬なので、一層喜びというのも大きいですし、とにかく本当に嬉しかったです」と初タイトルに喜びを爆発。ちなみにスパーキングレディーCが開催された川崎は、元騎手で現在は調教師の兄・酒井忍が所属しているゆかりの地でもあった。
ただレディバグはその後、白星を挙げることができず、また先月のフェブラリーS(G1)も除外になるなど、なかなかレースを使えぬままついにコーラルSでラストランを迎えることとなった。
もちろん鞍上はここまで25戦中21戦で手綱を取り、苦楽を共にしてきた酒井騎手。今回は4ヶ月ぶりの一戦ということもあってか単勝25.9倍という伏兵評価だったものの、先述の通り最後はハナ差でレオノーレを捕えて有終の美を飾った。
「武豊騎手と福永厩舎のコンビが勝利を決めたかと思いましたが、最後はレディバグに騎乗していた酒井騎手の意地が勝ったようにも感じられました。6歳までキャリア26戦を走り抜き、ラストを白星で締めくくったレディバグには本当にお疲れさまでしたと言いたいですね」(競馬誌ライター)
ラストランを勝利で飾ったパートナーに対して酒井騎手は「デビューから乗せてもらっている馬で思い入れがある馬。ここでしっかり決めてくれて、頭の下がる思いです。引退の花道を飾ることができました」と感無量のコメント。管理する北出調教師も「無事に終えられてよかった」とレース後に胸をなでおろすコメントを残していた。
これで競走生活にピリオドを打ち、今後は繁殖入りする予定だというレディバグ。産駒が酒井騎手を背に競馬場で疾走する姿を心待ちしたい。