【金鯱賞】C.ルメール「ぶん回しロス」に川田将雅のしたたかな計算?勝敗分けた道中のチラ見…ドゥレッツァ「5馬身差」完敗でも悲観ナシの裏事情

ドゥレッツァ 撮影:Ruriko.I

 10日、中京競馬場で行われた金鯱賞(G2)は、2番人気のプログノーシスが優勝し、昨年に続く連覇を達成した。近年の同レース連覇は、番組変更の関係でわずか3ヶ月後に再び優勝したヤマカツエース(2016年、17年)以来。これにより、タップダンスシチー(2003~05年)の持つ同レース3連覇に並ぶ偉業も視野に入る。

 もしかして昨年よりさらに強くなっているのではないか――。

 そう思わせるのも十分なプログノーシスのワンサイドゲームだった。2着に下した相手は昨年の菊花賞(G1)を楽勝したドゥレッツァ(牡4、美浦・尾関知人厩舎)。最も強い馬が勝つといわれるレースを制した4歳世代最強馬を5馬身も置き去りにしてしまった。

 皐月賞馬ソールオリエンス、ダービー馬タスティエーラが、昨年の有馬記念(G1)を揃って完敗していた4歳世代にとって、低レベル世代という汚名を返上するための最後の砦といえる存在がドゥレッツァでもあった。

低レベルと噂される4歳世代の最強馬がまさかの完敗

 しかし、世代最強馬がまだG1勝ちの実績を持たない相手になす術もなく敗れてしまった事実は大きい。

 勝ち馬プログノーシスはエフフォーリア、シャフリヤール、タイトルホルダーを輩出した6歳世代であり、世界最強馬イクイノックスや昨年の有馬記念で復活勝利を遂げたドウデュースは5歳世代。まだ3月半ばという時期ではあるものの、4歳世代の物足りなさを象徴するかのようなレースだった。

 その一方、プログノーシスに5馬身という決定的な差をつけられたとはいえ、ドゥレッツァの敗戦は、見た目の数字ほど悲観する必要はないかもしれない。

 というのも、2頭の進路取りで大きな明暗が分かれていたからだ。

 13頭立てで争われた芝2000m戦は、先手を主張したシーズンリッチがハナ。早めにこれを交わしたエアサージュが先頭を奪い、1000m通過が58秒4と流れた。これに対し、1番人気ドゥレッツァは出たなりの後方で2番人気プログノーシスもライバルをマークする格好で直後を追走する。この時点では人気を分け合った2頭のポジションに大きな差はなかった。

 しかし、1000m過ぎにプログノーシスの川田将雅騎手が、ドゥレッツァのC.ルメール騎手を翻弄する罠を仕掛けていた。あくまで結果論であることは承知の上で、「罠」という言葉がしっくりと来る決断だった。

「それまでドゥレッツァの外にいたプログノーシスですが、ここであえて内への進路切り替えを行っています。そこから並び掛けるようにポジションを押し上げると、最後の直線入り口では前にいたエアサージュとヨーホーレイクが横並びの状態。すぐ外で先にバテたシーズンリッチが下がって来てドゥレッツァの行き場がなくなりました。

行くところ行くところが壁になったライバルを尻目に、内からスルスルと抜け出したプログノーシスはエンジンに点火。外へ追いやられたルメール騎手がようやく進路を確保した頃には、川田騎手はワンテンポもツーテンポも先に追い出していました。勝負どころで最短距離を通れた勝ち馬とスムーズさを欠いたドゥレッツァに差がついたことは仕方なかったでしょう」(競馬記者)

 力の見劣る馬が外寄りを走っていたことは、ドゥレッツァのすぐ後ろにつけていた川田騎手も気付いていた可能性がある。隊列の出入りが激しくなる手前で内へと潜り込み、ルメール騎手に外の進路しか選べない状況を水面下で作り上げていた。

 実際にレースの映像を見直してみると、川田騎手が内を突いた際にルメール騎手もチラ見。これにはルメール騎手も「してやられた」と感じたのではないか。結果のみに注目すると5馬身差の大敗ではあるものの、レース後のルメール騎手のコメントに悲壮感がなかった点も納得がいく。

「向正面から途中どうしていこうかという形の中で、共に内側の進路を選択していきましたが、こちらは直線は内、相手は外へという形で~」

 レース後に会心の勝利をそう振り返った川田騎手のコメントからも“したたかな計算”が見え隠れする好騎乗だったが、敗れたルメール騎手は「最後も伸びていますし、今回は休み明けでしたから、次はG1で良い結果を出すことができると思います」と前向きな言葉で評していた。

 距離が1000m異なるとはいえ、大外枠から積極的に出していき、勝利を意識した菊花賞の騎乗と異なり、まずは休み明けの一戦で無難に試運転を終えたという印象。金鯱賞はあくまで休み明けのG2であって本番ではない。ルメール騎手としても、今日のところは川田騎手に一杯食わされた結果、外をぶん回すロスがあっただけで、目標とする天皇賞・春(G1)に不安はないといったところだろうか。

GJ 編集部

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