クロノジェネシス元主戦が「油断騎乗疑惑」で騎乗停止処分!ノーステッキ楽勝ムードからまさかの敗戦…「後味の悪さ」残る結果もキズナ産駒の素質馬がデビュー勝ち
あってはならないことが起こってしまったのは10日、中京5Rに行われた3歳未勝利だ。
芝2200mを舞台に争われたこのレースは、最後の直線で北村友一騎手のアスクカムオンモアが持ったままの手応えで、逃げていた単勝1.5倍の大本命馬サンブノワを交わし先頭へ。レース後に同騎手が「抜け出してからもスピードは落ちず、トップスピードを維持してくれた」と振り返っていた通り、手応えも十分に残っていたため、あとは流す程度でも勝てると考えたのかもしれない。
しかし、外からさらに脚色の上回る3番人気オールセインツ(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)が追い上げていたことは、北村友騎手にとっても想定外の展開だったはずだ。直線でムチを一度も入れることなく勝ち馬に交わされたアスクカムオンモアは半馬身遅れてゴール。一見すると楽勝ムードに思えても、実際のところは余力が残っていなかった可能性があるとはいえ、北村友騎手が最後まで全力で追っていれば、結果も変わったのではないかと感じたファンがいてもおかしくなかっただろう。
見方によっては油断騎乗とも受け取られかねない北村友騎手の騎乗ぶりには、JRAも「明確に着順に影響があったとは認められないものの、騎手としての注意義務を怠ったもの」と判断。裁決の結果、同騎手は23日から2日間の騎乗停止処分を課せられることとなった。
「うーん、これは難しいところですね……。レース後のダメージを軽減するために、楽勝ムードの騎手がゴール前で緩めるのを見掛けることも珍しくはありませんが、それは勝利を完全に確信できていればこそです。
特に競馬はスポーツとしてだけではなく、公営ギャンブルとしての側面を持っていますから、着順に影響する疑わしい動作は御法度。公正競馬の観点からも厳しい処分が下されます。故意かどうかはともかくとして、仕方のない処分だったように思います」(競馬誌ライター)
近年、同様の疑惑で騎乗停止処分が下されたケースは、2021年の有馬記念(G1)前日、横山武史騎手が同様の騎乗で明確に着順に影響があったとは認められなかったものの、2日間の騎乗停止処分を受けたことを覚えているファンもいるだろう。
ちなみに過去には黛弘人騎手、四位洋文元騎手も追う動作を緩めて制裁を受けたこともあるが、こちらも『騎手としての注意義務を著しく怠った油断騎乗である』と認められた上で、より重い30日間(開催日9日間)という騎乗停止処分が課せられている。
名門からキズナ産駒の「大物」がまたも出現
その一方で北村友騎手に油断騎乗疑惑が降りかかる原因となったオールセインツが強かったことも事実。キズナ産駒の本馬は近親に秋華賞馬エアメサイアなどがいる良血でセレクトセールでも約9000万円の高値がついた期待馬。管理する友道調教師は戦前「まだ前向きさがひと息で、トップスピードに上がりません。使ってからでしょう」と慎重なコメントを出していた上に今回は既走馬が相手の初出走だったのだから、この勝利には価値がある。
「私も正直、最後の直線はアスクカムオンモアの楽勝だと思って見ていましたのでこれは恐れ入りました。管理する西の名門・友道厩舎からは共同通信杯(G3)を勝ったジャスティンミラノ、3日のデビュー戦を5馬身差で快勝したジュンヴァンケットに続いてまたもキズナ産駒の大物が現れましたね」(同)
レース後、藤岡康太騎手は「勝負どころで待たされる形になりましたが、外に出すと一歩ずつ反応してくれました。勝ち切ってくれたのは何よりです」と、ややロスがありながらも強烈な末脚を爆発させたパートナーを評価し、初陣を飾れたことに安堵の様子だった。
結果的に楽勝ムードの馬がノーステッキで敗れるという、少々後味の悪いレースにはなったものの、オールセインツが強過ぎたために想定外の事態にまで発展したとすれば、北村友騎手も不運だったのかもしれない。本調子とはいえない状態でデビュー勝ちを決めたオールセインツは、次走でも注目して損はなさそうな素質馬だ。