【皐月賞】「無傷の3連勝」シックスペンスに期待と不安?C.ルメール、国枝栄師も大絶賛の逸材登場…「牝馬限定重賞以下」のタイムとメンバーレベルに疑問符
17日、中山競馬場で行われたスプリングS(G2)は、C.ルメール騎手が騎乗したシックスペンス(牡3、美浦・国枝栄厩舎)が優勝。1番人気の支持に応えるとともに、デビューから無傷の3連勝でクラシック候補に名乗りを上げた。
上がり3ハロン33秒3、後続を寄せ付けない大楽勝にルメール騎手も手応えを感じたに違いない。レース後のコメントでも「とても乗りやすい馬ですし、2000m以上もいける」「楽に伸びてくれましたし、上のクラスにいける」と底知れない魅力を持つパートナーに賛辞の言葉が並んだ。
本馬を管理する国枝師も「スタートが良く、良い位置を取れましたし、折り合いもついて、理想的な競馬だった」「現時点ではあまり課題というものは見当たらないですね」と振り返っていたように、最後の皐月賞トライルで登場した大物に期待十分だ。名伯楽がまだ手に入れられていない牡馬クラシックのタイトル奪取に楽しみな馬が登場した。
3戦無敗のクラシック候補に期待と不安
10頭立ての少頭数で争われた芝1800m戦。ハナを主張したアレグロブリランテが刻んだラップは、道中での出入りも少なかったこともあって、1000m通過が63秒1の超スローペースに落ち着いた。これを好位3番手から追走したシックスペンスだが、最後の直線でルメール騎手が追い出すと後続との脚色の差は歴然。そのままムチを入れられることもなく、ゴール前でも流すような格好で圧勝してしまった。
「いやあ、強かったですね。新馬戦は2着馬とタイム差なし、2戦目も2着馬に0秒2差と派手な勝ち方はしていなかったのですが、1勝クラスの前走からメンバーが一気に強化されたG2で過去最大の0秒6差の大楽勝には驚かされました。世代トップクラスと目されていたジャンタルマンタルやシンエンペラーが前哨戦で不覚を取っていただけに、最後の大物候補と期待されるのも無理はないです。
ただ、この一戦だけで過大評価をするには時期尚早という気もします。相手関係やレースレベルを比較すると、まだまだ課題がありそうですよ。皐月賞(G1)に出て来たら上位人気が予想される馬ですが、ルメール騎手にはレガレイラというお手馬もいます。G1馬との選択に悩むほどかといわれると、まだまだ分かりませんね。いずれにしても次走で真価が問われそうです」(競馬記者)
記者の歯切れが悪かった一因には、勝ちタイムの遅さも関係しているのだろう。ゴール前で追わなかったとはいえ、1分49秒4(良馬場)は過去10年のスプリングSで2番目に遅かった。ちなみに昨年の勝ち馬であるベラジオオペラも無敗の3連勝で重賞初制覇を遂げた逸材だが、こちらは“重馬場”で1分48秒9をマークしている。
当然ながら当時と馬場状態の違いがあるものの、比較対象として有効となる前日土曜中山のメイン、フラワーC(G3)を優勝したミアネーロのそれは1分48秒0(良馬場)。単純に走破時計のみを当てはめると、シックスペンスは牝馬限定重賞の9着馬以下ということになる。
もうひとつ引っ掛かるのは、33秒3の上がり最速にそこまでの価値があったのかどうかである。超スローで流れた展開のおかげで、逃げたアレグロブリランテが、そのまま2着に流れ込んだように、前にいた5頭がそのまま掲示板を独占した。
言ってしまえば、出走した馬の10頭中8頭が上がりハロン33秒台をマークしていたわけだ。もちろん、勝ち馬の強さが1頭だけ抜きんでていたことは間違いないが、負かしたメンバーの大半が1勝クラスのようなものだったともいえるのではないか。
陣営も距離の延長に太鼓判を押したとはいえ、ここまでスタミナを問われない展開なら事実上マイル戦のようなもの。スプリングSを楽勝した程度では、レースレベルへの疑問符がついても仕方ないかもしれない。
ただ、前向きな見方をすれば無敗馬だからこそ、未知の可能性を秘めているということだ。いずれにしても真価を問われる次走。女王レガレイラとの間でルメール騎手の「心変わり」があるのかどうかにも注目したい。