【大阪杯】タスティエーラ「惨敗」によぎる日本ダービー制覇の代償…「最も運のある馬が勝つ」一世一代の輝きを最後に鳴りを潜めた名馬たち
先月31日に開催された大阪杯(G1)は、4歳馬ベラジオオペラが年長馬たちを退けて初G1制覇。キャリアもまだ8戦と少ないことから、これから更に力をつけて古馬中距離路線を賑わせてくれそうだ。
その一方、同世代のダービー馬であるタスティエーラ(牡4歳、美浦・堀宣行厩舎)の惨敗に少なからぬショックを受けたファンも多かったのではないか。
日本ダービー(G1)を制した後は勝ち星こそ無いものの、大崩れしない堅実なタイプの馬。休み明けの菊花賞(G1)では約5ヶ月ぶりの一戦で2着に入り、6着だった有馬記念(G1)も勝負どころで不利を受ける不運もあった。
今回も休み明けの一戦ではあったか、管理する堀調教師が「9割から9割5分の仕上がり」と話すなどデキは申し分なし。右回りの芝2000mは重賞勝ちを含む2戦2連対だったことから、馬券の軸としても頼りになる存在だったはず。実力拮抗の混戦で1番人気の支持を得たのも頷ける。
絶好のポジションを進んだと思われるのだが…
前半1000m60秒2という緩い流れの中、道中は前から3、4番手の絶好位をキープ。最後の直線に入るとすぐに進路も空いた。もはや勝って下さいと言わんばかりのお誂え向きの展開で、どれだけの末脚をみせてくれるか期待したファンも多かったに違いない。
だが前との差を詰めるどころか次々と他馬に交わされて行くと、最後はズルズルと後退して11着に沈んでしまった。
安定感が魅力だった相棒の思わぬ大敗に、昨年の皐月賞(G1)以来の騎乗となった松山弘平騎手もレース後「これだけ負ける馬では無いでのですが……」と首をかしげるばかり。世代の頂点に立った馬が為す術もなく敗れたのだから、次走に暗雲が立ち込めてもおかしくない。
ただ、近年はドウデュースやシャフリヤール、コントレイルなど古馬になってからもG1を勝つなど活躍を続けるダービー馬は目立つものの、その一方、ダービーで一世一代の輝きを放ったのを最後に、その後の成績は尻すぼみとなった馬も多く存在する。
2000年以降でいえばロジユニヴァースやワンアンドオンリー、マカヒキにワグネリアンなどが例に挙げられる。3歳春までは非常に強い競馬でダービーも制し、当然ながらその後の活躍も期待されたのだが、結局はG1を勝つことなく現役を退くこととなった。
またキングカメハメハやディープブリランテ、ロジャーバローズのようにダービーを制した後、古馬になる前に故障を発症してターフを去ることになった馬もいる。
ダービーといえば昔から「最も運のある馬が勝つ」と言われているが、勝利した後に鳴りを潜めてしまう馬も多く存在する。世代の頂点を目指す夢の舞台でもあり、究極の仕上げですべてを出し切って掴んだ栄光の代償もまた大きいのかもしれない。
とはいえ、タスティエーラがサトノクラウンの産駒である点に関しては、いい意味で予想を裏切ってくれる可能性ありそうだ。父は現役時代に国内外でG1・2勝を挙げた名馬だったが、勝利するときは強いものの敗れるときは不可解なほどに惨敗を喫するという典型的なピンかパーの馬であった。
だとすれば今回の敗戦のみでタスティエーラの評価を下げてしまうのは早計か。次走で再びダービー馬の真価が問われそうだ。