【天皇賞・春(G1)展望】テーオーロイヤル勝てば「ゴールドシップ以来」の快挙!「低レベル説」払拭へ…4歳世代ドゥレッツァとタスティエーラの反撃は?

テーオーロイヤル 撮影:Ruriko.I

京都の芝3200mを舞台に争われる最強ステイヤー決定戦

 28日、JRAの平地G1レースでは最も長い3200mの距離で争われる天皇賞・春(G1)が京都競馬場で行われる。淀の坂越えが2回あるタフなレースを制するのは果たしてどの馬か。最強ステイヤー決定戦を展望していこう。

 この距離なら長距離重賞3勝の実績が光るテーオーロイヤル(牡6歳、栗東・岡田稲男厩舎)の出番だろう。

 3歳秋から怒涛の4連勝でダイヤモンドS(G3)を勝利したのは2年前。勢いそのままに春の盾獲りに挑んだが、その時はタイトルホルダーの3着に敗れた。

 その後はスランプに陥ると、骨折もあって戦線離脱。昨秋のアルゼンチン共和国杯(G2)で戦列に復帰したものの、初戦は10着に敗れた。ところが2戦目のステイヤーズS(G2)で2着に入ると、今年2月のダイヤモンドSで重賞2勝目を飾った。さらに続く阪神大賞典(G2)を5馬身差で圧勝。6歳にしてついに本格化の時を迎えている。

 主戦の菱田裕二騎手は前走後、「ゴールまで全くスピードが衰えることなく走ってくれていた」と圧巻の走りを回顧。「次は大事なレースがあるので、そこでもしっかり結果を出せるように頑張りたい」と抱負を語っていた。

 人馬ともに初のG1獲りへ向けて、1週前追い切りに跨った同騎手は『サンケイスポーツ』の取材に、「状態は前走より上がっている」「完成してきた今なら」と自信満々。3000m以上のレースでは「3-1-1-0」と全て馬券圏内に入っている現役最強クラスのステイヤーが長距離界の頂に立つことになるのか。

 ちなみにテーオーロイヤルが先頭でゴールを駆け抜ければ、2015年のゴールドシップ以来、9年ぶりの6歳馬による勝利となる。

 

昨年のクラシックホース2頭も参戦

ドゥレッツァ 撮影:Ruriko.I

 そのテーオーロイヤルと1番人気を争うとみられるのがドゥレッツァ(牡4歳、美浦・尾関知人厩舎)だ。

 2歳の秋にデビュー戦を3着に敗れたドゥレッツァだが、その後は怒涛の5連勝。重賞初出走となった菊花賞(G1)でタスティエーラとソールオリエンスの“世代2強”を押しのけて戴冠を果たした。

 しかもただ勝っただけでなく、大外17番枠からハナを切る積極策。道中で他馬にハナを譲ったものの、早め先頭で押し切る横綱相撲だった。2着に3馬身半差をつける完勝で、世代最強候補に躍り出た。

 その後、春の牡馬クラシックを分け合ったライバル2頭が有馬記念(G1)でそろって凡走したため、現4歳世代に対する懐疑的な見方が強まるのとともに、ドゥレッツァに対する期待も高まった。

 しかし、始動戦となった3月の金鯱賞(G2)で1.9倍の断然人気に推されたものの、6歳馬プログノーシスに5馬身差で完敗。世代の低レベル説を覆すことに失敗してしまった。

 ただし、前走は4か月半ぶりだったことに加えて、菊花賞から一気に1000mの距離短縮。さらに59kgを背負っていたことを加味すれば、大きく評価を下げる必要はないだろう。楽勝した菊花賞と同じ京都なら巻き返す可能性は十分にあるはずだ。

 また、主戦のC.ルメール騎手が落馬負傷で戦列を離れているため、戸崎圭太騎手が昨年8月以来2度目の手綱を取る。同騎手は先日の皐月賞(G1)を制するなど、今年に入って絶好調なだけに割り引く必要もないだろう。

タスティエーラ 撮影:Ruriko.I

 昨年のダービー馬タスティエーラ(牡4歳、美浦・堀宣行厩舎)は、J.モレイラ騎手と菊花賞以来のコンビで参戦する。

 昨年は牡馬クラシック三冠で2着、1着、2着の好成績を残し、JRA最優秀3歳牡馬に輝いた。菊花賞は2着だったが、ドゥレッツァには3馬身半差の完敗。さらに有馬記念で6着、今年の始動戦・大阪杯(G1)でも1番人気に応えられず11着に沈んだ。

 管理する堀調教師は『デイリースポーツ』の取材に対し、「はっきりした敗因は分からないが、輸送後のカイ食いが悪くて8割は残していました」とコメント。休み明けにもかかわらずマイナス体重で、体調が万全でなかった可能性もありそうだ。

 昨年の春は3か月半の間に4戦し、世代の頂点に立ったタフな馬だけに叩き良化タイプなのは間違いなさそう。大阪杯を使われた上積みでダービーに続くG1制覇を狙う。

 

春の盾男・武豊騎手が騎乗するサリエラ

 6歳馬テーオーロイヤルと4歳馬2頭の狭間の世代、5歳馬の代表格は牝馬のサリエラ(牝5歳、美浦・国枝栄厩舎)だ。

 兄姉にサリオスとサラキアがいる良血馬は、体質の問題もあってかキャリアはまだ8戦。重賞は未勝利だが、いつタイトルを獲ってもおかしくないポテンシャルの高さは誰もが認めるところだろう。

 しかし、昨年は新潟記念(G3)7着、エリザベス女王杯(G1)6着と凡走が続いた。そこで名トレーナーの国枝調教師が打って出た策は、なんと長距離路線への転向だった。

 ファンも半信半疑で見守った前走のダイヤモンドSは牡馬相手に堂々の2着。敗れはしたがクビ差に追い詰めた相手がテーオーロイヤルなら、ここでも好勝負が見込めそうだ。

 しかも鞍上を務めるのが、春の盾男の異名を持つ武豊騎手。新コンビで、71年ぶり2頭目の牝馬Vを目指す。


 5歳牡馬の代表格は遅れてきた長距離砲ブローザホーン(牡5歳、栗東・吉岡辰弥厩舎)だ。

 同世代の牡馬がダービーを走っていた頃、同馬はまだ未勝利の身だった。菊花賞の頃もやっと1勝したばかり。そんなブローザホーンが頭角を現したのは、2500m以上の距離を使われ出してからだ。

 約1年前にオープン入りを果たすと、昨年秋の京都大賞典(G2)で2番人気に支持されるまでに成長していた。同レースは残念ながらレース中に心房細動を発症し競走中止となったが、復帰戦の日経新春杯(G2)を完勝すると、前走の阪神大賞典でも3着に入っている。


 ドレフォン産駒のワープスピード(牡5歳、美浦・高木登厩舎)もスタミナでは負けていない。近4走は全て3000m以上の長距離レースを使われ、ダイヤモンドS3着、阪神大賞典2着と善戦。前走の手綱を取った川田将雅騎手が香港遠征のため、今回は三浦皇成騎手が代わりを務める。


 この他には、近3走中2走が二桁着順と精彩を欠くも、当レースで3年連続2着のディープボンド(牡7歳、栗東・大久保龍志厩舎)、昨年の当レース3着馬のシルヴァーソニック(牡8歳、栗東・池江泰寿厩舎)、前走のアメリカジョッキークラブC(G2)で古豪ボッケリーニに競り勝ったチャックネイト(セ6歳、美浦・堀宣行厩舎)など、近年ではかなり層が厚い天皇賞・春となりそうだ。

 昨年は2頭が競走を中止したタフな長距離戦。それを制するのは果たしてどの馬になるのか。発走は28日、15時40分を予定している。

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