メジロライアンの横山典弘と、メイショウドトウの安田康彦が語った「悲願成就」の共通点。「終わったはずの古豪」ディープボンドが復活した理由とは
重馬場必至の宝塚記念、あの古豪も「雨」を大歓迎?
23日の天気予報は降水確率90%の雨模様。それも前日から降り続く可能性が高く、18年ぶりとなる京都開催の宝塚記念(G1)は重馬場が避けられない状況だ。
春のグランプリに名を連ねた13頭の陣営からは「雨が降っても大丈夫」「問題ない」というコメントが多い中、プラダリア、ブローザホーン陣営は「良い方に出るはず」「この馬に合う」と強気なコメント。逆にルージュエヴァイユのように「緩い馬場は得意ではないので」と早くも泣きを入れる陣営も……。「雨」は今年の宝塚記念を占う上で、重要なポイントの1つになりそうだ。
そんな中、ひっそりとこの雨を歓迎しているのが、古豪ディープボンド(牡7歳、栗東・大久保龍志厩舎)ではないだろうか。
【1.0.2.2】。ディープボンドの「重」「不良」の成績である(不良の出走はなし)。特に目立ったものではないが、フランスの凱旋門賞(G1)2回を除くと【1.0.2.0】の馬券圏内100%に跳ね上がる。
単純に重い馬場を苦にしない点もあるが、それ以上に時計勝負や速い上がり勝負に向かないディープボンドにとって、雨が降ることで全体的な時計が掛かる点が大きい。キャリア28戦で上がり最速は2回だけ。3000mの阪神大賞典(G2)を除けば、初勝利を挙げた2歳の未勝利戦まで遡る。同自己最速は34.6秒で、元主戦の和田竜二騎手が「止まってないんだけど……」と切れ負けを嘆くシーンは、本馬のファンにとっては定番だろう。
最後の勝利を挙げたのは2022年の阪神大賞典で、特に近走は10着、15着、7着……。今年、7歳を迎えていることからもディープボンドを「もう終わった馬」と考えていたファンも少なくないはずだ。
ところが、前走の天皇賞・春(G1)で3着と復活。「得意の長距離戦だから」という理由は、2走前の阪神大賞典7着とやや説得力を欠いている。一体、この古豪に何があったのだろうか。
復活の天皇賞・春から「変化」したのは…
「(前走の)最終追い切りが3頭併せ馬と、この馬にしては意欲的な内容でしたが、格下相手に最先着したものの正直、抜群の動きというわけではなかった印象です。
大きく変わったのは追い切りではなく、普段の調教。(前走から)CWを2周するなど運動量をかなり増やしています。天皇賞・春の後には大久保調教師も『調教を工夫したのが、良い方向につながって良かった』と胸を張っていましたね。
この調整は今回も継続しており、先日も大雨の中で意欲的にCWを2周していました。実績のある天皇賞・春とは違い、今回はさらに人気が落ちると思いますが、少なくとも馬の調子は昨冬とは雲泥の差。得意の京都ですし、楽しみは小さくないと思います」(競馬記者)
記者がそう語った通り、京都の成績は【2.1.3.2】と3着以内率75%で、着外の1つも菊花賞(G1)と得意にしているディープボンド。「(3、4コーナーの)下り坂でスムーズに加速していける」と陣営も舞台替わりを歓迎している。
宝塚記念は「悲願成就」の舞台としても知られており、ここがG1初制覇という馬も少なくない。『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)でお馴染みのメジロライアンやメイショウドトウが、幾多のG1惜敗を乗り越え、ここで待望のG1初制覇を飾ったことは今や多くのファンの知るところだろう。
かつてメジロライアンの横山典弘騎手が「いつもならもっと後ろから行くんですけどね」と語り、メイショウドトウの安田康彦騎手が「(テイエムオペラオーを)負かすには、あの馬の前で競馬をする」と語ったように、彼らの悲願達成の共通点は「積極性」だ。
逃げ馬不在と言われる今年の宝塚記念。ディープボンドが前走で見せた4角先頭を再現することができれば、「悲願成就」の歴史にその名が並ぶことになるかもしれない。