【紫苑S(G2)展望】C.ルメールの秘蔵っ子が武豊ボンドガールに挑む!
秋華賞(G1)の優先出走権争い開幕!
7日、中山競馬場で紫苑S(G2、芝2000m)が行われる。
秋華賞トライアルとして2000年に誕生した紫苑S。当時はオープンだったが、翌年にオークス馬のレディパステルが出走したことが話題を呼び、西のローズS(G2)、東の紫苑Sとして定着した。
2016年にG3へ昇格を果たすと、昨年からはG2に。これだけ早く“出世”していくレースはJRA全体でもそう多くない。逆に言えば、それだけ毎年の出走馬が充実しているということ。今年も秋華賞(G1)を見据える好メンバーが集った印象だ。
今年はボンドガール(牝3歳、美浦・手塚貴久厩舎)が断然の存在になる。
この馬がここに出てきたことに驚いたファンも少なくないだろう。何故ならボンドガールは、すでに7月のクイーンS(G3)で秋に向けた初戦を終えているからだ。
残念ながら前走は2着に敗れてしまったが、他にもサウジアラビアロイヤルC(G3)、ニュージーランドT(G2)で2着があるだけに、秋華賞出走へ賞金的な問題はまったくない。それでもあえて紫苑S出走を決めたのは、やはり距離の問題が最も大きいはずだ。
実際にボンドガールはデビューから4戦連続で1600mに出走しており、前走が初の1800mだった。レース後、武豊騎手が「距離にメドが立った」とコメントしているように、この馬の課題は明白。紫苑S出走は、本番と同じ2000mを経験させておきたいというのが陣営の狙いだろう。結果次第では再びマイル戦に舵を切る可能性もあり、ここは分水嶺の一戦になる。鞍上は主戦の武豊騎手だ。
また、昨年の2着馬ヒップホップソウルがそうだったように、紫苑Sは春に同じ中山で行われた3歳牝馬の中距離重賞・フラワーC(G3、芝1800m)と関連性が深いことでも知られている。今年も上位3頭がそろって出走してきそうだ。
まずはフラワーCで重賞初制覇を飾ったミアネーロ(牝3歳、美浦・林徹厩舎)から。
フラワーCを勝った際、主戦の津村明秀騎手が「この馬と大きなところを狙いたい」と惚れ込む逸材。しかし、桜花賞(G1)をパスして挑んだオークス(G1)では14着に大敗。フラワーCと同様に中団からレースを運んだものの、津村騎手が「2400mを走り切る体ができていない」と振り返ったように早々に脱落してしまった。
オークス後には「良い経験ができたし、今後に繋がると思う」と収穫を語っていた津村騎手。秋華賞へ向け、ひと夏を越したミアネーロの進化を示したい一戦だ。
2着馬のホーエリート(牝3歳、美浦・田島俊明厩舎)も楽しみな1頭だ。
フラワーCではミアネーロと3/4馬身差の2着だったホーエリート。レース後に原優介騎手が「やりたい競馬ができなかった」と話した通り、これまでよりも後方からの競馬になったが収穫の多い一戦だった。
ホーエリートも、ミアネーロと同じように桜花賞をパスしてオークスへ。こちらも10着に大敗しているが、「この馬が豊富なスタミナを持っていることに懸けた」と原騎手が語っている通り、中団から早めに先頭集団に取りつく積極的な競馬。最後は脚が上がった格好だが、一瞬の見せ場を作ることはできた。まずはここでミアネーロに借りを返して、本番に進みたいところ。鞍上は戸崎圭太騎手になりそうだ。
スケールという点では、3着馬のカンティアーモ(牝3歳、美浦・木村哲也厩舎)が3頭の中で最も大きいかもしれない。
1番人気に推されたフラワーCで3着に敗れたカンティアーモだが、C.ルメール騎手が「直線でスペースを見つけるまでに時間が掛かった」と振り返っている通り、不完全燃焼の競馬。賞金を上積みできなかったことで自己条件のカーネーションC(1勝クラス)に回ったが、上がり3ハロン最速の末脚できっちりと勝ち上がった。
着差こそアタマ差だったが、ルメール騎手が「もう少し楽に勝てるかと思ったけど、直線は遊んでいた」と語った通り、大きなスケールを感じさせる勝ち方。2、3着馬もその後に1勝クラスを勝ち上がっており、レベルの高い一戦だった。ここを勝てば秋華賞の勢力図に大きな変化を与えることになるだろう。鞍上は主戦のルメール騎手だ。
他にも函館で2連勝したエラトー(牝3歳、栗東・上村洋行厩舎)、1勝クラスを勝ち上がっているイゾラフェリーチェ(牝3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)、クリスマスパレード(牝3歳、美浦・加藤士津八厩舎)、ハミング(牝3歳、栗東・中内田充正厩舎)、フォーザボーイズ(牝3歳、美浦・加藤征弘厩舎)といったところにもチャンスがありそうだ。
果たして、秋華賞戦線に名乗りを上げるのはどの馬か。賞金的に優先出走権が必須の馬も多く、興味深いレースになりそうだ。紫苑Sは7日の15時45分に発走予定だ。