今年の競馬に見たディープインパクト産駒の「進化」 数々の弱点克服の裏に「人」と「馬」が織り成す『人馬一体』の理念が
日本を代表する種牡馬が、いよいよ偉大なる父と同じ”完全無欠の領域”に達しつつあるのか。
先週11、12日の2日間にわたって開催されたセレクトセール2016。落札価格が1億円を上回った14頭の内、実に10頭が現在の日本競馬の中核を成しているディープインパクト産駒だった。
そういった事実からも、今の競馬は「ディープ産駒か、そうでないか」と述べても過言ではないほど、ディープインパクト産駒が幅を利かせている。この圧倒的な支配力は、ディープインパクトの父である大種牡馬サンデーサイレンスを彷彿とさせるものだ。
だが、これまでの種牡馬ディープインパクトが、かつて日本競馬に革命を起こしたサンデーサイレンスの域に達しているかと比較すると「そうでもない」という印象がある。
無論、ディープインパクトが数字的にサンデーサイレンスを上回っているデータは多々あり、あくまで印象の問題だ。だが、ディープインパクト産駒の名馬は、父から圧倒的なスピードと瞬発力を受け継いでいる反面、ややパワーに劣る印象があるのだ。
実際に、父ディープインパクトも三冠の中で最も苦戦したのが、最後のゴール前に急坂がある中山コースの皐月賞(G1)であり、国内唯一の土を付けられたのも中山の有馬記念(G1)。
産駒も父の傾向を受け継いでいるのか、データ的には雨や急坂といったパワーを要する状況で軒並みパフォーマンスを落としている。おそらくそういった点が、これといった弱点が見当たらなかった完全無欠の種牡馬サンデーサイレンスに劣る印象を受ける点なのだろう。
しかし、ここ1、2年のディープインパクト産駒は、明らかに「これまでとは異なる傾向」が出ている。