【徹底考察スペシャル】香港スプリント(G1) ビッグアーサー「『最低の騎乗』といわれる前走の本当の敗因とは?世界のR.ムーア騎手を背に言い訳の効かない一戦に挑む」
それに加えて、前哨戦のセントウルSをキャリア初の逃げで勝ってしまったことも結果的には大きく作用した。レース中に掛かり気味なった一因の可能性も存在するが、それ以上に福永騎手に「引っ掛かるかもしれない」という心理をもたらせたことが大きいように思える。
それが結果的に、先頭集団で競馬するのが予測された「ソルヴェイグの後ろ」に「可能な限り早く入れたい」という福永騎手の作戦に繋がったのだろう。
事実、レースの前半ずっと掛かり気味だったビッグアーサーは、執拗にソルヴェイグを壁にして競馬をしている。本来なら、ハナに立つことが濃厚で「最高の壁」となるミッキーアイルの後ろに付けた方がより前目で競馬できただろうが、向こうは8枠15番。1枠1番の馬が”到着”を待っている暇がなかったということだろう。
だが、それが結果的に3列目での競馬を強いられることに繋がり、あの直線での”悲劇”につながるわけである。
無論、結果論からすれば福永騎手の騎乗は「最低」といえるものだった。だが、その背景には厳しい状況の中で最善の判断を取り行った形跡が確かに存在している。
したがってむしろ、福永騎手が自身の騎乗が「最低だった」と認めているのは、最後の直線で進路を失うに至るまでも然ることながら、そこから脱出する際にビッグアーサーを躓かせてしまったことだろう。
レースの勝敗が決するラスト150m。『考察』でも述べた通り、進路を探し求めて外からさらに内へ切り込んだビッグアーサーは、ようやくそれを見つけている。だが、そこで馬が躓いて大きく後退。12着という悲惨な結果となった。
一見「不運」に見えるが、実はビッグアーサーが躓いたのは馬場ではなく、前を走っていたネロの後脚である。