【徹底考察スペシャル】香港スプリント(G1) ビッグアーサー「『最低の騎乗』といわれる前走の本当の敗因とは?世界のR.ムーア騎手を背に言い訳の効かない一戦に挑む」
これは福永騎手が馬間を測り間違えたことが原因であり、一歩間違えればネロや本馬の落馬など大きな事故に繋がっていた可能性も否めない。福永騎手のレベルでは、あってはならない重大なミスだった。
以上が前走の敗因分析だが、その上で今回の香港スプリントはどうか。
ビッグアーサーが現在の日本のスプリント界で飛び抜けた存在であることは、スプリンターズSの内容からも間違いないだろう。
確かに、結果的には馬群に詰まって12着大敗と能力の判断は難しい。だが、最後の直線であれだけ左右に動けたのは、本馬の手応えが突出していた証でもある。仮に手応えに余裕がなければ、後ろの馬の進路を塞いでしまう可能性が大きく、あれだけのアクションは起こせなかったからだ。
したがって、まともに走れてさえいれば春秋スプリント王になっていた可能性は充分にあったといえる。
ただし、それはあくまで「日本」での話となり、その力が香港で通用するのかは走ってみなければわからない部分が大きい。ましてや今回は初の海外遠征だ。順調に調整されているようだが、ほぼ毎年1分8秒台後半で決着している沙田(シャティン)競馬場の馬場適性には不安が残る。
まったくダメという可能性は低いものの、高松宮記念の走りやオパールSの圧勝劇を見る限り、時計の出る速い馬場の方がこの馬の真価が発揮される可能性が高いことも確かだ。
繰り返しになるが、ビッグアーサーが現在の日本のスプリント界を代表する存在であることは間違いないだろう。その上で、その力が世界に通用するのか。ムーア騎手という文句の付けようのないパートナーを得た以上、言い訳の効かない興味深い一戦になりそうだ。
(監修=下田照雄(栗東担当))