【高松宮記念(G1)展望】ナムラクレアVSメイケイエールも「G1全敗」の不安…4連勝中の新星アグリ、G1ウイナー3頭にも勝機十分

ナムラクレア

 26日、中京競馬場では春のスプリント王を決める高松宮記念(G1)が行われる。フルゲート18頭に対して20頭が登録。このうち3頭がG1ウイナーだが、上位人気を形成するのはG1未勝利組となりそうだ。

 最有力候補は前哨戦のシルクロードS(G3)で56.5kgの酷量を克服し、スプリント重賞3勝目を挙げたナムラクレア(牝4歳、栗東・長谷川浩大厩舎)だろう。

 デビューから11戦連続で掲示板を確保している堅実派でもあるが、過去3度挑んだG1での最高着順は桜花賞(G1)の3着。昨秋のスプリンターズS(G1)では、2番人気に支持されたが、ジャンダルムと0秒2差の5着に敗れた。

 その一戦は内が伸びる馬場で、ナムラクレアは終始外目を回るロスが大きかった。鞍上を務めた浜中俊騎手も「今日は枠や展開に左右されるレースだった」とコメント。着差が着差だっただけに、不完全燃焼感は否めなかったようだ。

 その後は一息入れて、シルクロードSで実戦復帰。もともと抱えていた爪の不安がほぼ解消されての前哨戦は、2枠2番の好枠から中団の内目を追走し、直線でも内を鋭く伸びてファストフォース、マッドクールとの接戦を制した。

 休み明けをひと叩きされて、気配は上昇一途。浜中騎手を背に栗東CWで行われた1週前追い切りでは、併せた僚馬にクビ差で先着を果たした。また6ハロン79秒8は、自動計測が導入されて以降の自己最速で、状態が前走以上なのは間違いないだろう。4度目のG1で戴冠はなるか。

メイケイエール 撮影:Ruriko.I

 昨年のスプリンターズSでナムラクレアと人気を二分したメイケイエール(牝5歳、栗東・武英智厩舎)は、G2とG3に限れば7戦6勝の好成績を残している一方で、6度のG1では勝利がなく、最高着順も4着。つまりG1では馬券にも絡んだことがない。

 6戦全敗のG1の中でも、最も惜しかったのが昨年の高松宮記念だった。

 レシステンシアに次ぐ2番人気に推された一戦は、スタートでやや後手を踏んでしまい中団からの競馬。直線では外を通って鋭く伸びたが、5着に追い上げるのがやっとだった。

 同レースは道中で内目を通った馬が上位を占めたが、その中で唯一外から脚を伸ばして掲示板を確保したのがメイケイエールだ。

 その後は、京王杯SC(G2)とセントウルS(G2)を連勝。スプリンターズSでは好位から競馬を進めたものの、直線で失速して14着に終わった。そして前走の香港スプリント(G1)でも善戦及ばず5着に敗れ、G1での連敗を止めることができていない。

 それ以来の実戦で迎える今回はローテーション、コースともにベストの条件。これまで2か月半以上の間隔を空けたときは4戦3勝。また、左回りコースでも同じく4戦3勝である。

 かつてのオテンバ娘も、陣営の必死の努力が実り、気性面の課題はほぼ解消されている。栗東CWでの1週前追い切りでは、4ハロン47秒0-ラスト11秒7の爆速タイムで好調をアピール。跨った池添謙一騎手は『スポーツニッポン』の取材に対して「中身の部分は完成の域に達している」と太鼓判を押している。

 オテンバ娘から優等生へと成長を遂げたメイケイエール。欲しいのはG1のタイトルだけだ。

 牝馬2頭の間に割って入るのは、短距離界に突如現れた新星のアグリ(牡4歳、栗東・安田隆行厩舎)である。

 8か月前は1勝クラスで勝ちあぐねていた身だが、昨年8月に札幌で1勝クラス(芝1500m)を快勝すると、秋の阪神で2勝クラス、3勝クラスを難なく突破。重賞初挑戦となった前走・阪急杯(G3)も勝って、その勢いはとどまるところを知らない。

 この馬の武器はスタートセンスの良さとテンのスピード。そして先行してなお長く速い脚を使えるところが最大の長所でもある。

 前走で2度目のコンビを組んだ横山和生騎手はレース後、「去年(22年)の夏に乗せていただいた時から見違えるように馬が変わった」とコメントしており、この半年ほどで急激な成長カーブを描いているのは明白だ。

 さらに驚いたのが安田景一郎助手の「七、八分くらいの出来でした」という前走後のコメント。もちろんG1初挑戦で相手関係も一気に強化されるが、1度叩かれた上積みで5連勝での戴冠も夢ではないだろう。

 ここまで紹介した3頭がおそらく上位人気を形成するだろう。ただし、いずれもG1では結果が出ていないか、未出走である。これに対して3頭のG1ウイナーがエントリーしている。

 20年朝日杯FS(G1)覇者のグレナディアガーズ(牡5歳、栗東・中内田充正厩舎)は、これが3度目のスプリント戦。3番人気に支持された昨年の当レースではスタートで出遅れてしまい、イン有利な馬場で外々を回らされたロスも響き、12着に惨敗した。

 その後は59.5kgを背負ったプラチナジュビリーS(G1)にも挑戦したが19着。秋は体調がなかなか整わず、年末の阪神C(G2)で復帰し、惜しい2着と復活の兆しを見せた。そして今年初戦の阪急杯では抜けた1番人気に支持されたものの、消化不良の7着で今回は人気を落としそうだ。

ナランフレグ 撮影:Ruriko.I

 ナランフレグ(牡7歳、美浦・宗像義忠厩舎)は、10~11年のキンシャサノキセキ以来、史上2頭目の連覇を狙う。

 その後はスプリンターズSの3着はあるものの、それ以外の3走が全て9着以下に凡走。ただし“前哨戦仕様”の前走オーシャンS(G3)は、59kgを背負って上がり2位タイの末脚を使っており、展開が向けば一発の可能性も十分あるだろう。

 3頭目のG1馬は、左前膝を骨折した香港での多重落馬事故以来、1年3か月ぶりの実戦復帰を果たすピクシーナイト(牡5歳、栗東・音無秀孝厩舎)だ。

 阪急杯での復帰を予定していたが、歩様に違和感があったため回避していた。その後は順調に回復。今回は主戦の福永祐一騎手が引退したこともあって、戸崎圭太騎手との初コンビ。21年スプリンターズS覇者の意地を見せたい。

トウシンマカオ 撮影:Ruriko.I

 昨年の京阪杯(G3)を制したトウシンマカオ(牡4歳、美浦・高柳瑞樹厩舎)も侮れない存在。勝てば父ビッグアーサーとの父子制覇と同時に父子4代G1制覇の偉業も達成することになるがどうか。

 この他には、昨年のスプリンターズSで2着に好走したウインマーベル(牡4歳、美浦・深山雅史厩舎)、昨年の2着馬ロータスランド(牝6歳、栗東・辻野泰之厩舎)、前走のオーシャンSを完勝してキーンランドC(G3)に続く重賞タイトルを獲得したヴェントヴォーチェ(牡6歳、栗東・牧浦充徳厩舎)などが上位をうかがう。

 今年の高松宮記念は、ナムラクレア、メイケイエール、アグリによる3強の争いとなるのか、それとも近走不振のG1馬が復活を遂げるのか。好メンバーがそろった注目の春のG1シリーズ開幕戦は26日、15時40分に発走を予定している。

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