JRA「波乱必至」の皐月賞と堅過ぎた桜花賞、混沌のクラシックは昨年から確定していた? 3連単「162万馬券」レコード更新に現実味

撮影:Ruriko.I

 先週の桜花賞(G1)は、単勝1.6倍の断然人気に支持されたリバティアイランドが圧勝したが、今週の皐月賞(G1)は抜けた馬が不在の混戦模様だ。

 昨年のホープフルS(G1)を制したドゥラエレーデが、クラシックを捨ててUAEダービー(G2)に向かい2着。朝日杯フューチュリティS(G1)の覇者ドルチェモアも皐月賞ではなくニュージーランドT(G2)に出走したものの、単勝1.7倍の圧倒的支持を集めながら7着と惨敗を喫した。

 そして、先述のホープフルSでハナ差の2着に入ったトップナイフにしても、トライアルの弥生賞ディープインパクト記念(G2)で新興勢力タスティエーラに呆気なく敗戦。混沌のクラシックを予想することはなかなか難しく、ネットの掲示板やSNSなどでも、ファンが期待している馬は何通りも見掛ける。

 ではなぜ、今年の皐月賞がこのような状況に陥ったのかという話になるのだが、まず考えられるのは、既に3歳世代全体のレベルに疑問符がつくことではないだろうか。

 昨年の場合は、朝日杯FSに出走していた組のレベルの高さが話題となった。優勝したドウデュースは日本ダービー(G1)を勝利し、5着ジオグリフは皐月賞を優勝。それだけではなく2着セリフォスはマイルCS(G1)、3着ダノンスコーピオンもNHKマイルC(G1)を優勝と、同じレースに後のG1馬が4頭もいたのだ。

 それとは別に東京スポーツ杯2歳S(G2)から皐月賞に直行したイクイノックスが、天皇賞・秋(G1)、皐月賞5着アスクビクターモアが菊花賞(G1)を優勝と、近年稀に見る世代レベルの高さだったといえる。

 これに対し、今年の世代レベルは昨年の時点で、一部のファンの間で「既に危うい」と囁かれていたのも確かだ。

混沌のクラシックは昨年から確定していた?

 シンプルな理由として挙げられたのは、3歳上リステッドのリゲルSとの比較である。このレースは2歳G1・2つと同じ阪神の芝1600mが舞台であり、前後半3F36.1-33.9のスローペースでまんまと逃げ切りを決めたシャイニーロックが勝利。良馬場で1分33秒6という勝ちタイムだった。

 そして、阪神JFのリバティアイランドは1分33秒1、朝日杯FSのドルチェモアは1分33秒9。前者の勝ちタイムがリゲルSのそれを0秒5上回ったのに対し、後者は0秒3の遅れ。直接の比較では0秒8もの大差がついていたことになる。

 勿論、これだけでの比較はできないが、ほぼ同時期のレースでの比較だけに、レースレベルに直結したと考えても一応の説得力を持つはずだ。ホープフルSについても、出走メンバーで次走に勝利を挙げた馬は、4着のファントムシーフ(共同通信杯・G3)のみ。それ以外1頭も勝っていない事実は深刻だ。

 そこへきて桜花賞でライバルを圧倒したリバティアイランドに対し、日本ダービー出走を望む声も出た。現状では無難にオークス(G1)が視野に入りそうだが、牝馬のダービー馬といえばウオッカが思い浮かぶ。思えばウオッカがダービーを優勝した年も、牡馬戦線が混迷を極めていた共通点があった。

 この2007年当時は、デビューから無敗の4連勝を決めていたフサイチホウオー、弥生賞馬アドマイヤオーラが人気を分け合ったが、終わってみれば7番人気の伏兵ヴィクトリーが穴を開け、2着にも15番人気の大穴サンツェッペリンが食い込む大波乱。3着にフサイチホウオーが入ったものの、3連単の払戻は162万3250円という皐月賞レコードの高配当ともなった。

 奇しくもダービーに出れば勝てるのではないかと言われる牝馬が登場した年という偶然の一致はある。どの馬が勝っても驚けない状況が、どことなく当時に重なって映るのは気のせいだろうか。もしこの予感が当たっていたなら、162万馬券のレコード更新も現実味を帯びてきたといえるのかもしれない。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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