「逃がしたG1は何勝?」タイトルホルダー、アスクビクターモアだけでなく三冠候補にも騎乗…元リーディングジョッキーが直面した過酷な現実

戸崎圭太騎手 撮影:Ruriko.I

 ついこの前、東西金杯が終わったくらいの感覚だったが、今年の中央競馬もはや4月半ば。年を取るとともに月日の流れる速さに驚かされる毎日である。

 3歳世代のクラシックレースも桜花賞(G1)、皐月賞(G1)が終わり、中休みの1週を挟んで30日には天皇賞・春(G1)が開催される。改修工事で2年半もの間、開催されなかった京都競馬場の再開も非常に楽しみな一方で、リニューアル後の馬場状態や傾向の変化にも気を付けたいところだ。

 まだソールオリエンスの圧勝劇の余韻が残る状況だが、天皇賞・春のメンバーを見てふと感じたこともあった。本レースで上位人気が想定されるタイトルホルダー、アスクビクターモア、そして皐月賞を制したソールオリエンスに意外な共通点を見つけたからだ。

 結論から言ってしまうと、G1を勝ったこれら3頭すべてが過去に戸崎圭太騎手が騎乗していたことである。タイトルホルダー、アスクビクターモアは3戦が戸崎騎手とのコンビで、ソールオリエンスは1戦のみの騎乗となっていた。皐月賞を圧勝した同馬には、一部のファンから早くも三冠馬という声も聞こえ始めたほどだ。

 注目したいのは、これらがすべてデビュー戦を含めてということである。一般的にデビュー前の素質馬は、トップクラスのジョッキーが用意されることが多く、そこで結果を残せば、重賞や海外遠征などの止むを得ない事情でもなければコンビ継続が大抵だ。

 勿論、陣営が鞍上強化を念頭に別の騎手に切り替える場合もあるが、既に十分な実績のある戸崎騎手なら、そのまま任せてもらえる可能性が高かっただろう。

 しかし、デビュー戦から手綱を取るチャンスがあったにもかかわらず、他の騎手に乗り替わってから、G1を勝たれたのだから逃がした魚は大きかったというところか。以下は、戸崎騎手から乗り替わった別の騎手でG1を優勝した経緯である。

■戸崎圭太騎手からの乗り替わりでG1優勝の経緯 ※敬称略
・タイトルホルダー  戸崎圭太→横山武史(菊花賞)→横山和生(天皇賞春、宝塚記念)
・アスクビクターモア 戸崎圭太→田辺裕信(菊花賞)
・ソールオリエンス  戸崎圭太→横山武史(皐月賞)

 こうして振り返ると、継続騎乗のチャンスがあった馬で実にG1・5勝をしていた可能性すらある訳だ。

 とはいえ、それぞれのG1で結果を残した横山兄弟や田辺騎手の騎乗内容が素晴らしかったことを思えば、戸崎騎手が乗って同じように勝てたのかと言われたら即答は難しい。ただひとついえることがあるなら過酷な現実に直面しているということである。

 既に終わったことについて論じているだけのため、結果的に過去に乗ったことのある馬がG1を勝ってしまったという話ではあるが、肝心の戸崎騎手の調子がもう一つ上がってこないことも、こういった事例と無関係ではないのかもしれない。

 今年ここまで中山金杯(G3)、根岸S(G3)、ダービー卿チャレンジT(G3)と重賞3勝を挙げたものの、肝心のフェブラリーS(G1)では前走まで主戦を任されていたレモンポップが、坂井瑠星騎手へと乗り替わって優勝。チューリップ賞(G2)からコンビを組んだドゥーラにしても、不可解な騎乗で惨敗し、一部のファンから騎乗ミスではないかと顰蹙を買った。全国リーディングこそ5位と悪くないが、大舞台で戸崎騎手を積極的に買いたいかといわれると、即答しづらい状況だ。

 明るい兆しがあるとしたら、今週から戸崎騎手が得意とする東京開催へと切り替わることだろう。近年は若手騎手の台頭が目立つようになってきただけに、そろそろ元リーディングジョッキーの意地を見せたいところだ。

黒井零

1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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