デビューから22連敗…「武豊ですら」苦しんだ府中2400m、31年前のオークス(G1)で霧散した親子クラシック制覇の夢

武豊騎手

「今年は相当に強いのが1頭いますが、出走する限りはチャンスがあるのが競馬。野心を持って乗ります」

 17日、自身の公式サイト上の日記ページにそう綴ったのは武豊騎手だ。強い1頭というのは、もちろんリバティアイランドのことだろう。今週末のオークス(G1)で1番人気が予想される桜花賞馬に胸を借りるべく、武騎手が騎乗するのはソーダズリングである。

 もし武騎手がソーダズリングを勝利に導けば、1996年エアグルーヴ以来のオークス制覇。27年ぶりに樫の舞台で美酒を味わうことができるだろうか。

 これまでオークスを3度制している武騎手だが、それほどの名手でもホロ苦い思い出となっているのが1992年のレースかもしれない。

 当時の牝馬クラシック路線はニシノフラワーが主役だった。圧倒的なスピードを武器に桜花賞(G1)を制し、続くオークスでも1番人気に支持された。人気でこれに続いたのは武騎手が騎乗したシンボリルドルフ産駒のキョウワホウセキ。桜の舞台には間に合わなかったが、忘れな草賞(OP・当時)とサンケイスポーツ賞4歳牝馬特別(現フローラS=G2)を連勝し、その勢いを買われてニシノフラワーと差のない2番人気に支持されていた。
 
 23歳の若き天才にとって、この年のオークスはどうしても勝ちたい一戦だったはずだ。なぜならキョウワホウセキを管理していたのは父の武邦彦調教師だったからに他ならない。

 バンブーメモリーで臨んだ90年のスプリンターズS(G1)で親子G1制覇を達成してはいたが、クラシックに親子で挑んだのはこの時が最初。武騎手は心中期するものがあっただろう。

 ところが、そんな勝ちたい気持ちがこのレースに限っては悪い方向に出てしまったのだろうか。

 ゲートが開いて外目の16番枠から好スタートを決めた武騎手とキョウワホウセキ。序盤は中団後方でいつも通り末脚を温存した。ハナを切ったのはウィーンコンサートで、1000m通過が62秒6のゆったりとした流れを作り出した。人気のニシノフラワーは好位5番手からのレース運び。3~4コーナーの勝負所で、鞍上の河内洋騎手(現調教師)は、徐々に押し上げを図り、4コーナーでは早くも先頭に並びかけた。

 外からこれを追いかけたのが3コーナーで12番手にいたキョウワホウセキである。4コーナーで7番手まで押し上げると、直線残り400mを切ったところで、早くもニシノフラワーを交わして、先頭に躍り出ていた。

 あとは馬場のいいところを走らせ、後続の追撃を凌ぎ切るだけだったキョウワホウセキだが、内からサンエイサンキュー、大外からはアドラーブルが猛追してきた。3頭は残り100mあたりから横並びの大激戦となった。

 息詰まるデッドヒートを制したのは大外を通ったアドラーブル。半馬身差の2着にサンエイサンキューが入り、キョウワホウセキはさらに半馬身遅れての3着に敗れた。

 上位3頭のコーナー通過順を見ても分かるが、勝負所で仕掛けを我慢した2頭がワンツー。早めに動いたニシノフラワーについていったキョウワホウセキは最後のひと伸びを欠く結果となった。

 3頭のコーナー通過順は次の通りだ。

1着 アドラーブル 「6-7-7-7」
2着 サンエイサンキュー 「14-14-9-12」
3着 キョウワホウセキ 「11-12-12-7」

 ちなみに7着に敗れたニシノフラワーのコーナー通過順は「5-5-3-2」。後にスプリンターとして活躍した同馬にとって2400mという距離は、やはり長すぎたのだろう。もし武騎手がアドラーブルかサンエイサンキューをマークしていれば、仕掛けるタイミングも、結果も違っていたかもしれない。

 また当時の武騎手は府中2400mを不得手にしていたのも事実だ。当該コースでは92年オークス前の時点で18戦して未勝利。G1でも89年オークスがシャダイカグラで2着、91年ジャパンC(G1)がメジロマックイーンで4着など、決して相性がいいとは言えない舞台だった。

 そんな武騎手も翌93年のオークスをベガとのコンビで勝利し、デビューからのコース連敗を「22」で止めると、その後はG1だけで13勝(ダービー6勝、ジャパンC4勝、オークス3勝)。いつしか府中2400mは武騎手の得意舞台と化していた。

 今年3月に54歳となった武騎手。今なら31年前の自分自身にどんなアドバイスを送るだろうか。

GJ 編集部

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