「熱中症疑惑」の1番人気馬が重賞で連日の凡走…JRAからの返金はもちろんナシ、「追い切り好調」でも読めない夏競馬
梅雨も明けて連日のように猛暑日がトレンドに上がる毎日。熱中症で命を落とす人の不幸なニュースを目にすることも珍しくなくなったが、人間だけでなく競走馬たちにとってもそれは同じ。
残念なことに先週末の開催においても、熱中症の疑いで能力を発揮することなくレースを終えた馬がいた。
勿論、主催者であるJRAもパドックや待機所でミスト(霧状の水を噴射)や、パドック周回の短縮、レース後の馬への冷水シャワーなど、暑熱対策に配慮している。29日に行われた新潟ジャンプS(J・G3)も、例年は午後の8Rなどで行われていたが、今年は比較的涼しい午前中の4Rに時間を繰り上げられていた。
しかし、このような対策をしていてもアクシデントを完全に回避できる訳ではない。
実際、新潟ジャンプSで1番人気に支持されたフォッサマグナ(セ7、美浦・黒岩陽一厩舎)が、2周目の3コーナー辺りでズルズルと後退。「競走中に前進気勢を欠き、競走を中止したことについて障害調教再審査」の処分を下されることになった。
レース後に陣営から「熱中症の疑いがある」と発表がされたことを思えば、少々厳しい処分にも映るが、馬券を発売している以上はやむを得なかったか。
本馬はデビュー当初にC.ルメール騎手とのコンビでクラシック候補の1頭と呼ばれた逸材。障害に転向した初戦こそ4着に敗れたものの、2戦目から破竹の3連勝を決め、初重賞勝利を期待された舞台でもあった。現在のところ、命に別状がなかったことは不幸中の幸いだ。
「追い切り好調」でも読めない夏競馬
ただ、土曜のフォッサマグナだけでなく、日曜新潟メインのアイビスサマーダッシュ(G3)でも1番人気に推されたファイアダンサー(牝5、美浦・鈴木慎太郎厩舎)もまた、期待された走りができないまま、18頭中の最下位に終わっている。
レース後に鞍上の武藤雅騎手から「はっきりした敗因が分かりません。ゲートから進んでいきませんでした。何もないといいのですが……」と状態面を心配するコメントが出され、本馬を管理する鈴木慎太郎師もSNSにて「全く実力を出すことが出来ませんでした。
レース後は熱中症の様な症状が見られ、暑さに負けてしまったようです」と発信。追い切りで軽快な動きを披露していたファイアダンサーだが、レースの前に「走れる状態ではなかった」可能性が高い。
ファイアダンサーの陣営としても、新潟千直で最も有利とされる8枠を引き当てる幸運に恵まれながら、絶好のチャンスを生かせなかったことは悔いが残ったかもしれない。
とはいえ、ファンに対し「熱中症で満足な走りができませんでした」という説明だけで理解を得ようとするのも、なかなか難しい側面がある。馬券を購入している側からすれば勝ち負けを期待しているのだから、陣営ですら気付かない熱中症を理由とした凡走まで「自己責任」の扱いにされては困る。
かといってJRAが返金に応じる可能性は限りなくゼロであり、たとえ夏場の開催で同様のことが再発したとしても、ファンは泣き寝入りするしかないだろう。
これから8月に入りまだまだ酷暑が続く。夏競馬が盛り上がることは歓迎でも、レースに出走する競走馬の熱中症まで気にしていては、ただでさえ難解なレースの予想が、ますます難しくなりそうだ。