戸崎圭太「勝った馬が強かった」も川田将雅の評価は控えめ? サクラバクシンオー近親が「億超え評判馬」を撃破…完勝でも喜べない厩舎事情にライバルの影

川田将雅騎手 撮影:Ruriko.I

 先週末から開幕した夏の新潟開催。名物重賞のアイビスサマーダッシュ(G3)を皮切りにフィナーレを飾る新潟記念(G3)までバラエティに富んだ重賞が組まれている。

 昨年は夏の新潟でデビュー戦を圧勝したリバティアイランドが、阪神ジュベナイルF(G1)を制して2歳女王の座に就くと、圧倒的な強さを見せて春の牝馬二冠を達成。かつては早熟馬の多かった新潟デビュー組も、近年はG1級の素質馬が登場することも珍しくなくなりつつある。

 そんな新潟デビュー組だが、先週末に最も注目を集めたのは2年前のセレクトセールにて約4億5000万円(税込)の超高額で落札されたホウオウプロサンゲ。初陣に選ばれた7月30日の2歳新馬(芝1800m)では、矢作芳人厩舎の主戦である坂井瑠星騎手を配し、必勝態勢で臨んだ。

 このレースには同じく「億超え落札馬」のミッキースターダムも戸崎圭太騎手とのコンビで参戦。将来を嘱望される2頭の登場で盛り上がった。

サクラバクシンオー近親が「億超え評判馬」を撃破…

 しかし、エリート2頭を相手に一枚上手のレースぶりで勝利を飾ったのは、川田将雅騎手が騎乗したカンティアーモ(牝2、美浦・木村哲也厩舎)だ。

 レースでは好スタートを決め、逃げ馬の直後につける横綱相撲。残り600mで早々と先頭に立ち、外から強襲したミッキースターダムに一旦先頭を譲るシーンも見られたが、そこから再び盛り返し、ゴールでは逆に3/4馬身の差をつけた。

 1分46秒4(良)の勝ちタイムは、2歳新潟芝のコースレコードのオマケつき。これには2着に敗れたミッキースターダムの戸崎騎手も「勝った馬が強かった」と完敗を認めるしかなかったのも頷ける。

「血統的にも祖母のラトラヴィアータはサクラバクシンオーの全妹。母父バクシンオーといえば種牡馬としてブレイク中のキタサンブラックも重なります。川田騎手が抑えるのに苦労していたようにスピードもあり、抜群のスタートを決めたセンスも光りました。

デビュー戦で芝1800mを使われたエピファネイア産駒ということもあり、距離が延びても対応できるスタミナも証明できました。昨年のリバティアイランドほどのインパクトはないですが、順調ならクラシック戦線で主役を張れそうな雰囲気も持っています」(競馬記者)

 その一方で、パートナーが見事な初陣を飾りながらも「まだコントロールが難しく、その辺りに課題は残りますね。徐々に改善してくれればと思います」と、少々控えめなコメントを残したのが、自らの手綱で勝利にエスコートした川田騎手だ。

 敗れたライバルから「完敗宣言」が飛び出した逸材としては、絶賛というニュアンスでもなさそうだが、その背景にはこのままコンビ続投とはならない可能性も考えられる。

完勝でも喜べない厩舎事情にライバルの影

C.ルメール騎手 撮影:Ruriko.I

「前向きなところのあるエピファネイア産駒のカンティアーモですから、気性面や折り合いについて課題を残していることは、川田騎手の言う通りでしょう。ただこの馬を管理している木村調教師は、“C.ルメール信者”としても有名な人物です。

厩舎の期待馬だけに本来ならルメール騎手を乗せたかったところでしょうけど、肝心のルメール騎手は暑さが苦手で夏場は北海道を拠点にしているため、初コンビがあるなら秋の東京開催が濃厚。今回は札幌に適鞍がなかったため、新潟にいる川田騎手に任せた可能性が高いと思われます」(同)

 記者が話したように、木村厩舎はルメール騎手を絶対的エースとして起用しており、川田騎手はピンポイント的な起用がほとんど。ルメール騎手が不在の時に代打というパターンが多い傾向にある。

 また、ルメール騎手と川田騎手はリーディング争いで火花を散らす間柄でもある。1勝を加算してくれた期待馬の登場も、いずれライバルの強力なお手馬として立ちはだかる未来が脳裏に過ったのかもしれない。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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