「馬と会話ができる」横山典弘じゃなくても分かっちゃった? 競走中止に手痛いお仕置きも…納得せざるを得ない「珍名馬」のストライキ
時折目にすることがある珍名馬。我々ファンからしたら珍名に思えても、命名したオーナーは大マジメに考えた馬名だろう。過去にモチやオマワリサンなど、ユニークな馬名で人気を博した馬がいた一方で、ユキチャンやオレハマッテルゼのように重賞やG1を勝つような馬もいる。
そんな愛される珍名馬が出走していた14日の開催。モテモテ(新潟11R)、ワタシキレイ(東京2R)、イロハニオエ(東京6R)、カッコヨカ(京都最終)など、複数の珍名馬たちが出走していた。
中でもひと際目を引いた馬が、この日のメインレースである府中牝馬S(G2)のひとつ前に行われた東京10Rにいた。
12頭立てで争われた芝1400mのレースを制したのは、2番人気に支持されたジューンオレンジ。残念ながら結果的に1頭の珍名馬は競走中止となってしまった訳だが、その負けっぷりは「何とも言えない」内容だったかもしれない。
大外12番枠からスタートした珍名馬だが、ゲートこそ普通に出たものの、鞍上の永野猛蔵騎手が気合をつけて激しいアクションで促しても、まったくの無反応。押そうがどうしようが、パートナーの“やる気スイッチ”がオンとなることもなく、あろうことか内ラチに向かって歩き始めると、そのまま立ち止まってしまったのである。
12頭中の最低人気だったことは事実だが、レースに参加することなく終戦してしまったからには「発走後まもなく、前進気勢を欠いたため競走を中止しました」と裁決の対象となっても仕方なしだった。
競走馬といえども生き物だけに、馬と会話ができると噂される横山典弘騎手にでも聞かなければ、どうしてこんな行為に及んだのかという“本人の気持ち”は分からない。
納得せざるを得ない「珍名馬」のストライキ
しかし、その馬名が“名は体を表す”という意味でなら、一般のファンでも理解が出来そうな気持ちにさせられたかもしれない。
というのも、問題になった珍名馬が、モチベーション(牝4、美浦・清水英克厩舎)という馬名だったからである。
「モチベーションとは馬名の由来にある通り、『意欲』という意味です。スタートはしたものの、すぐに前進気勢を失って職務放棄のような競走中止に……。モチベーションが、あろうことかモチベーションを失ってしまったというわけです。家を出るまでは頑張ったが、やっぱり会社や学校に行きたくないと引き返す気持ちに似ていたかもですね」(競馬誌ライター)
これにはネットの掲示板やSNSでも、「分かるー」「これ俺だわ」「そんな日もあるよね」と自分の姿を重ねるファンもチラホラ……。ブービー人気フミロアの単勝オッズ68.4倍を遥かに上回る127.4倍の超人気薄ということもあり、“被害者”が少なかったことは、ファンにとっても不幸中の幸いだったのではないか。
JRAの発表した裁決レポートによると「令和5年10月15日から令和5年11月4日まで出走停止。停止期間の満了後に平地調教再審査」という手痛い“お仕置き”が下されたようだ。
超人気薄の馬だっただけに、マジメに走っても勝算の低かった可能性はあるが、もしも「モチベーションが上がらなかったから、やる気が出ませんでした」という推測が正しかったなら、他人ごとに思えない“ストライキ”ではなかったか。
“謹慎明け”のレースがいつになるかは分からないが、印象的な馬名も含めて今後も応援したくなる馬である。