「この時期に開催する意味があるのか」不要論から始まったみやこS(G3)。ダート王トランセンドから無敗の大物セラフィックコールまで、勝ち馬が「結果」で示し続ける存在意義
先週行われたみやこS(G3)が2010年に誕生した当時、ちょっとした「不要論」があった。
ダート1800mの競走として、毎年の11月初旬の日曜日に開催されている本レース。だが、その数日前には地方競馬の祭典・JBCが開催され、ダート界の有力馬の興味はそちらへ集まる。特に主にダート2000mで開催されるJBCクラシック(G1)は、みやこSとほぼ同距離であり「果たして、この時期にJRAでダート重賞を開催する意味があるのか」というわけだ。
ましてや、今年はダート競馬の本場である米国のブリーダーズCに日本から多くの有力馬が参戦。ダート2000mのBCクラシック(G1)ではデルマソトガケが2着に好走するなど、今後も日本からの参戦はますます増加するかもしれない。
JBCクラシックで主役になるような馬が米国へ行き、その空いた枠にみやこSで主役になるような馬が滑り込む……。今後、“下請けの下請け”である本レースは、ますます肩身の狭い思いをするかもしれない。
勝ち馬が「結果」で示し続ける存在意義
だが、その一方でみやこSはこれまで12回の歴史の中で、確固たる存在感を示してきた。
第1回では、ここで重賞2勝目を挙げたトランセンドが、そのままジャパンCダート(G1、後のチャンピオンズC)、フェブラリーS(G1)を連勝。世界最高峰の舞台ドバイワールドC(首G1)でも2着するなど、大きな飛躍を果たしている。
第2回の勝ち馬エスポワールシチーこそ、すでにダート王の地位を確立していたものの第3回のローマンレジェンド第7回のアポロケンタッキー、第11回のメイショウハリオが、この勝利を弾みにG1ホースまで上り詰めている。
さらにG1連対まで広げれば第5回のインカンテーション、第8回のテイエムジンソク、第10回のクリンチャーの名も挙がるのだから、みやこSは今やJRAのダート界でも指折りの出世レースとして、その地位を確立しているのだ。
そして、13回目を迎えた今年も楽しみな新王者が誕生した。これでデビュー負けなしの5連勝となったセラフィックコール(牡3歳、栗東・寺島良厩舎)だ。
スタートの課題こそ残るものの、主戦のM.デムーロ騎手が「ギアを上げたら凄く伸びてくれた」と舌を巻いた通り、最後の決め脚はすでにG1級。「最後は楽でした」との言葉通り、ゴール前で早くもガッツポーズが飛び出す楽勝だった。
JBCクラシックに加えて、ついには米国のBCクラシック……ライバルは超が付くほど強大だが、「登竜門」みやこSは毎年のように確かな存在感を放っている。