イクイノックス世代の実力馬に「完全復活」の兆し! C.ルメールが騎乗したキタサンブラック産駒の大本命を一蹴…「これくらい走れていい」鞍上も納得
ドウデュースとの直接対決に大きな注目が集まった天皇賞・秋(G1)を圧勝したイクイノックス。世界最強馬として世代最強馬を退け、向かうところ敵なしの独裁政権を築きつつある。
次走に予定しているジャパンC(G1)では、新たなチャレンジャーとして三冠牝馬リバティアイランドとの対決も実現予定。失地回復を狙うドウデュース、復活を期待されるタイトルホルダーに海外からの刺客など、相手は決して楽ではない。
しかし、現在の勢いなら再びライバルを圧倒するシーンもありそうだ。仮にジャパンCを優勝すれば、褒賞金の対象レースであるドバイシーマクラシック(G1)を制しているため、アーモンドアイが持つ歴代最高獲得賞金を抜いての1位も視野に入る。世紀の一戦が開催される26日は、歴史に残る1日となるかもしれない。
競馬界を席巻するイクイノックスの快進撃が目立つ一方、11日に行われた土曜東京で密かに完全復活の兆しを見せていた馬がいた。
その馬とは、この日の10R奥多摩S(3勝クラス)を快勝したアサヒ(牡4、美浦・金成貴史厩舎)のことである。
イクイノックスと同世代の本馬は、かつてクラシック候補の一角に名を連ねていた実力馬の1頭だ。2年前にデビュー戦(東京・芝1800m)でジオグリフの2着に入り、3着のアスクビクターモアに先着。前者は翌春の皐月賞(G1)でイクイノックスを破り優勝。後者は菊花賞(G1)を制してG1タイトルを勝ち取った。これだけでもアサヒの実力が相当高かったことが分かる。
しかし、イクイノックスと初めて顔を合わせた21年の東京スポーツ杯2歳S(G2)で2着に完敗したのを境に成績は急降下。今となっては相手が悪過ぎた訳だが、次走の共同通信杯(G3)を出遅れて5着に敗れると、1番人気に支持されたスプリングS(G2)でもスタートで出遅れて11着に大敗してしまった。
この頃から元々懸念されていた気性的な難しさが表面化し、スタートで出遅れなくても能力を発揮できないレースが続いた。陣営も主戦の田辺裕信騎手から乗り替わりやマイル戦に使うなど、試行錯誤の日々となったが、思い切って芝の1400mに距離を短縮してみたところ、約2年ぶりとなる勝利の美酒へと繋がった。
「これくらい走れていい」鞍上も納得
そしてこの勝利を導いたのも、注目を集めていた当時に主戦を任されていた田辺騎手だったのだから、「もともと強いメンバーとレースをしていましたし、これくらい走れていい馬です」と振り返った田辺騎手自身も感慨深かったのではないか。
「着差こそクビ差でしたが、負かした相手はC.ルメール騎手が騎乗していた大本命のラスールで価値があります。イクイノックスと同じキタサンブラック産駒の同馬もまた、同世代の牝馬でクラシック候補と呼ばれていた素質馬でした。
アサヒについては今回の距離短縮で復調に期待出来そうですよ。スタートの課題は残りますが、中距離に比べて折り合いの不安が軽減されますし、マイルに戻すよりも思い切ってスプリント路線に使ってみても面白そうです。年齢的にもまだ4歳と若いですから、もう一花咲かせてほしいですね」(競馬記者)
明暗の分かれた初対決から別々の道を歩んだ2頭だが、アサヒに秘められたポテンシャルの高さも、まだまだ期待していいだろう。今回の勝利を機に馬名の如く“陽はまた昇る”といきたいところだ。